スターベース東京のブログ

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すごいぞ!TSA-120でガッツリ天体写真撮影!

皆さんはTSA-120鏡筒に対してどのようなイメージをお持ちですか?

タカハシ屈折望遠鏡のラインアップにおいて、本鏡筒は多くの場合「TOA-130Nに迫る眼視性能ながら軽量で使いやすい」と表現されています。このような文脈では無意識のうちに、TSA-120は眼視主体の鏡筒だ…と思われるかもしれません。確かに撮影時の結像性能の指標であるスポットダイアグラムでも、ほぼ完璧な点像となるTOA-130Nに対して、TSA-120では星像はやや面積を持って表現されます。

しかし!!!

実はTSA-120は、天体写真撮影のための望遠鏡としても、かなりの高性能を秘めています!

今回は2通りの補正レンズを使って実写した結果をご紹介いたします。

 

1. TSA-120 + TOA-35レデューサー0.7×

ばら星雲 TSA-120 + TOA-35レデューサー0.7× + ZWO ASI6200MC Pro
ゲイン100 2分×94枚 総露光時間3時間8分

システムチャート通りの接続で撮影しました。ASI6200MC Proは内径を広く確保しつつカメラマウント接続とするため、当店オリジナルのこちらのアダプターセットを使いました。光害カットフィルター等は使用していません。

TSA-120にTOA-35レデューサー(150セット)を併用すると、焦点距離635mm、F5.3となります。35mmフルサイズやAPS-Cセンサーのカメラで大型の銀河や星雲を撮影するのにちょうどよい画角が得られます。F5.3というスペックはFSQ-85EDPの直焦点とほぼ同じです。淡い対象の撮影にも使いやすい明るさです。

1枚撮り画像(ステライメージ9でデジタル現像のみ)

(左)画面左上 (右)中央 のそれぞれ1000ピクセル四方切り出し

フラット画像

撮影結果を見てみましょう。フルサイズ6200万画素の超高画素カメラでも、中心から周辺までこれだけ均一でシャープな写りです。しかも明るい星の色ハローもありません。

星像が最もシャープな元画像・中央500%拡大表示

撮影中の各コマでは気流の影響を受けて星像の大きさがわずかに変化しますが、上は最もシャープに写った(つまり光学系の性能を最も引き出せている)コマです。フルサイズ6200万画素のカメラで、1コマ2分の露光を掛けて、星像がこれだけシャープに引き締まっている…これがどのようなことか、同様のスペックの鏡筒を使った経験のある方ならお分かりいただけるかと思います。スポットダイアグラムではTOAシリーズに一歩譲る構成ですが、実用上ではこれだけ良い写りをします。

 

元々が眼視性能も高いTSA-120ですが、レデューサーを使えばFが明るくなるということに加え、広い画角を得られて便利です。センサーが小さめのカメラ、例えばASI533MC Proで同じように撮影した場合、下のような画角となります。

正方形センサーの冷却CMOSカメラ(ZWO ASI533MC Pro等)と同じセンサー面積でトリミング

※温度変化への耐性について

この撮影中は、撮り始めから終わりまでの間に外気温が3.2度下がりましたが、合焦マスクでの回折光条の出方は変わらず、撮影結果を見てもピント移動は無かったようです。この夜はこれ以上の温度変化が無く、例えば5℃の変化でどうなるか…等は試せませんでした。しかし3度の温度変化でピントが明らかにズレる鏡筒もある中で、これはTSA-120鏡筒自体の特長かと思われます。温度変化に対してピントずれが少ないのは嬉しいですね。

外気温+1.2℃でピント合わせをしたのち、同-2.0℃となったときの合焦マスク像。ピントが合ったままと確認できたので、そのまま撮影を継続しました。

 

2. TSA-120 + TOA-645フラットナー

M101 TSA-120 + TOA-645フラットナー + ZWO ASI6200MC Pro
ゲイン100 2分×135コマ 総露光時間4時間30分

タカハシ公式ではTSA-120鏡筒にはTOA-35フラットナーが適合しますが、先日の検証でTOA-645フラットナー150セットとの相性も良いことが分かりましたので、今回はそちらを使いました。接続等の詳細はこちらのブログ記事をご覧ください。↓↓↓

starbase.hatenablog.jp

焦点距離は900×0.99=891mm(F7.4)ほどかと思います。

1枚撮り画像(ステライメージ9でデジタル現像のみ)

(左)画面左上 (右)中央 のそれぞれ1000ピクセル四方切り出し

フラット画像

この日はシーイング条件も良かったようで、焦点距離900mmほどの状態で撮影してもシャープさを維持しています。以前のブログ記事で述べたのと同じ理由で、シーイング条件の良い日なら「レデューサーを使って撮った画像をトリミングする」よりも「フラットナーを使って撮る」方が、アンダーサンプリングを回避して実解像度を高める効果があると感じます。

中央の等倍切り出し。(左)今回の撮影で最もシャープなコマ (右)最も星像肥大の大きなコマ

このような長焦点撮影ではシーイングの影響を受けやすくなります。上画像の比較をご覧ください。同じ夜でもシーイングの変化によってこれだけ星像の大きさが変わります。この日は比較的シーイングが良かったですが、肉眼で星がチカチカと瞬いて見えるような日はもっと星像が肥大してしまいます。そのような日は比較的大気の影響を受けにくい短焦点での撮影(例えばフラットナーではなくレデューサーを使う)に切り替えたほうがよさそうです。

 

このくらい長めの焦点距離であれば、小さいセンサーのカメラと組み合わせて銀河や星雲のクローズアップ撮影を行うのも楽しそうですね。

IMX585センサーの冷却CMOSカメラ(Player One Uranus-C Pro等)と同じセンサー面積でトリミング
※星像の肥大を復元する処理(BlurXTerminator)は使用していません。

※TSA-120は直焦点での周辺像の肥大が比較的少ない鏡筒なので、そもそも小さいセンサーであれば、フラットナーが不要かもしれませんが…

 

TOA-35レデューサー0.7×とTOA-645フラットナー、どちらの補正レンズを使っても、たいへん良好な結像が得られました。温度変化に対するピントずれ量が小さそうなのも魅力です。また、ここまで触れませんでしたが、TSA-120は口径の割に軽めなのでEM-200 / EQ6系よりも一回り小型の、SXD2 / AM5クラスの赤道儀に搭載しても安定した撮影結果が得られるという利点もあります。

(今回の撮影にはSXD2赤道儀を使用しました。AM5の場合は剛性の高いメタル三脚にハーフピラーを併用して搭載するのが安心です。)

 

いかがでしょうか?もう眼視用とは思わないでください!TSA-120は、紛れもなく「眼視・撮影両用」の高性能鏡筒です!!!

