スターベース東京のブログ

スターベース東京のブログです。店頭の様子や機材情報を中心に書いていきます。不定期更新。

高速導入も超静音、集合住宅で安心して使える! iOptronの赤道儀のご紹介(1/2)

 

昨年末ころから弊店でもiOptron製の赤道儀のお問い合わせ・ご注文が増えています。iOptronの赤道儀は国産品よりもお求めやすい価格で、本体重量の割に大きな搭載可能重量が目を引きますが、実際に使ってみると他にもいろいろな気づきがありましたので、これから2つの記事でご紹介したいと思います。

 

【本記事の内容】製品バリエーションと各部機構のご紹介

【次記事の内容】天体写真撮影に使ったときのレビュー(予定)

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

まず最初にラインアップのご紹介です。現在弊店ネットショップでご紹介しているのは次の4機種です。

f:id:starbase:20220308202428p:plain



価格が「~」となっているのは三脚や極軸望遠鏡のバリエーションがあるためです。これらは追ってご説明いたします。

 

●製品名称の頭文字につきまして。「C」はセンターバランス、「G」はドイツ式を意味しています。センターバランス式では鏡筒とバランスウェイトが三脚中心を跨ぐように反対側に配置されるので、結果として機材一式の重心が三脚中心とほぼ一致します。重心が北側に寄ってしまうドイツ式よりも突発的な暴風などに対して安心感があります。

f:id:starbase:20220217181606p:plain

 

赤道儀の製品名にある数字は搭載可能重量(ポンド表記・1ポンド≒454g)です。

●極軸望遠鏡は、通常の「光学式」のものとiOptron独自の「iPolar」から選べます。

 

・光学式極軸望遠鏡はCEM26GEM28で選べます。スケールパターンは歳差補正用の離角が印された多重円の方式です。赤道儀北極星が見える位置に設置できる場合、この光学式極軸望遠鏡だけでも、観望やオートガイドを併用した長時間露出による撮影に十分な設置精度を得られます。なお光学式極軸望遠鏡には照明装置がありません。筒先側からヘッドライトやスマートフォンで適宜照らしてご利用いただくことになります。

f:id:starbase:20220218184355j:plain

f:id:starbase:20220218184403j:plain

 

・一方のiPolarは光学式極軸望遠鏡の代わりに小型レンズとセンサーが赤道儀に内蔵されたタイプで、WindowsのPCに専用のソフトをインストールして使う電子極軸望遠鏡です。CEM26とGEM28では光学式 +12,100円(税込)で選択できます。より大型の赤道儀となるCEM40とGEM45では光学式極軸望遠鏡が無く、iPolarが標準付属です。PCの画面を見ながら操作するので、楽な姿勢で、大画面表示で見やすく極軸合わせができるメリットがあります。北極星が見えなくても周辺の星が4個以上画面に写ればOKです。ただし北極星周辺の星がまったく見えない環境(南向きのベランダなど)では使えませんのでご注意ください。

f:id:starbase:20220226153713j:plain

iPolarの例。機種によりレイアウトは異なります。

f:id:starbase:20220308205455p:plain

iPolar操作画面の例。(iOptronのwebサイトより転載)



 

●極軸望遠鏡の仕様に関わらず、共通して付属するハンドコントローラー(Go2Nova)の機能で、2つの明るい星を交互に導入し、赤道儀の方位・高度ネジで調整を繰り返すことで極軸望遠鏡の設置誤差を小さくしていく機能もございます。一般的な「アライメント」機能(赤道儀の位置ずれを把握させ、その結果に応じて2軸モーターを自動でうまく動かして追尾精度を高める方法)に比べると赤道儀の設置精度そのものを高めるので、天体写真撮影では経時変化に伴う写野回転を本質的に軽減できます。

※気軽な眼視だけであれば、極軸望遠鏡やiPolarは全く使わずにざっくり極軸を北極星の方向に合わせ、あとは通常の(いくつかの明るい星に向けて位置ずれを記憶させるだけの)簡易なアライメントで十分快適にお使いいただけると思います。

 

このように、極軸望遠鏡のバリエーションについては

---

1.気軽な眼視や電視観望なら、極軸望遠鏡は使わずにざっくり設置+ハンドコントローラーのアライメントでもOK

2.電視観望や撮影を「長時間」行う場合は極軸をしっかり合わせて設置すべき。北極星が見えて光学式極軸望遠鏡を覗くのが苦でなければ光学式でOK、そうでない場合はiPolarがオススメ。ただし北天が全然見えない場合はiPolarが使用できないので注意。

