スターベース東京のブログ

スターベース東京のブログです。店頭の様子や機材情報を中心に書いていきます。不定期更新。

【M-180C + μフラットナーレデューサー実写画像】眼視だけじゃない!銀河撮影にもミューロンを使いこなそう

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M81 2019年1月10日 長野県小海町にて撮影

※上の画像はAPS-Cサイズ(1.6分の1)にトリミングしています。

 

◇概要

M(ミューロン)180C鏡筒に「μフラットナーレデューサー」を併用すると、焦点距離1760mm / F9.8 / イメージサークルΦ30mmとなりデジタル一眼レフなどのセンサーサイズに対応した写真用鏡筒となります。ミューロン(-CRSではない)は眼視や月惑星撮影専用と思われがちですが、実は本フラットナーレデューサーの併用で、銀河や星団への適性の高い、天体写真用の望遠鏡としても活かせるようになります!

本記事ではなかなか知られていないミューロンの良いところを紹介したいので、いつもより長めの構成となります。

 

まずはいつも通り

◇実写画像

を見ていきましょう。

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気流の「悪くない」日。Canon EOS6D(SEO-SP4) ISO-3200 600秒 jpeg撮って出し

 

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気流の「とても悪い」日。カメラなど条件は同じ。ただしフラット補正済み

これまでテストしてきた小口径屈折とは異なり、長焦点撮影時の星像の大きさは気流の影響をもろに受けます。星像そのものが常に細かく揺れ動いているために、その時間積分の結果として星像が大きくなるだけでなく、オートガイダーが気流の影響を拾うことで赤道儀の(オートガイド込みの)追尾精度が落ちることも星像肥大に影響します。

 

一般に「気流の不安定な冬場」+「大口径・長焦点」の組み合わせは星像がボテボテになってしまう最悪のパターンなのですが、それが功を奏して(?)今回は35mmフルサイズの周辺まであまり変わらない星像を得られました。

※ただし気流の安定する夏場ではまた違った結果になると思います。

 

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M-180C +μフラットナーレデューサー + Canon EOS6D(SEO-SP4)フラット画像

こちらはフラット画像です。イメージサークルΦ30mmのあたりから急な減光がはじまり、フルサイズの隅ではほとんど光を受けていないように思われます。ですが周辺光量はゼロではないので、上の撮って出し画像2枚目のように、フラット補正を行うことでフルサイズ周辺部の一応の救済が可能です。

フラット補正にかんしては、これまでテストしてきた小口径屈折と同様に、PC白色画面を撮影する方法が使えました。小口径屈折ではピッタリあうのですが、今回は過補正気味となってしまいました。この方法はいずれ紹介したいと思います。

 

銀河や星団の写真では、背景はあまり強調処理をかけず、暗めに仕上げることが多いと思います。その意味では(=フラット補正とともにノイズごと明るくなってしまった周辺部は、画像処理によってまた暗めに戻るのでノイジーな感じを受けない)μフラットナーレデューサーは「35mmフルサイズのカメラでも対応可能」と言ってよいかもしれません。

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トップ画像のトリミングなしバージョン。フルサイズのカメラだとこのような仕上がりになります

※右端に見切れているのはM82スターバースト銀河です。 

 

今回は等倍切り出し画像は(切り出した領域にほとんど星がなかったので)割愛します。

 

 

◇ピント合わせについて

ミューロン180Cは3本スパイダーを採用しているため、輝星には60°ごと、計6本の光条が出ます。なんとこの6本の光条は「ピント合わせ時にバーティノフマスクと同じはたらきをする」ので、ピント合わせがたいへん楽です!これは3本スパイダーのメリットのひとつですね。

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3本スパイダーはピント合わせには超便利!