 

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最強のビクセン鏡筒! 「VSD90SS」試用レビュー!!

VSD90SS」は2023年11月30日にビクセンが新発売した高性能アストログラフです。

ビクセン VSD90SS 口径90mm 焦点距離495mm F5.5
ビクセンWebサイトより)

5群5枚の天体撮影と眼視観望、扱いやすさと性能を極めたフラッグシップ鏡筒で、SDレンズ2枚と高屈折率EDレンズ、凹レンズには高性能ランタン系ガラスを採用した光学設計により、従来品「VSD100F3.8」を上回る高レベルな収差補正を実現しています。写野中心から、35㎜判フルサイズの最周辺に至るまで、シャープで美しく均一な星像を得ることができます。

VSD90SS断面図
ビクセンWebサイトより)

鏡筒スペックなど詳細はビクセンさんのホームページもご参照くださいませ。

ということで、今回はこの「VSD90SS」をスターベーススタッフが実際に使用してみましたので使用感をご紹介したいと思います!

 

 

外観など

スタイリッシュな外観でシルバーで印字されたロゴは高級感を放っています。重さは本体だけで約4.3kg。手に持ってみるとずっしりとした重みがあり、レンズが詰まっている感があります。それでいて、フード収納状態では全長476mmとコンパクト(ε-130Dの全長が460mmです。)になるため、手軽に運搬することができました。今回は運搬のために弊店オリジナルの屈折用バッグSに収納し、車に乗せて運びました。"超高性能な5枚玉"ではありますが、通常の屈折望遠鏡と同様の運搬方法で問題なさそうです。安心して持ち運びができる鏡筒だと思います。

フード収納時
ビクセンWebサイトより)

なおフードについては、いったん取り外して反対にして取り付けることで収納する形になります。また、上の図で左端に見えている黒いものは対物キャップです。この対物キャップを着脱する際には、フードは収納状態とするか、いったん外す必要があります。下のように、フードを取り付けた状態で対物キャップを着脱することはできません。

この状態で対物キャップを着脱することは不可
ビクセンWebサイトより)

豊富な周辺光量

フルサイズ周辺でも中心比約94%と従来品の「VSD100F3.8」と比較して周辺減光が大幅に改善されています。カメラマウント、またはフィルターホイールによるケラレ以外の光量低下はほとんど見られません。

フルサイズでも周辺光量豊富です!
ビクセンWebサイトより)

以下は「ASI6200MC Pro」での撮って出しの画像を強調表示したものになります。周辺減光の様子を見ようとして強調したところ、かぶりが先に見えてきてしまいました。周辺減光は見た目にはほとんど判りません。

ASIFitsViewにてプレビュー

作例

今回は、2月の新月期に長野県まで足を延ばしZWOのフルサイズカラー冷却CMOSカメラ「ASI6200MC Pro」で撮影を行いました。

撮影対象はマルカリアンチェーンです。
こちらをクリックすると高画質でご覧いただけます(約8MB)。

VSD90SS+ASI6200MC Pro ゲイン100 冷却-15度
2分×125コマ 総露光250分(4時間10分)

フルサイズ周辺まで申し分のない素晴らしい星像で、撮影していても画像処理していても気持ちよさを感じます。なお、鏡筒本来の性能を評価するために、最近話題のAI画像処理ツール「BlurXTerminator」は使用しませんでした。

下は右下1000ピクセル四方の切り出し画像になりますが、フルサイズ最周辺であることは言われないとわからないどころか、言われても信じがたいほどです。

右下1000ピクセル四方の切り出し

なお星が少し ぼてっ としてしまったのは気流の影響を受けたものです。連続する2コマでも下の様に星像が変化していました。

各120秒露光 連続する2コマの中心500ピクセルの星像比較
わずかな差ではありますが左の方が星像が小さいです。

冬の悪いシーイング下でもこれだけの性能を発揮してくれているのを見ると、夏の気流が良い時季に撮影をするのが楽しみになります。

 

フォーカサーの使用感と気温によるピント変化

フォーカス調整にはラック&ピニオン式が採用されています。合焦ハンドルの回転はものすごく滑らかで、フルサイズの冷却カメラを取り付けた状態で筒先を天頂付近に向けても滑らかなタッチのまま動かすことが出来ました。ただその滑らかさゆえに合焦ハンドルに触れただけでもピント位置が変化してしまうほどです。鏡筒の性能を十分に発揮すべく精密なフォーカス調整にはオプション品の併用が必須でしょう。標準でデュアルスピードフォーカサーの付属はなく用途に応じた汎用性が考慮された設計となっており、ZWOのEAF(電動フォーカサー)を取り付けることも可能です。

デュアルスピードフォーカサー(左)とEAF(右)を取り付けた様子
ビクセンWebサイトより)

 

また今回はバーティノフマスクを使用して気温変化によるピント位置の移動についても検証しました。日没頃から鏡筒を設置し、できる限りの温度順応を済ませてから撮影に臨みましたが、約2度の外気温変化でもバーティノフマスクの回折光条にハッキリわかる違いが出ました。星像が超シャープな分、気温変化によるピント移動にはやはり敏感なようです。

スタッフの個人的な感覚ですが、もし私が使用するなら1度ごとにピント位置をチェックしたいところです。

 