3.どちらの仕様でも自動導入&再調整を繰り返すことで極軸設置精度を高めることはできる。

---

とご認識ください。別売のソフト等でも極軸設置精度を高める機能を持つものが増えてきていますので、オートガイダーやPCを併用するのであれば、そちらに頼っても良いかもしれません。

 

●機種名に「EC」と付くものはエンコーダー内蔵仕様です。通常モデルは両軸の向きをゼロポジション(鏡筒が上 / ウェイトが下 / 筒先が北)にして電源をONにしたら"クランプ"を緩めず全て電動駆動する想定ですが、エンコーダー内蔵仕様では"クランプフリー"にして手で鏡筒を動かしてもその移動量がコントローラーに反映され、その先から自動導入を続けることができます。

※(2022.11.03訂正)「EC」モデルは赤経軸のみにエンコーダーが入っています。また、「EC」モデルは"クランプフリー"で動かした場合に位置情報は追従いたしません。使用中は常にモーターだけで動かすようにしてください。訂正してお詫び申し上げます。

 

 

しかも追尾状態を内蔵エンコーダーで常時監視・補正しますので、赤道儀としての追尾精度が飛躍的に向上します。赤道儀の設置が完璧で、風や自重によるしなりが無ければ、オートガイド無しでもかなりの精度で天体写真撮影も可能かもしれません。このような使い方をしたい!という場合には、お値段は上がりますが快適便利なのでオススメです。

 

●CEM40とGEM45では末尾に「G」と付くモデルがあります。これは鏡筒を載せるアリミゾ部分の横に「iGuider」(焦点距離120mmのガイド鏡とガイドカメラを合わせたようなもの)が取り付けられているバージョンです。iGuiderにはZWOやQHYのCMOSカメラのような「ガイドポート」がありません。外部機器との接続はPC等と結ぶUSBケーブル1本だけで、これで給電とデータのやりとりを行います。ASCOM対応しているガイドソフト(PHD2 Guidingなど)で操作します。ガイド方式はオートガイドケーブルを必要としないパルスガイドです。

iGuiderはオートガイド有りの撮影システムをシンプルに構成できるのが魅力です。一方で、メイン鏡筒の焦点距離が長い場合にはもう少し焦点距離の長いガイド鏡を使ったり、メイン鏡筒が重く大きいために姿勢変化にともなう「しなり」が想定される場合には市販のガイド鏡を鏡筒のファインダー受け部分へ取り付けたりといったように、市販のガイド鏡(とガイドカメラ)を使った方がガイド結果が良くなるケースもあります。

なお「G」と付かないCEM26/GEM28/CEM40/GEM45等にも別売りの外付けiGuiderを取り付けできます。別売り品ではメイン鏡筒用アリミゾの側面に開いているM3ネジ穴×2を利用してそこに小型アリミゾを取り付け、iGuider本体はアリガタアリミゾ式で着脱できる仕組みです。

このほかにも2つのM3ネジ穴の中央にはM6やM8のネジ穴(機種による)が開いていますから、市販のガイド鏡を取り付けたりもできそうです。

 

※オートガイドをon camera方式(ZWOやQHYなどのガイドカメラとガイドケーブルを使う方式)で行う場合に使うGUIDEポートも機種により異なる位置に配置しています。ガイドケーブルはZWOやQHYCCDのカメラに付属するST-4互換のものがそのまま使えます。

f:id:starbase:20220308204245p:plain

(iOptronのwebサイトより転載)

 

●自動導入はハンドコントローラー「Go2Nova」だけでなく、PCやZWO ASIAIR等でも行えます。その場合はハンドコントローラーや赤道儀本体(場所は機種による)のUSBポートとこれらの機器をUSBケーブルで接続します。

f:id:starbase:20220308210348j:plain

GEM28の例

 

●CEM26とGEM28では標準仕様でWi-Fi接続にも対応しています。これを利用してスマートフォンタブレットからSkySafari等を用いて自動導入もできます。SkySafari6の場合は接続先の赤道儀として「CEM-120」を選択してください。

f:id:starbase:20220308210116p:plain

SkySafari6の接続設定

 

 