 

◇ゴースト

M81の画像は、100m程度離れた場所にある複数の街灯の光を直に受けながら撮影したものです。画像左上の青い線をはじめ、よく見るといくつかのゴーストが確認できます。迷光を受ける環境では何らかの対策があったほうがよいでしょう。一方でM51の画像(近くに光源なし)ではゴーストは全く確認できません。

 

◇オートガイド

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星像が点にならない要因はいろいろあります。赤道儀本体の追尾精度だけでなく、三脚の地面に対する沈み込み、極軸合わせの精度、鏡筒や各種ケーブルが風に振られること、各部の自重によるたわみ、各種ケーブルの自重のかかりかたの時間変動など、ほんとうにさまざまな要因が重なり合って、星が「流れた」という症状になります。

オフアキシスガイドは有効な解決策のひとつですが、今回の組み合わせでは周辺光量が足りないのと長焦点ゆえにガイド星が見つからないと困ると思い、「アリガタを長いものに交換」して親子亀ならぬ「コバンザメ方式」でオートガイドに挑戦しました。

 

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「コバンザメ方式」。架台はEM-200、ガイド鏡はGT-40、オートガイダーはM-GENを使いました

 

その結果が上の画像です。10分間の露光に対して星はほとんど点像を保っています。わずかなズレは「長アリガタのたわみ」「オートガイダーケーブルが風に吹かれたこと」などに起因すると思われますが、それでもオートガイドしないのとでは雲泥の差です。

また、上の画像で確認できるように、露光中にミラーが傾いて星像が動く等といった現象は見られませんでした。(いわゆるミラーシフトはこのことではありませんので混同しないようご注意ください)

 

※EM-200の追尾精度が悪いのではありません。実際、ノータッチのほうの星像の「流れ」に対して垂直な方向の「振れ」は約3.5秒角と僅かです。長焦点の追尾はそれだけシビアだということです

※この「長アリガタ」は現在商品化を目指して企画中です。ご期待ください

 

 

◇まとめ

ミューロン180C(、210)は眼視や月惑星専用ではなく、オートガイドを併用すれば銀河や星雲、星団のクローズアップ撮影にも好適です!

 

 

 

ビクセン鏡筒×2 展示開始です!

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上=VSD100F3.8、下=A62SS

 

東京店にてビクセンさんの「VSD100F3.8」と「A62SS」の展示を開始しました!

 

VSD100F3.8は35mmフルサイズはもちろん645の画角までの均質な星像と本体4.5Kgの軽量さが魅力でファンも多く、A62SSはキャリングバック付属・コンパクトで気軽にどこでも持っていける手軽さが魅力の鏡筒です。

 

 

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FSQ-106ED(フードを縮めた状態)とVSD100F3.8の比較。かなりコンパクトです

天体写真用鏡筒としてFSQ-106EDと比較されることの多いVSD100F3.8ですが、スターベース東京店なら両方同時に見比べることができます!ぜひ見に来てください!

 

 

 

ジャンクレンズ大量入荷しました!

 

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ジャンク扱いのレンズが大量に入荷しました!

直径は20mm~40mm程度で、同径で凸レンズと凹レンズのペアも見つかりますから「色消し」になるかもしれません…!

キズ・ヨゴレあり、ノークレームノーリターンのジャンク品ですが、ほんとうにたくさんありますので、皆様ぜひご来店ください!!お待ちしております。

 

※今のところ東京店のみ・店頭販売のみです。

 

 

1月6日の部分日食

あけましておめでとうございます!

新年営業2日目となる本日ですが、予報が好転して東京も晴れとなりましたので店舗の近くで部分日食撮影をしてきました!

 

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2019/01/06 09:57 FOA-60Q + Canon EOS6D(ノーマル) F15 ISO-200 1/2秒 ケンコーPRO ND-100000使用



薄雲が絶えず通過するような状況でしたが、日食グラスでは太陽が欠けていく様子がよく分かりました。

 

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2019/01/06 10:06 FOA-60Q + Canon EOS6D(ノーマル) F15 ISO-200 1/500秒 ケンコーPRO ND-100000使用

 

こちらは食の最大時に撮影したものです。画像はトリミングしています。

2枚の画像はどちらも北が上です。約10分間のあいだに太陽に対して月が東に移動している(=月の方が見かけのスピードが遅い)ことが見て取れます。

 

本年もよろしくお願いいたします。

今年もありがとうございました!