カメラ回転機構

今回は「直焦ワイドアダプター60DX EOS用」(別売品)を使用したため、その回転機構でカメラの回転を合わせを行いましたが、ネジを閉めて固定する際に画角が0.1~0.2度ほどずれてしまうことがありました。多くの場合0.1度のずれはそこまで気になりませんが、精密な回転合わせを短時間で行うのは難しそうです。
(カメラ回転装置が有ると使いやすいということを改めて感じます・・・)

直焦ワイドアダプター60DX EOS用
ビクセンWebサイトより)

先日のCP+では参考出品として、天体用CMOSカメラの接続に特化した「直焦ワイドアダプター60DX for 48mm」が展示されていました。これが登場すれば、ますます使いやすくなりそうですね。

 

鏡筒バンド

鏡筒バンドは専用の「VSD鏡筒バンド115S」(別売品)が用意されています。

バンドを締めるネジは程よい大きさで、とても回しやすく感じました。寒さで手がかじかんでいる場合でも回しやすそうです。また、完全に緩めた場合でも下側に"くるっ"と回ってしまうことはありません。鏡筒が傷つかないように配慮された設計となっています。

専用の鏡筒バンドを取り付けた様子
ビクセンWebサイトより)

 

専用収納ケース

持ち運びに便利な専用の収納ケース(別売品)もございます。接眼部側が広く設計されており、EAFやカメラマウントを取り付けた状態でも鏡筒を収納することが可能です。鏡筒バンドやアリガタの金具も取り外さずに持ち運べるのはうれしいですね。(以下の画像はビクセンWebサイトより)

 

おわりに

先日のCP+では、参考出品として専用のレデューサー「レデューサーV0.71x」も発表され、ますます注目を浴びている今話題の鏡筒です。「VSD90SS」のシャープネスな星像を体験してみませんか?

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「バックフォーカス」と「カメラの接続方法」について。基礎事項から具体例までご紹介いたします。

最近は天体望遠鏡CMOSカメラの接続についてのお問い合わせが増えてきています。これらの接続は、これまでは「Tリング + カメラ」のほぼワンパターンでしたが、現在はCMOSカメラのラインアップが増えて接続方法が多様化し、以前より複雑になりました。鏡筒側の取り付け規格も従来のM42ネジに加えてM48ネジが増えてきました。こうした背景を踏まえ、今回のブログ記事では主要な接続方法を一通りご紹介したいと思います。

 

はじめに

このような話題を扱う際に、まずは天体望遠鏡とカメラの接続には大きく分けて2種類あるということをお伝えしたいと思います。

 

(1) 「ただピントが合えばOK」のパターン

主な例として、①補正レンズが無い屈折望遠鏡、②補正レンズと対物レンズが一体となっている屈折望遠鏡、が挙げられます。

上の模式図のように、ピント合わせによって「対物レンズユニット一式」と「センサー面」との距離のみが変わる場合は、ユーザーが調整できる光学ユニット同士の間隔は1箇所のみです。この距離を適切に調整してピントを合わせることができればOKです。

この場合は、(基本的にはシステムチャート通りに接続するのが確実なのはもちろんですが、)お手元にあるリングを適当に接続してピントが合えば、それで使っていただいてもOKです。

 

 

(2)システムチャート通りに接続する必要があるパターン

上の模式図ではピント合わせの際に、光路中の「レンズ・鏡面同士の距離」が変わります。ドロチューブやヘリコイドよりもカメラ側に補正レンズのある場合(FS-60CB+レデューサーC0.72×、FMA180proなど)が該当します。この場合はユーザーが調整できる光学ユニットどうしの間隔が複数あり、どちらもメーカーの想定どおりに調整する必要があります。

 

例えば補正レンズ~センサー面の距離がメーカー想定よりも大きくなると、ドロチューブ繰り出し量は減り(あるいはピントが合わない)、補正レンズの効果が強く出すぎて周辺像が過補正になってしまいます。逆に補正レンズ~センサー面の距離が近すぎるとドロチューブは長く繰り出す必要があり(あるいはピントが合わない)、周辺像の補正が足りず結像性能が劣化します。

実際にFS-60CB + レデューサーC0.72× で試してみました。補正レンズ~センサー面の距離を規定より5mm長くすると、APS-Cセンサーの周辺像でもかなりの悪化が見られます。また、この際はレデューサーの効果が強まって、合成焦点距離はカタログ値の255mmよりも短くなりました。

このようにユーザーが調整できる「レンズ・鏡面どうし、あるいはレンズ・鏡面からセンサー面までの距離」が複数箇所ある場合は、システムチャートに従って補正レンズ~センサー面の距離を正しく合わせる必要があります。これを守らないと、仮に無限遠にピントが合ったように見えても、実は中心像のシャープネスが設計値より落ちていたり、周辺像が肥大したり、実際の焦点距離が設計値とズレたりします。

※対物レンズ~補正レンズの距離はドロチューブである程度調整できるので、例えばカメラ回転装置の代わりに同程度の光路長を持つ延長筒で代用したりするのはアリです。

ドロチューブ内部に補正レンズを組み込んだAX103S、ドロチューブに補正レンズをねじ込むεシリーズ等も該当します。他にも主鏡移動方式のカセグレン系(Mewlon、シュミカセなど)や副鏡移動方式のMewlon-CRSなどもそうです(ピント合わせで鏡間距離が変わるため)。

 

当店にいただくお問い合わせでは、多くの場合、(2)のパターンで補正レンズ(または鏡面)からセンサーまでの距離に原因があります。この距離は一般に「バックフォーカス」あるいは補正レンズの金枠端面から測った距離であることを明示して「メタルバック」と呼ばれます。これらの用語は直焦点の場合にも接眼体後端から焦点面までの距離を指して使われることもありますが、特に補正レンズを使用する場合、バックフォーカス/メタルバックの概念はたいへん重要です。

補正レンズがピント移動によって動く場合や、主鏡や副鏡を動かしてピント合わせを行うカセグレン系鏡筒の場合は、メーカーが公開しているシステムチャートの通りにリングを接続し、正しいバックフォーカス/メタルバックで使用するようにしましょう。

 