●三脚は1.5"仕様(1段目パイプ径約38mm・約5kg)と1.75"仕様(同約44.5mm・約8kg)の2種類よりお選びいただけます。気軽に持ち出して使いたい場合は軽量な1.5"仕様、天体写真撮影では重心が下がり風に吹かれてもより安定する1.75"仕様がお勧めです。1.75"仕様は1.5"仕様よりも +19,800円(CEM26とGEM28)/ +13,200円(CEM40)となります。※搭載可能重量の大きなGEM45は1.75"仕様三脚のみとなります。

f:id:starbase:20220226170541j:plain

左がGEM28+1.5"三脚、右がGEM45+1.75"三脚。どちらも脚を最大まで伸ばした状態です。

 

●今回ご紹介している4機種はすべて専用のアルミケースが標準で付属します。メイン部分に赤道儀本体、上フタの内部にバランス延長シャフトや三脚開き止め金具を収納するような仕組みです(機種により若干異なります)。ケース代も込みと思えばかなりコストパフォーマンスが高いと思います。国内用ACアダプターも標準付属です。

f:id:starbase:20220226153401j:plain



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

赤道儀の組立てです。三脚と赤道儀の締結には、付属のボルトとヘクスキーを使用します。これらは保管時に赤道儀本体へ格納できるので、現地で失くしてしまう心配が少なく安心です。

f:id:starbase:20220226170413j:plain

 

 

◆両軸の粗動-微動の切り替えについて、iOptronの赤道儀は独特のロック機構を有しています。タカハシ赤道儀など多くの製品が採用しているような、ウォームホイル外周に摩擦力を加えるクランプ方式ではなく、「ウォームホイル・ウォームネジを直接当てたり離したりする」方法です。ギアの歯どうしが噛み合う場所でしか固定できないデメリットはありますが、基本的にはギアを当てたままハンドコントローラーで操作する製品ですのであまり気になりません。むしろ、粗動時の回転軸の負荷が極めて軽くなりますので、厳密にバランスを合わせられるというメリットを享受できます。

f:id:starbase:20220226172430j:plain

GEM28の例。左=赤経軸、右=赤緯軸の粗動ロック機構。

 

◆ハンドコントローラー(十字キー)での駆動操作はとっても快適です。スピードを変えたいときは1~9の数字キーを押すだけでよく、順番に恒星時の1, 2, 8, 16, 64, 128, 256, 512, MAX倍になります。ハンドコントローラー単体で自動導入を行うこともできます。

f:id:starbase:20220226174249j:plain

 

※安全機構として、筒先が子午線を越えたあと(最大設定で)1時間経過したところで、自動的に反転操作を行う、または追尾を停止します。連続追尾をしすぎて鏡筒が三脚にぶつかってしまう事故のリスクは下がりますが、シンプルな赤道儀のようにずーっと回転させ続けるようなことはできません。

 

 

◆最後になってしまいましたが、ここでタイトルの回収です。iOptronの赤道儀は高速駆動時の駆動音がとっても静かです。一般的な赤道儀では高速駆動の際にそれなりに大きな動作音が発生します。キュイーン系、ギュイーン系、ニョーン系、ガリョリョリョ系など赤道儀によって個性がありますが、多くは寝ようとしている人にとって耳障りなノイズになります。しかしiOptronの赤道儀では「シュー」という小さい音で、不快になりにくいと感じます。都市部のアパートなどで使っても、近くの道路を走る車の音などと混じり合いやすい音色なので、夜間に安心して使えます。これは大きな魅力として、皆様にきちんとお伝えしたいと思います。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

ここまでiOptronの赤道儀の基本的なことがらをご紹介いたしました。次の記事はGEM28を天体写真撮影に使ってみたレビュー(の予定)です!

 

 

【重要】店頭販売休止のお知らせ(1月23日~)

f:id:starbase:20220121191730p:plain

 

いつも弊店をご利用くださいまして誠にありがとうございます。新型コロナウィルスの感染拡大の状況を鑑み、1月23日以降は当面の間、店頭販売を休止させていただきます。

※明日(22日土曜日)は11-18時で開店いたします。

 

急な決定でご不便をお掛けしてしまい申し訳ございませんが、何卒ご理解賜ります様、よろしくお願いいたします。

【焦点距離200mmクラス】天体写真用の小型鏡筒で撮り比べてみました!