 

本日、2018年最後の営業が終了しました。

今年は7-8月の火星大接近と12月の46Pウィルタネン彗星が世間を賑わせ、タカハシ製品では2月の「MRD(メリディアン)赤道儀」や8月の「FC-FSマルチフラットナー」、12月の「TSA-120N鏡筒」が登場しました。

 

そして!先日のASIAIRのアップデートでは現行「FG-Temma2Z」がついに対応となり、ASIAIRを用いた自動導入や別売りのアプリSkySafariと連携して自動導入できるようになりました。(ASIAIRを用いたZWO社のカメラによるオートガイドは以前からできました)

 

現状ではASIAIR起動時にZWO社のカメラに接続している必要があったり(起動後はカメラを抜いてしまって赤道儀だけつないだ状態にしてもOKです)、自動導入中の非常停止ボタンが見当たらなかったり、と難しい面もありますが、じきに解決されていくことでしょう。

2019年は本格的に「タカハシ赤道儀スマホから自動導入ができる」年になりそうです。

 

本年は皆様に大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

【東京店は1月5日より、名古屋店は6日より営業いたします。】

年末年始・営業時間のお知らせ

 

スターベース東京店の年末年始営業カレンダーです!

今回は「16時まで」の短縮営業日が3日ありますので、ご来店・お電話のさいはご注意くださいませ。皆様にはご不便をおかけしすみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。m(__)m

 

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【FC-76D + 76Dレデューサー】ナナロクをF5.5の明るい写真鏡にします

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M8・M20とその周辺 2018年5月15日 長野県南牧村にて撮影


◇概要
FC-76Dシリーズ(DC,DCU,DS)の鏡筒に「76Dレデューサー」を併用すると、焦点距離417mm / F5.5 / イメージサークルΦ36mmとなります。

 

フローライト2枚玉で月惑星のシャープな像はもちろん、76mmという絶妙な口径でコンパクトながらディープスカイ観望まで楽しめる万能機の「ナナロク」ですが、各種補正レンズの併用によって、天体写真用としてもかなりハイレベルにお使いいただけます。

 

「76Dレデューサー」併用時は収差補正や周辺光量の点では「FC/FSマルチフラットナー1.04×」に少し及びませんが、それでもF5.5という明るさは強い武器になります。
APS-Cセンサー使用時はフルサイズ換算約650mmとなり、メジャーな天体を画面にちょうどよく収めるのに適した焦点距離です。後述のようにAPS-Cの四隅まではほとんど周辺減光もありませんので、FC-76D + 76Dレデューサーは大変使いやすい組み合わせだと思います。

 

※スポットダイアグラムのデータもあわせてご覧ください。



◇実写画像とその印象

 

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FC-76DCU + 76Dレデューサー + Canon EOS6D(IR改造) ISO-1600 240s 撮って出し

 

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FC-76DCU + 76Dレデューサー フラット画像 (Canon EOS6D(IR改造)、35mmフルサイズ)

 

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FC-76DCU + 76Dレデューサー フラット画像 (スケール入り)

 

周辺減光は避けられませんが、「イメージサークルの境界で一気に落ちる」タイプですので、APS-Cの範囲までは光量がほとんど均一であることに注目してください。つまりAPS-Cまでのセンサーをもつカメラならば、フラット補正が容易、もしくは不要であるということですから、初めての方でも比較的気軽に画像処理に取り組んでいただけると思います。

 

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FC-76DCU + 76Dレデューサー 等倍切り出し画像 (撮って出し)

 

色ハロのない素直で緻密な星像が得られます。イメージサークルはΦ36mmですが、この場合は中央光量比を基準に定まったもので、実はフルサイズの最周辺まで星像はシャープです。星像自体は肥大しておらず、目立つ収差は「色ズレ」だけですので、これはPhotoshop系の「色収差の除去」コマンド等で容易に補正可能です。
本作例もフルサイズセンサーのカメラで撮っていますが、適切なフラット補正と色ずれ補正さえ行えば、フルサイズの全面で均一・色ハロがない・シャープな星像を得られます。

 

軽量コンパクトのエントリー機という位置づけながら、撮影もハイレベルに対応可能。それがFC-76Dシリーズの強みであると思います。