ただし、各社が公開しているシステムチャートは主に一眼レフカメラの使用を前提としています。CMOSカメラはさまざまな接続方法が可能なので、それを鏡筒側のシステムチャートで網羅的に紹介することは困難です。ユーザーが自身の機材に対する知識を持って、正しい接続を行う必要があります。

ここからは長くなりますが、基本的な接続方法を一通り網羅してみたいと思います。

 

基本的な接続方法

1. M42ネジ バックフォーカス55mmの場合

(主な例:Askar FMA135)

デジタル一眼レフカメラ

ほとんどの場合、Tリングとデジタルカメラの合計でバックフォーカスが55mmとなります。(例えばキヤノンEFマウントではTリングの光路長が11mm、ボディのフランジバックが44mmで合計55mmです。ニコンFマウントでは同8.5mm+46.5mm=55mmとなっています。このように、Tリングの光路長は対応するカメラボディにより異なります。)なので市販品をそのまま取り付けるだけでOKです。

フランジバック=カメラの取り付け面からセンサー面までの距離。

具体的には、Tリングとして

タカハシ カメラマウントDX-S

ビクセン Tリング(N)

ケンコー TマウントアダプターII

等が使用できます。

 

【天体用CMOSカメラ / キヤノンニコンマウント経由】

天体用のCMOSカメラでは、そのメーカーからカメラマウントへの変換アダプターが用意されていることがあります。この場合はデジタル一眼レフカメラと同様に簡単な接続が可能です。使用するのはTリングに加えて「マウントアダプター」です。例えばZWO社ではキヤノンEFマウントに対してこのような製品を用意しています。

シンプルなマウントアダプター

フィルターを着脱しやすいマウントアダプター

ニコン用等もあります。

 

【天体用CMOSカメラ / 全ネジ接続】

M42ネジからカメラまでの全ての接続をねじ込みで行う場合、カメラ自身のフランジバックに応じて適切な長さの延長筒を使用する必要があります。代表的なものをこちらにまとめました。

フランジバックが12.5mmのCMOSカメラの場合、

ZWO M48→M42変換リング

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

笠井トレーディングT2延長等セット(15mm+10mmを使用)

でバックフォーカスがほぼ55mmとなります。

フランジバックが17.5mmのCMOSカメラの場合、

ZWO M48→M42変換リング

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

ZWO M42→M42エクステンダーリング(21mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

 

【天体用CMOSカメラ /  31.7スリーブ差し込み】

スリーブ差込の場合、スリーブの固定位置によってある程度の自由度があるため、使用する延長リングの組み合わせは一つには決まりません。スリーブを奥まで差し込まず「浮かせて」固定するのもアリですが、ここではスリーブを奥までしっかり差し込む前提でリング構成を検討しました。

以下に、代表的な例を示してみます。

フランジバックが12.5mmのCMOSカメラの場合、

バリチューブ(小)(20mm)

MOREBLUE TP521 M42*0.75→1.25inホルダー変換アダプター(20mm)

・スリーブの厚み(1.5mm)

でバックフォーカスがほぼ55mmとなります。

フランジバックが17.5mmのCMOSカメラの場合、

・バーダーT2延長筒(16mmで使用)

MOREBLUE TP521 M42*0.75→1.25inホルダー変換アダプター(20mm)

・スリーブの厚み(1.5mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

M42ネジ用の1mm厚シムリングもご用意しました。必要に応じてご活用ください。

 

2. M48ネジ バックフォーカス55mmの場合

(主な例:Askar FMA180pro, SkyWatcher鏡筒の多く)

デジタル一眼レフカメラ

各社で名称が異なりますが、「M48カメラアダプター」あるいは「M48大型Tリング」などと呼ばれるリングを使用します。多くの場合でバックフォーカスが55mmとなるようになっています。具体的には

Sky Watcher M48 カメラアダプター

笠井トレーディング M48大型Tリング

等が使用できます。

 

【天体用CMOSカメラ / キヤノンニコンマウント経由】

M42接続の時と同様に、「M48カメラアダプター」と「マウントアダプター」を併用します。

 

【天体用CMOSカメラ / 全ネジ接続】

M48ネジからカメラまでの全ての接続をねじ込みで行う場合、カメラ自身のフランジバックに応じて適切な長さの延長筒を使用する必要があります。代表的なものをこちらにまとめました。

フランジバックが12.5mmのCMOSカメラの場合、

笠井トレーディングT2延長等セット(20mm+5mmを使用) 

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

フランジバックが17.5mmのCMOSカメラの場合、

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

ZWO M42→M42エクステンダーリング(21mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

 

【天体用CMOSカメラ /  31.7スリーブ差し込み】

以下に代表的な例をご紹介します。

フランジバックが12.5mmのCMOSカメラの場合、

笠井トレーディングT2延長等セット(20mm+5mmを使用) 

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

フランジバックが17.5mmのCMOSカメラの場合、 

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

MOREBLUE TP521 M42*0.75→1.25inホルダー変換アダプター(20mm)

・スリーブの厚み(1.5mm)

でバックフォーカスがほぼ55mmとなります。

 

3-1. タカハシ規格(システムチャートでカメラマウントDX-WRを使用する場合 / M54ネジ・バックフォーカス56.2mm)

デジタル一眼レフカメラ

システムチャート通り、カメラマウントDX-WRをご使用ください。ただし純正品はEOS用(キヤノンEFマウント)ニコン用(ニコンFマウント)しかご用意がありません。その他のカメラを使う場合はスターベースオリジナルの"相当品"をご用意しています。

 

【天体用CMOSカメラ / キヤノンニコンマウント経由】

「カメラマウントDX-WR」と「マウントアダプター」を併用します。EOS

キヤノンEFマウント)とニコン用(ニコンFマウント)のどちらでも可です。フィルタードロワー付きのマウントアダプターもあります。

 

【天体用CMOSカメラ / 全ネジ接続】

冷却タイプやセンサーの大きなカメラ(代表例としてM42接続・フランジバック17.5mm)に限ってご説明いたします。上図のようにタカハシ接続リングM54-M48を用いて接続すれば全てネジ込みによる接続で、バックフォーカスをほぼ完璧に一致できます。21mmリング16.5mmリングはそれぞれフィルターホイールやオフアキシスガイダーに置き換えできます。当店ではそれぞれのシステムチャートを、カメラの商品ページでご紹介しています。