この記事ではBORG55FL(レデューサー使用)Askar New ACL200Askar FMA230(レデューサー使用)を用いた天体写真撮影の結果をご紹介します。

焦点距離200mm前後の撮影を目的とした鏡筒は激戦区で、どれを選べばよいのか迷われている方もいらっしゃると思います。今回は一晩に上記3機種で撮り比べることができましたので、私(スタッフH)の感じたことなども含めてご紹介したいと思います。各鏡筒の諸元は以下の通りです。重量はCanon EOS Kiss X6i(約575g)を接続した際の総重量です。

f:id:starbase:20211023132153p:plain

各鏡筒の諸元

今回はオートガイドは行わず、露出はすべてISO3200、90sで統一しました。

焦点距離400mmくらい以上の鏡筒ではオートガイドを使わないと、一コマ1分以上の露出で星をきちんと円形に写しとめるのはなかなか難しいのですが、一方で今回のように焦点距離200mm程度ならばオートガイドは必ずしも必須ではなく、システムを簡易にすることも可能です。


---
※ピント位置はライブビューモニターで色ハロが出来るだけ目立たなくなる場所に合わせています。
※画像処理はダーク・フラット補正と多少の調整を加えたのみです。星を小さくする、色収差を補正する等の処理は行っていません。
---

 

まずはBORG55FLです。

f:id:starbase:20220115170905j:plain

BORG55FL(レデューサー使用)+ EOS kiss x6i(IR改造) ISO3200 90s 60枚

f:id:starbase:20211023132352j:plain

Borg55FLの接続例


BORG55FLはF3.6と競合機種の中で最も明るい鏡筒で、その速写性は圧倒的です。F4の鏡筒と比べても約1/3段明るい(約80%の露出時間で同じように撮れる)ため淡い対象を狙う際に真価を発揮してくれるでしょう。
ピント合わせのヘリコイドは適度な硬さがあり微妙なピント合わせが可能ですが、Fの明るさに伴うピントの薄さからピント合わせには少し苦労しました。

この鏡筒についてもう一点特筆すべき点は軽さです。カメラ、鏡筒、アリガタまとめて1500g弱しかありません。ポータブル赤道儀での運用を考えている方にとっては大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。
圧倒的軽さと速射性が唯一無二の製品だと感じました。

 

 

次にNew ACL200です。

f:id:starbase:20220115170949j:plain

New ACL200(絞り解放 F4) + EOS kiss x6i(IR改造) ISO3200 90s 60枚

f:id:starbase:20211023132556j:plain

New ACL200 接続例

New ACL200はアストロカメラレンズと称される製品です。F4と十分に明るく、粗動+微動のピント合わせ、絞りリング、カメラ回転機構といったカメラレンズのような取り回しの良さが特徴です。

f:id:starbase:20211023133748j:plain

微動ピントリング、粗動ピントリングの、絞りリング、回転可能な三脚座の様子
それぞれに固定ネジがついています


天体を撮影する場合、粗動ピントリングは予め∞指標に合わせてロックしておき、微動ピントリングで細かくピントを合わせることになります。微動ピントリングは軽快に回せるので初めは「こんなに軽くて大丈夫…?」と不安でしたが、実際に使ってみるとベストピント位置がとっても分かりやすく、簡単にピント合わせができたのが印象的です。ただし、ピントロックをする際にピントリングを回転させる方向に力を掛けないよう注意する必要があります。


三脚座の部分で鏡筒ごと回転させ構図の調整を行うことができるのは便利でした。また本鏡筒ではカメラレンズのように絞りが搭載されているのですが、少なくともAPS-Cまでの範囲であれば、絞り解放(F4)の状態で周辺まで星がきれいに写りました。絞り解放状態では絞り環が隠れて完全な円形となるので、カメラレンズにありがちな、明るい星に放射状の「ヒゲ」が生えて写る現象が大幅に軽減できます。

f:id:starbase:20211023133240p:plain

絞り環の様子
絞り解放F4(左) と 一段絞った状態F5.6(右)

鏡筒外径は最大部で約95mmと、FC-76DCUの対物フード部分と同じくらいの太さがありますので、レンズヒーターを使う時はやや大きめのものをご用意ください。

この鏡筒はカメラ込みで2500g超と3機種の中で最も重量があります。重さを気にしないのであれば、普段使い(マニュアルフォーカスですが)も見込めて使い勝手と明るさのバランスがとれた製品だと感じました。アリガタ、ファインダー台座が付属しているのも魅力的ですね。

 

最後にFMA230です。

f:id:starbase:20220115171009j:plain

FMA230(レデューサー使用)+ EOS kiss x6i(IR改造) ISO3200 90s 60枚

f:id:starbase:20211023133516j:plain

FMA230 接続例


FMA230はレデューサー使用でF4.6と、今回使った3機種の中では暗いですが、それが有利に働いているのかAPS-Cの範囲内では本鏡筒が最も結像性能が高いように感じました。(今回は色ハローが無くなる位置にピントを合わせましたが、この状態で周辺までとても良い像になりました)ヘリコイドはBORGと同様に適度な硬さがありピッチも細かく、微妙なピント合わせが可能でした。