 

【天体用CMOSカメラ /  31.7スリーブ差し込み】

鏡筒のシステムチャートには補正レンズを使用した際の眼視接続図が載っていることがありますが、アイピースとカメラは差し込み端面から焦点面までの距離が異なるため、システムチャートのアイピースをカメラに置き換えるだけでは無限遠にピントが合わなかったり、仮にピントが合っても結像性能が損なわれることがあります。

ここまでにご説明した内容を参考に、適当なリングを使用してバックフォーカスを整えてご使用ください。例えば、タカハシ接続リングM54-M48を用いて鏡筒後端をM48オス化することで、2.のスリーブ差込みの場合と同様の構成でスリーブ差込みが可能になります。

 

 

3-2. タカハシ規格(システムチャートでカメラマウントDX-60Wを使用する場合 / M52ネジ・バックフォーカス56.0mm)

デジタル一眼レフカメラ

システムチャート通り、カメラマウントDX-60Wをご使用ください。ただし純正品はEOS用(キヤノンEFマウント)とニコン用(ニコンFマウント)しかご用意がありません。その他のカメラを使う場合はスターベースオリジナルの"相当品"をご用意しています。

 

【天体用CMOSカメラ / キヤノンニコンマウント経由】

「カメラマウントDX-60W」と「マウントアダプター」を併用します。EOS

キヤノンEFマウント)とニコン用(ニコンFマウント)のどちらでも可です。フィルタードロワー付きのマウントアダプターもあります。

 

【天体用CMOSカメラ / 全ネジ接続】

冷却タイプやセンサーの大きなカメラ(代表例としてM42接続・フランジバック17.5mm)に限ってご説明いたします。上図のようにタカハシ-ZWO接続リング60Wを用いて接続すれば全てネジ込みによる接続で、バックフォーカスをほぼ完璧に一致できます。21mmリング16.5mmリングはそれぞれフィルターホイールやオフアキシスガイダーに置き換えできます。当店ではそれぞれのシステムチャートを、カメラの商品ページでご紹介しています。

 

【天体用CMOSカメラ /  31.7スリーブ差し込み】

3-1の場合と同様に、システムチャートのアイピースをカメラに置き換えるだけでは無限遠にピントが合わなかったり、仮にピントが合っても結像性能が損なわれることがあります。

ここまでにご説明した内容を参考に、適当なリングを使用してバックフォーカスを整えてご使用ください。例えば、タカハシ-ZWO接続リング60Wを用いて鏡筒後端をM48オス化することで、2.のスリーブ差込みの場合と同様の構成でスリーブ差込みが可能になります。

 

 

4.ビクセン規格

現状では、通常の市販品によって全ネジ接続でつなぐことはできません。

直焦ワイドアダプター60または直焦ワイドアダプター60DXを用いてカメラマウント化し、一眼レフ(EFマウント/Fマウント)の場合は直接カメラを、CMOSカメラの場合は対応するカメラマウントアダプターを用いて接続することで、バックフォーカスを合わせることが可能です。

 

 

このブログ記事は、おそらくこれまでで最も長く、複雑な内容であったかと思います。ここまでお読みくださりありがとうございました。皆様が正しいバックフォーカスで各種機材を接続し、光学性能をフルに活かして、素敵な天体写真を撮ったり電視観望体験をしていただけることを願っております。

TOA-645フラットナーのTSA-120鏡筒への適合について

TOAシリーズに迫る高い眼視性能を備えつつ、格段に軽量で扱いやすいTSA-120鏡筒。大口径屈折望遠鏡のデビューに好適なスペックで、発売以来多くの方にご愛用いただいております。

この鏡筒は基本的は眼視性能の高さをウリにしていますが、実は天体写真用としてもお勧めです。TOAシリーズ用に設計された補正レンズ(TOA-35レデューサー0.7×TOA-35フラットナー)を流用することで、フルサイズの周辺まで整った像が得られます。

TOA-35フラットナー併用時は周辺光量低下のためイメージサークルΦ40mmとなっていますが、星像の様子は35mmフルサイズの周辺まで良好です。

TSA-120にTOAシリーズ用の補正レンズが使えるのなら、もしかしたらTOA-645フラットナー0.99×も使えるのではないか…?という想像ができます。(実際そのようなお問い合わせもございます。)

そこで、今回のブログ記事ではTOA-645フラットナー0.99×をTSA-120に取り付けたらどのような写りになるのか試してみたいと思います。レデューサーの類推から、こちらも同じくTOA-150B用の構成(TOA-645フラットナー150セット)を使いました。

※今回試した組み合わせはタカハシが公式にアナウンスしているものではなく、スターベース東京の独自検証です。焦点距離、公称イメージサークル、スポットダイアグラム等のデータもありません。この組み合わせについてはタカハシにお問い合わせいただいてもデータをご提供できません。ご了承ください。

 

接続について

2通りの方法をお勧めいたします。下図の接続方法(1)がシンプルで、ドロチューブ後端から

カメラ回転装置M

TOA-645フラットナー150セット

・カメラマウントDX-WR

と接続すれば無限遠にピントが合います。ただしこの状態ではドロチューブ繰り出し量がほぼ最大で、数mmしか余裕がありません。オートフォーカサーを使用する場合はドロチューブの端点まで回転してしまうと機器に負荷がかかりますから、カメラ回転装置Mとフラットナーの間に何らかの延長筒を加えてドロチューブの繰り出し量を減らし、オートフォーカサーが安全に駆動できるようにした方が良いと思います。接続方法(2)ではフィルターボックス補助リング(TSA-102)という、長さ52mmのM72延長筒を併用しています。

 

実際の撮影結果

TOA-35フラットナーはシステムチャート通り、TOA-645フラットナーは上記(2)の接続として、それぞれオリオン大星雲を撮影してみました。カメラは35mmフルサイズです。

どちらのフラットナーでも中心から周辺まで良く写っています。ただし周辺光量には大きな違いがあります。公称イメージサークルΦ40mmのTOA-35フラットナーに対して、TOA-645フラットナーの場合はAPS-C周辺で約10%、フルサイズの周辺では50%以上も光量が豊富な結果となりました。

TOA-645フラットナーを使用した場合、焦点距離は900mm×0.99=891mmほどでしょうか。この焦点距離では画面全体に銀河や星雲が写ることも多いので、周辺まで光量豊富に写しとめられることは大きなメリットに感じます。

 

カメラ回転装置の併用について

TOA-35フラットナーの場合、システムチャート通りに接続すると、カメラの構図回転は50.8スリーブ側面の固定ネジを緩めて行うことになります。極端に重いカメラを使わない限り、50.8差し込みの接続でも強度や傾きズレは問題ないことがほとんどですが、「カメラの構図回転」に関してはカメラが重くなるほど微調整が難しくなります。

これを解決するためにカメラ回転装置を追加しようとすると、標準付属の50.8アダプター(屈折用)を光路長の短い50.8アダプター(M-250CR)へ変更する必要があります。結果として下図のような構成になります。

このように比較するとコスト面ではあまり差がありません。また、どちらもカメラ回転装置MとカメラマウントDX-WRはレデューサー使用時にも流用できます。

TOA-35フラットナーは50.8スリーブ仕様で、2インチ天頂ミラーと併用できたり眼視-撮影の切り替えを素早く行えるのが魅力ですが、天体写真を撮ることに限ってみれば、やはりカメラ回転装置の併用をお勧めしたいと感じます。

 

今回のブログ記事では2つのフラットナーを比較しました。TOA-645フラットナーは大口径レンズのため周辺光量が豊富で、シャープネスに関してもTOA-35フラットナーとほぼ変わらない結果となりました。TSA-120鏡筒をお持ちの方は天体のクローズアップ撮影にいかがでしょうか?

<TSA-120鏡筒にバンド・アリガタを加えたセット販売もございます!>

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新製品「2×オルソバロー」登場!!!

12月19日に発売となったタカハシの新型バローレンズ「2×オルソバロー」。"収差の無い対物レンズに取り付けると、どこまで収差の無い状態のまま焦点距離だけを延長することができるかを追求した"(タカハシWebサイトより)ということで、結像性能には大いに期待できそうです。

この記事ではそんな注目の新製品2×オルソバローについて、気になる情報をまとめてみたいと思います。

タカハシ 2×オルソバロー 外観です。

 

概要

2×オルソバローは標準的なアイピースに対して同焦点設計になっています。つまりアイピースを単独で使うのと、2×オルソバロー+アイピースとするのでは、ドロチューブの繰り出し量はほとんど変わりません。

※眼視のピント位置は個人差があり、「同焦点」とされる場合でも、観察者によってはドロチューブ繰り出し量がわずかに変わることがあります。

ただしカメラや天頂プリズム等を取り付ける場合には、ドロチューブの繰り出し量が変わります。これは追ってご説明します。

 

取り付けについて

2×オルソバローを使う際に気にしていただきたいのが「差し込み部分の長さ」です。先端の黒色部分は外径Φ30mmで、31.7mmスリーブの付け根から測った差込深さは49mmです。通常のアイピースの差込深さ(タカハシ製では通常25mmほど)に比べて長いので、鏡筒側パーツに当たらないかをご確認ください。

例えば31.7mm径の天頂プリズム/ミラーと併用する場合、2×オルソバローは天頂プリズム/ミラーよりも対物側に配置する必要があります。

 

50.8mm径の天頂ミラーやプリズムは、接眼側のスペースに余裕があるので、ほとんどの場合で写真のような接続が可能です。

 

また、2×オルソバローのレンズユニットは31.7mm(アメリカンサイズ)のフィルターと同じネジ規格ですから、フィルター対応の天頂ミラー等にはこのように取り付けることも出来ます。

 

CMOSカメラを取り付ける場合は、差し込みだけでなく、2×オルソバロー後端のM42オスネジにカメラをねじ込む方法もあります。

 

惑星撮影でADCを併用する場合は、バローとADCは直接ねじ込み、ADCとカメラは構図回転できるよう31.7スリーブを介して取り付けるのが良いでしょう。このような使い方にも便利です。

 

取付方法と拡大率について

このように2×オルソバローは眼視にも撮影にも多目的に使用できますが、接続方法によって実際の拡大率が変化することに注意してください。

タカハシWebサイトより

2×オルソバローの後端から焦点面(焦点を合わせたい位置)までの距離[メタルバック=b]が大きくなるほど、上記の計算式に従って拡大率が上昇します。

また、拡大率の変化に伴ってドロチューブの繰り出し量も変える必要があります。以下に具体的な接続例についてスタッフが実測した結果をご紹介します。

※2024/01/20 最下段の接続を追加しました



これらの結果より、接眼部に2×オルソバロー → (追加アクセサリー) → アイピースやカメラ、と取り付ける場合には、「bの増加分」と「アイピース単独で使用する場合に比べたドロチューブの繰り込み量」がおよそ6対1となることが分かります。2×オルソバローのご検討に際しては、上記のピント移動量を参考にして、ご自身の機材に対して問題なく使えそうかご確認ください。

 

このように2×オルソバローはメタルバックに応じて実際の拡大率が変わり、理論上は3倍や4倍になるようにして使うことも出来ますが、元々は2倍+αくらいまでで使うことを想定されています。結像性能の観点からは、拡大率は最大でも2.7-8倍くらいまでになるようにして使用するのが良いのではないかと思います。

 

 

具体的な運用について

CMOSカメラによる惑星撮影では、例えば

(1) FC-76DやFC-100D(F7~8の屈折望遠鏡

 → 2×オルソバローにCMOSカメラを31.7mmスリーブで差し込み(フィルターはスリーブ先端へ取り付け) で合成F値が15前後になるので、ピクセルピッチの細かいZWO ASI715MCを使用する