軽さと星像のバランスがとれた製品だと感じました。こちらの製品もアリガタ、ファインダー台座が付属しているのは魅力的ですね。

 

-------------------

 

圧倒的な軽さに明るさを兼ね備えたBORG55FL、カメラレンズの使い勝手の良さを持ち普段使いも見込めるNew ACL200、軽さと星像のバランスがとれたFMA230、それぞれ特徴を持った鏡筒だと思いました。星像の写り方には少しずつ差はあるのですが、今回の掲載サイズで鑑賞する分にはどれも全く欠点が見えてこないと思います。それほどに、どれもハイレベルな天体写真に十分対応できる製品です!

※周辺光量落ちの補正だけでなく、カメラのセンサーに固有の様々なムラやノイズを取り除くため、フラット補正ができるのであればした方が良いと思います。今回は筒先を白色モニターに押し当てる簡易的な方法(こちらでご紹介しているような方法です)で取得しましたが、3機種とも容易にフラットが合いました。

 

※すべてEM-10赤道儀を使った撮影です。このEM-10赤道儀は旧型のスケールパターンを内蔵しているので現在の北極星の導入位置が書いてありませんが、極軸望遠鏡を覗き、それを「予想」して目測で合わせました。極軸設置誤差のため、最初と最後のコマでは星の位置が少しズレてしまいましたが、それでも各コマ90秒の露出ではそれぞれの元画像は点像となっていたので、このようにコンポジットをすれば十分なクオリティの天体写真となります。そういった手軽さも含めて魅力的な製品群だと思います。

 

短焦点の屈折望遠鏡としてFS-60CBについても記事にしています。あわせてご覧ください!

 

 

年末年始 営業時間のお知らせ

f:id:starbase:20211228202715p:plain

本年もたいへん多くのお客様に弊店をご利用いただき、誠にありがたく存じます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

年末年始の営業につきましては、入居しているビルの工事等もあり、長めのお休みをいただきます。

-----

・1月9日(日)まではお休み

・1月10日(月)と11日(火)は店頭営業無し

・1月13日(木)からは通常通り(火・金・土で店頭営業)

-----

休業期間にいただきましたご注文やお問い合わせは10日より順次ご対応させていただきます(10日と11日ではすべて終わらないかもしれません)。ご不便をおかけしてしまいすみませんが、何卒ご理解をいただけますと幸いです。

 

それでは皆様、どうぞよいお年をお迎えくださいませ。

【TOA-130N + TOA-645フラットナー】 結像性能最強!TOAシリーズ全機種に使える新発売のフラットナーです

f:id:starbase:20211115211748j:plain

TOA-130NS + TOA-645フラットナー + ZWO ASI2400MC Pro + ZWO IR/UVカットフィルター / -5℃, Gain=140, 3分×109枚コンポジット

 

◇概要

TOAシリーズ鏡筒用にはこれまで「35フラットナー」(イメージサークルΦ40mm)と「67フラットナー」(同88mm)がありましたが、67フラットナーは今年の3月に生産終了となっておりました。それに代わる次世代の高性能フラットナーが今回ご紹介する「TOA-645フラットナー」です。

タカハシwebサイトでは【妥協が一切無い対物レンズの性能を100%生かすベストパートナー】と謳っていますが、それにふさわしい最高性能の製品です。計算上のスポット径は中心1μm、APS-Cの周辺で2μm、フルサイズ周辺でも3μmで、光の回折を考慮すれば「これ以上星像を小さくできない限界」に達していると言えます。またイメージサークルの最周辺でも同5μmと、気流の影響を考慮すれば実用上完璧な収差補正がなされています。

 

f:id:starbase:20211115213135j:plain

旧「67フラットナー」との比較。67フラットナーもかなり良い性能なのですが…645フラットナーはその1段上を行く超高性能です。

 

TOA-645フラットナーを使うと焦点距離が1%程度短縮されます。

---

TOA-130シリーズ 1000mm→990mm(F7.6)

TOA-150シリーズ 1100mm→1085mm(F7.2)

---

 