(2) Mewlon180CやMewlon210(F10-12の大口径反射望遠鏡

 → 2×オルソバロー、ADC、CMOSカメラと接続すると合成F値が30~35程になるので、惑星用として定評のあるZWO ASI662MCやセンサーが大きくて導入しやすいZWO ASI585MCを使用する

といった運用が考えられます。いずれの場合も無限遠には問題無くピントを合わせられます。

※このあたりは昨年の別記事でご紹介しております。あわせてご覧ください。↓

starbase.hatenablog.jp

 

肝心の2×オルソバローの「結像性能」についてですが、まずは発売からこれまでに使った感想をお伝えいたします。(スタッフ個人の主観です。あくまで一個人の感想なので、人によっては感じ方が異なる場合もあると思います。)

今回はTOA-130NFB鏡筒を使って、木星、月、重星などを観察しました。TPL-6mmと2×オルソバロー + TPL-12.5mm や TPL-9mmと2×オルソバロー + TPL-18mmのようにほぼ同じ倍率となるようにして比較したところ、両者の見え味にわずかな差は感じましたが、総合的に甲乙付け難く、どちらも中心像については同程度という印象でした。

ただし2×オルソバローを併用したほうが

・アイレリーフの長いアイピースを使っているので覗きやすく、また目とアイピースが離れるためレンズが曇りにくい

・(TPLアイピースとの組み合わせでは)周辺像が明らかに良くなるので月面観察では視野のフチまでシャープに見えて好感触

という利点を感じます。2×オルソバローを追加することによるコントラストやシャープネスの劣化は、今回は感じませんでした。

 

例えば現在12mm前後のシャープなアイピースをお待ちで、次は6mmくらいのアイピースが欲しいなぁ…と考えている方は、アイピースではなく2×オルソバローを追加することで6mm相当の倍率とするのも良いと思います。さらにここへTPL-9mmを買い足せば、2×オルソバロー併用の有無で4.5mm / 9mmという2通りのシャープな見え味が得られます。このように、良質なバローレンズが1本あれば、アイピースとの組み合わせでいろいろな倍率を実現できるのも魅力です。

他の鏡筒とのマッチングやシーイング条件の良い時(関東では春以降になるでしょうか…)の詳細な比較は、機会を見てまたご紹介したいと思います。

 

他にもお伝えしたい点があります。それはアイピース側の固定ネジが2つあることです。1つより2つのほうが良い…当たり前のことではありますが、「気軽な眼視なら手が届きやすい方の1つだけを締める」「重いカメラを取り付ける場合は2つともしっかり締める」など、状況に応じて柔軟に使える、その自由度が上がることに、スタッフはちょっと感動しました。ネジには硬めのグリスが使用され、タカハシらしい適度な締め感が実現されています。


2×オルソバローを使うのが楽しみですね!現在在庫は潤沢にございます。ぜひご検討ください!

 

 

すごいぞ!「FSQ-85EDレデューサーQB0.73×」のすすめ

11月14日に堂々発売をした「FSQ-85EDレデューサーQB0.73×」は、大変な人気を博しておりまして多くの方にお買い求めいただいております。ありがとうございます。なお、在庫につきましては潤沢にございますので、本記事や前回の記事などをご参考にじっくりご検討いただければと思います。

 

それでは早速!作例のご紹介をしていきます。まずは、前回の記事でご紹介できなかったフルサイズカメラでの作例です。

FSQ-85EDP + FSQ-85EDレデューサーQB0.73×
焦点距離330mm f/3.9
Canon EOS6D(IR改造)
4分×95コマ 総露光6時間20分

スポットダイヤグラムを裏切らない素晴らしい星像を実現しています。フルサイズ周辺でも申し分はないでしょう。

スポットダイヤグラム

今回は、馬頭星雲(IC434)やM78星雲、オリオン座の三つ星(2等星のアルニタク、アルニラム、ミンタカ)を含む構図にしてみました。中心から周辺まで均一でシャープな星像が得られています。周辺減光の様子は画像をご参照ください。

3分1枚撮って出しの画像です。

 

APS-Cサイズのカラー冷却CMOSカメラ「ZWO ASI2600MC Pro」でも撮影してみました。

オリオン大星雲
ASI2600MC Pro 3分×24コマ 1秒×15コマ 
総露光時間 1時間12分15秒

いかがでしょうか。総露光は約1時間12分です。

近年の長時間露光傾向をふまえれば、決して長いとはいえない総露光時間かと思います。また撮影地も、天の川の見える場所ではありますが、南側の低空は少々街明かりも気になるような場所で、主観ではありますが"非常に暗い"といえるところではありません。ただ、透明度とシーイングはよい日でした。

このように"長い"とは言えない総露光時間&"とても良い"とは言えない条件で撮影した、このオリオン大星雲。周囲のもくもくまで結構写ってくれて撮影したスタッフもビックリです。これを実現してくれたのは、何といっても「F3.9」という明るいF値でしょう。

さらに明るい星雲部分を拡大してみます。

中心部切り出し

1時間ちょっとでこれだけの解像度を実現できるのかと驚きました。今更ながら「FSQ-85EDP鏡筒」のポテンシャルの高さを再認識します。やはり、自信を持ってお勧めできる素晴らしい鏡筒に間違いありません。

 

M42以外にもいくつかの対象を"短めの"総露光時間で撮影してみました。

馬頭星雲周辺
ASI2600MC Pro 3分×26コマ 5秒×12コマ 
総露光時間 1時間19分

馬頭星雲や燃える木の構造も十分に解像してくれています。

続いてばら星雲です。

 

ばら星雲
ASI2600MC Pro 3分×20コマ 5秒×12コマ
総露光時間 1時間1分 

ばら星雲は冬の天の川の中に位置する星雲のため、これまでの3作品と比較して恒星が多く写っている印象です。撮影した日は、シーイングが非常に悪く星像がぼてっとしてしまっていましたが、画像処理をしてみたら星の色は良く出たという印象でした。

 

いかがでしょうか。

どの対象も1時間ほどと、短めの総露光時間ながら十分な写りを得ることができ、仕上がった作品にも満足することが出来ました。

昨今は「1晩1対象」や「長時間露光は正義」のような雰囲気を感じることもありますが、貴重な仕事の休みを使って、数時間運転して、寒い中頑張って機材を設置したのなら「たくさんの対象を撮影したい!」と思うのも自然かと思います。

今回は「FSQ-85EDPFSQ-85EDレデューサーQB0.73×」という組み合わせで撮影していますが、F3.9という非常に明るいF値や、その鏡筒の光学性能の高さを生かせば、一晩にたくさんの対象を撮影して楽しむことも十分可能だと感じさせてくれました。

 

さらには、せっかくですので自宅のベランダ(中程度の光害地)で オプトロンの「L-eXtremeフィルター」を使用して比較的長めの総露光時間でも撮影してみました。撮影開始したら寝てしまう、お気楽の睡眠撮影です。

オリオン大星雲
ASI2600MC Pro 3分×173コマ 
総露光時間 8時間39分

星雲の色は先のM42のようにはいきませんが、長い総露光時間のおかげで背景が滑らかになり、無理のない表現が実現できているかと思います。自宅のベランダなどじっくり撮影できる場所から、このようにお気軽撮影を行うのにも、Fの明るい光学系は便利です。

 

なお「FSQ-85EDレデューサーQB0.73×」を取り付ける場合「カメラ回転装置M」が必要になりますが、「FSQ-85ED鏡筒」をお使いの場合はこれを買い足していただくことになります。しかしまずは安価にスタートしたい…という場合、カメラ回転装置Mの代わりになる延長筒として「主焦点補助リング(M72 P1.0 32mm延長筒)」をご使用いただくことも可能です。

主焦点補助リングを使用した場合


今回は以上となります。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

オリオン座が日付をまたぐ頃に南中する、冬の星雲星団が撮影しやすい時季となりました。鏡筒のポテンシャルの高さ、明るいF値と周辺像の良さを実現するレデューサーを使って、メジャーで明るい星雲星団をたくさん撮影してみませんか?

【FS-60C 誕生25周年記念】FS-60CBX発売!!

1999年1月に生産を開始したタカハシの2枚玉フローライトアポクロマート望遠鏡「FS-60C」は2024年に誕生25周年を迎えます。

FS-60C

(記事を書いている私もそうでしたが)大変ありがたいことに「いつかはタカハシ」と弊社鏡筒にあこがれを抱いてくださる方も多くいらっしゃり「FS-60C(CB/Q)」はそんな皆様の夢を長年にわたって叶えてきた鏡筒であるかもしれません。初めて手にした"思い出の望遠鏡"としていつまでも大切に使用してくださる方も多くいらっしゃいます。本当にありがとうございます。

現行品である「FS-60CB」の一番の魅力は、軽量コンパクトでタカハシ鏡筒の中では比較的安価であることでしょう。「レデューサーC0.72×」( 255mm/F4.2)や「FC/FSマルチフラットナー1.04×」( 370mm/F6.2)を併用することで、様々な焦点距離に変化させることもできます。十分に天体写真を楽しむことができる望遠鏡です。

また「エクステンダーCQ1.7×」を使用すれば「FS-60Q」(600mm/F10)相当となり眼視用のコンパクト屈折望遠鏡としても活躍してくれます。

このように現在でも皆様に愛され続けている「FS-60C」が誕生25周年を迎えるにあたって今回発売となったのが「FS-60CBX」です。

限定モデル FS-60CBX

限定モデル「CBX」の大きな特徴は、撮影スタイルに対応しやすいように最小限のモジュール構成となっていることです。一番の魅力は「快適な撮影に必須な回転装置が標準で付属していながらFS-60CBより安い」ことかと思います。以下に2つの鏡筒の違いを表にまとめてみました。

  FS-60CBX FS-60CB
カメラ回転装置(S) あり なし
ドローチューブ延長筒 あり あり
補助リング(FS-60CB) あり あり
眼視アダプター(FS-60CB) なし あり
アイピースアダプター接続環(長) なし あり
31.7アイピースアダプター なし あり
6×30ファインダー(脚つき) なし あり
販売価格(税込) 79,200円 89,100円

 

このように「天体写真を始めるためにFS-60CBを買ってみようかなぁ・・・」と思っている方には、まさにぴったりのリング構成となっております。私もFS-60CBで天体写真を楽しんでいますが、先日たまたまアンドロメダ銀河を撮影しましたのでご紹介させていただきます。

M31 アンドロメダ銀河
FS-60CB+レデューサーC0.72×+ASI294MM Pro
ゲイン120 2×2bin 180秒×58枚 総露光 2時間54分

いかがでしょう。結構迫力のある「THE アンドロメダ銀河」を撮影でき大満足です。天体写真って楽しい!と思わせてくれる鏡筒であることを再認識できました。

 

また、軽量かつコンパクトであるこの鏡筒は「海外遠征」でも大活躍です。時間が限られた中での撮影には、レデューサー併用でF4.2となる”速写性”も大きなメリットとなってくれます。

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大マゼラン雲 ニュージーランド・レイクテカポ湖畔にて撮影 
 Canon EOS 6D(IR改造) 4枚モザイク

さらに「FC/FSマルチフラットナー1.04×」を併用すれば周辺の星像が大幅に改善され、ほぼ全面フラットフィールドとなることも魅力の一つです。

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IC1396(jpeg撮って出し)
FS-60CB + FC/FSマルチフラットナー1.04×+ Canon EOS 6D(IR改造) 
ISO-3200 360s 

また「エクステンダーCQ1.7×」を使用して「FS-60Q」相当にすれば、F10と暗くはなってしまいますが、中心から周辺まで均一でシャープな焦点距離600mmの望遠レンズとなるため、星雲や銀河をさらにクローズアップしての撮影にも活用できます。

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馬頭星雲付近 
FS-60CB+エクステンダーCQ1.7×+Canon EOS 6D(IR改造) 
ISO-6400 150秒×16枚(総露光40分)

 

今回は以上となります。回転装置付きで天体写真撮影に特化したリング構成の25周年記念限定モデル「FS-60CBX」。ぜひご検討ください!!