TOA-130NSなどにも使える!】

旧67フラットナーは大型接眼体を備えたTOA-130NFBやTOA-150B等にしか取り付けられませんでしたが、今回のTOA-645フラットナーはすべてのTOAシリーズ鏡筒に対応しています。合焦位置ではかなりドロチューブを繰り出す状態になり、大型接眼体のTOA-130NFBやTOA-150BではM92の延長筒「67フラットナー延長筒」を2つ重ねて追加する必要があります。

f:id:starbase:20211115220047j:plain

 

 

それではいつものように画像をご紹介してまいります。

 

f:id:starbase:20211115220149j:plain

TOA-130NS + TOA-645フラットナー + ZWO ASI2400MC Pro + ZWO IR/UVカットフィルター / -5℃, Gain=140, 3分 ステライメージでFITS画像を現像のみ


今回は冷却CMOSカメラの撮影なので、フラット画像についてはいつもとかなり違う条件となっています。Canon EOSRaで撮影したフラット画像を以下に掲載します。

f:id:starbase:20211115221539j:plain

TOA-130NS + TOA-645フラットナー + Canon EOSRa フラット画像

 

f:id:starbase:20220311180708j:plain

TOA-130NS + TOA-645フラットナー + ZWO ASI2400MC Pro + ZWO IR/UVカットフィルター等倍画像



容量の関係で生データをご覧いただけないのが残念ですが、撮影後に元画像をじっくり眺めて驚きました。画像のどこを見ても星像が一様で、光量分布も偏りがないので、アップで見ていると一体どちらが画像の中心なのか全く見当もつかないのです。

f:id:starbase:20211115223151j:plain

【クイズ】これは画像のどのあたりでしょう?正解は本記事の最後で。

TOA-645フラットナーはレデューサーではないので併用時はF7台とそこまで明るくはありません。しかし現代のデジタルカメラと組み合わせれば無理なくさまざまな対象を狙えるスペックです。それに加えて、この画像全体での(いろいろな意味での)フラットさは、単独構図での撮影はもちろん、モザイク合成を行うような場合にも◎です。一切つなぎ目の分からないモザイク合成…も不可能ではありません。これまでのすべてのTOAシリーズ鏡筒に適合するのも嬉しいですね。最高の眼視用鏡筒であるTOAシリーズを、このTOA-645フラットナーで最高の撮影用鏡筒に変身させましょう!

 

 

35フラットナーとの使い分けについて】

TOAシリーズに対応する現行のフラットナーはもう一つ「TOA-35フラットナー」があります。こちらと今回のTOA-645フラットナーは上下関係というよりも相補的な関係にあります。

---

◆35フラットナー(イメージサークルΦ40mm)の魅力

・フラットナーから焦点面までの設計距離が長いので、撮影だけでなく天頂ミラー等を併用した眼視にも使える

・2インチ差し込みで組み換えが簡単

・エクステンダーED1.5×と組み合わせて使うこともできる

・TSAシリーズにも使える

---

◆645フラットナー(イメージサークルΦ60mm)の魅力

・圧倒的な結像性能と周辺光量の豊富さ

 

「さまざまに使いやすい35フラットナー」と「写真性能最強の645フラットナー」とも言えるでしょうか。用途に応じて使い分けていただけるラインアップかと思います。

 

TOA-645フラットナー併用時に、フジGFXを取り付けられるようにするオリジナルリングもご用意しています!

 

f:id:starbase:20211116114429j:plain

タカハシ工場勤務の先輩Tさんの作品です! TOA-130NS + TOA-645フラットナー + Canon EOSRa (ISO-3200, 600s×20枚)

f:id:starbase:20211116115151j:plain

上の画像の1枚撮って出しです。



 

※今回は本ブログの作例としては初めて冷却CMOSカメラを使った画像でご紹介いたしました。今回の作例写真がいつもよりクオリティが高く感じるのはそのおかげもあると思います。冷却CMOSカメラのご紹介はまた別の記事で詳しく書く予定です。なおスターベース東京で冷却CMOSカメラをご購入いただいた方には、撮影を手厚くサポートするスタッフ特製のマニュアルが付属します!

f:id:starbase:20211115224803j:plain

 

 

(クイズの答え)

f:id:starbase:20211115224344j:plain

白枠の箇所でした!

 

【BORG107FL + EDレデューサー0.7×DGQG】とにかく像が鋭い!高性能な大型レデューサーです

f:id:starbase:20211023110953j:plain

はくちょう座サドル付近 BORG107FL + EDレデューサー0.7×DGQG[7770]

 

先日発売となった中判センサー対応の「EDレデューサー0.7×DGQG」【7770】をメーカー様から借用し、試写する機会を得ましたので、その結果をご報告したいと思います。

このレデューサーはBORGの107FLと90FLに対応し、それぞれ焦点距離を0.7倍に短縮して420mmF3.9 / 350mmF3.9という屈折望遠鏡としてはかなりの明るさを実現します。中判センサー対応なので35mmフルサイズの周辺でも光量が豊富(順に約76% / 82%)なのも魅力です。今回は弊店展示機の107FLに対し、周辺パーツはこちらの説明書の通りに取り付けて撮影に持ち出してみました。

 

f:id:starbase:20211025220042j:plain

それなりにフロントヘビーになります。が、この一式で約4.1kg。軽い!

f:id:starbase:20211025220106j:plain

純正鏡筒バンドの上下をMORE BLUE製品で保持しています。アリガタ=「AU002」、トッププレート=「AU012」+スペーサー。

f:id:starbase:20211025220134j:plain

トッププレート「MORE BLUE AU012」には「Northern Cross タカハシ鏡筒用ファインダー台座」を取り付け…

f:id:starbase:20211025220327j:plain

「QHY miniGuideScope」と「QHY 5L-II M」を載せています

今回はビクセン互換のアリガタ・アリミゾで赤道儀に搭載するため、上の組み合わせとしました。オートガイダーは2つの鏡筒バンドの上方をアクセサリープレートで結び、その上に載せる格好にしました。なおピント合わせはヘリコイド式のため、ピントを合わせる際には2本の鏡筒バンドのどちらかをわずかに緩め、筒が内側を移動できるようにします。

■ピント合わせ

ピント合わせはヘリコイド式なので、ZWO EAFのような電動フォーカサーを取り付けしにくいですが、F3.9という明るさにも関わらず手動で快適に・確実にピント合わせが可能でした。ヘリコイドが大変滑らかに動きわずかな手加減にもきちんと追従してくれること、また結像がシャープなのでベストピント位置が明確に分かること、がこれを可能にしているのだと思います。私はヘリコイド式のフォーカサーを厳密な天体撮影に使用するのは今回が初めてでしたが、予想以上に使いやすく、びっくりしました!

 

 

f:id:starbase:20211023111300j:plain

BORG107FL + EDレデューサー0.7×DGQG[7770] + Canon EOS6D(IR改造) ISO-2500 240s 撮って出し

 

f:id:starbase:20211025222702j:plain

等倍切り出しです

 

風などの影響で追尾が少し流れてしまっていますが、それを差し引いてご鑑賞ください。35mmフルサイズの最周辺まで星像が小さく結像していて、しかも「鋭い」(星像の芯が明瞭であり、「ぼてっと」していない)です!焦点距離が短いので気流の影響を受けにくいのもあると思いますが、結像はかなりハイレベルです。中判センサーのカメラを使えなかったことが悔やまれます。

 

タカハシなどの製品とは異なりスポットダイアグラムが公開されていませんが、今回の実写では、非常に高い結像性能を有していることが分かりました。

 

f:id:starbase:20211023111420j:plain

BORG107FL + EDレデューサー0.7×DGQG[7770] + Canon EOS6D(IR改造) フラット画像

フラット画像です。0.7×の強い効果のレデューサーですが、さすがは中判センサー対応ということで、35mmフルサイズの範囲内では減光はおだやかです。このフラット画像は「筒先を白色モニターに当てる」といういつもの方法で取得しましたが、これできれいにフラット補正ができました。

 

---

 

EDレデューサー0.7×DGQG」は補正レンズとしては高価な部類に入りますが、

★F3.9で鋭い像が得られること

★中判センサーまで対応する豊富な光量

★107FLと組み合わせても4kg程度という軽さ(今回の上下プレート込みで実測4.1kgでした)

を実現した大変意欲的な製品です!すでに107FLや90FLをお持ちの方も、これから検討中という方も、天体写真用としてきっと素晴らしい結果を得られることと思います。ご予算が見合えばぜひお勧めしたい製品だと思いました!

 

 

 

【ビクセンAX103Sで天体撮影】 色収差の無い、多目的・高性能な屈折望遠鏡です!

 

f:id:starbase:20211025211440j:plain

アイピースは付属しません。

 

今回の記事はビクセンAX103Sを使った天体写真撮影のご紹介です。この鏡筒は対物レンズ3枚玉+フィールドコレクター内蔵という設計で「フォトビジュアルタイプ・フラッグシップ」を謳う製品です。

 

f:id:starbase:20211025211211j:plain

標準状態のリング構成です。

本編に入る前に、まずは少し眼視のご紹介をさせてください。AX103Sは他の多くのビクセン鏡筒と同じく、ドロチューブ後端がM60ネジとなっていて、付属のアダプターを介して2インチ(50.8mm)接続が可能です。眼視や、眼視と小型カメラの切り替えに便利なフリップミラーが標準付属しています。ドロチューブ内にフィールドコレクター(補正レンズ)が入っていますので、像質の観点からは接眼部のリング構成はビクセンの公開しているシステムチャート通りとするのが無難でしょう。

 

【眼視】

AX103S鏡筒は中心像の色収差補正が大変優れていて、300倍前後で月などを眺めても青ハローを感じず、自然な色合いでシャープに高倍率の観察ができます。また周辺まで補正がよく施されていますから、低倍率にして夜空を眺める場合も周辺像の乱れが少なく快適です。古典的なアクロマート鏡筒や口径比の小さい短焦点アポクロマート鏡筒とは一線を画す、落ち着いた、よく収差の補正された見え味です。このような眼視性能の高さをまずは強調しておきたいと思います。それでは天体写真撮影の結果のご紹介です。

 

【直焦点撮影】

f:id:starbase:20211025211023j:plain

リングの取り付けです。

この状態では焦点距離825mm(F8)です。鏡筒にフィールドコレクターが内蔵されていますので、補正レンズは追加せず(ただしVC用延長チューブが別途必要です)このままの状態で天体写真撮影に使えます。眼視と同様にやはり色収差は感じず、星ぼしの色合いを自然に写しとめられます。35mmフルサイズでも周辺減光は軽微でフラット補正は行いやすいと感じました。

 

f:id:starbase:20211023132914j:plain

AX103S(直焦点) + Canon EOS6D(IR改造) 1枚撮って出し

中心から周辺まで星像の均一性に優れています。周辺光量にも余裕があり、画角周辺に明るい星があっても口径食による光条は発生しにくいようです。均一性の高さが印象的です。

 

f:id:starbase:20211023133446p:plain

各600ピクセル四方の切り出し

中央と右下から各600ピクセル四方で切り出したものです。右下の画像は星像の肥大などもほぼ無く、画像中のどのあたりから切り出したのか分かりませんね。公開されているスポットダイヤグラムの通り、素晴らしい結像です。

 

f:id:starbase:20211023110537j:plain

AX103S(直焦点) + Canon EOS6D(IR改造) フラット画像

 

F8というと近年の写真用鏡筒のトレンドであるF4~F6程度よりも「暗い」状態ではありますが、最近の高感度なカメラと組み合わせれば、極端に淡い対象でなければ無理なく写しとめられると思います。補正レンズ無しでこれだけ「フラット」(結像と周辺光量の両方の意味で)な画像が得られるので、眼視と撮影を頻繁に切り替える場合でも使いやすいのが魅力ですね。

 

この日は急激に気温の降下する夜で、レンズヒーターも使用しておらず、対物レンズが結露してしまいました。数枚撮って、結露がひどくなったらクリーニングクロスで拭いて…を繰り返しながらなんとか撮り続け、一応、画像処理を行いました。↓↓↓

f:id:starbase:20211023110100j:plain

アンドロメダ銀河 AX103(直焦点) + Canon EOS6D(IR改造)

 

★本記事はまだ続きます!★

 

 

続きまして

レデューサー併用撮影】です。

f:id:starbase:20211025211123j:plain

リングの取り付けです。

AX103SレデューサーHDと組み合わせると焦点距離が825mm→635mm(F6.2)となり、この状態でも35mmフルサイズで写真撮影が可能です。

f:id:starbase:20211022170139j:plain

M45 AX103S + レデューサーHD + Canon EOS6D(IR改造)

この状態でも色ハローがほとんど発生しないので、この作例のように明るい星から暗い星までそれぞれの色合いを表現しつつ「輝き感」を表現したい場合にはとても適しています。周辺での星像の崩れは軽微なので安心です。

 

f:id:starbase:20211022170709j:plain

AX103S + レデューサーHD + Canon EOS6D(IR改造) 撮って出し

 

f:id:starbase:20211023143215j:plain

上の画像の等倍切り出しです(各600ピクセル四方)

 

f:id:starbase:20211022170833j:plain

AX103S + レデューサーHD + Canon EOS6D(IR改造) フラット画像

 

AX103Sは、一見するとF8というスペックのために眼視性能ばかりが注目されがちですが、実は2通りの焦点距離でかなりのハイレベルな天体写真のできる鏡筒でした!