εエクステンダーは2021年4月に発売となったεシリーズ初のエクステンダーです。鏡筒にもともと組み込まれている補正レンズを外し、かわりにこちらを取り付けることで、結像性能を損なうことなく焦点距離を1.5倍に伸長します。
高性能ですが高価なエクステンダーです。その価格に見合う価値があるのか?見定めてからご購入の判断をされる方も多いと思います。今回の記事では、
●εエクステンダーを使うと主焦点の状態に比べて何が良くなるのか?
というテストの結果をご紹介します。
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物理的に広い画角を得られるようになりF値も明るくできるレデューサーとは異なり、エクステンダーは拡大した分だけF値が暗くなりますから、もしもエクステンダーを使ったときに「ただ星像が拡大されるだけ」であれば、主焦点などで撮影しておいて、後から希望の部分だけをトリミングするような撮影の仕方で十分ということになってしまいます。それではエクステンダーを使うメリットがあるとするならば何か?というと、周辺像の改善などを抜きにすれば「解像力」の向上ということに尽きると思います。
星像がわずかな個数のピクセルに収まってしまうようないわゆるアンダーサンプリングの状態でセンサーへ光が届いてしまうと、星からの光をきちんと円形の像で捉えることができなかったり、RGBベイヤーセンサーでは星のまわりに偽色が付いたり星像が肥大したりすることがあります。これらを根本的に解決する手段は(おそらく)
・よりピクセルピッチの細かいカメラに変えたりカラー→モノクロカメラとする
・結像性能を損なわないエクステンダーを使う
のどちらかしかありません。εエクステンダーは後者のための強力なアイテムです。
それでは実写画像をご紹介します。今回は作例写真を仕上げるための露出時間を確保できなかったので
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撮影対象=M13(ヘルクレス座)
鏡筒=ε-130D(430mmF3.3) / ε-130D+εエクステンダー130D (650mmF5.0)
カメラ=Canon EOS6D(IR改造)
ISO-2000、各コマ20秒露出(M13の中心部が飽和しないように。どちらも統一)
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としました。
■全体の構図
これだけではほとんど差が分かりませんが…
①420px四方で切り出し
どちらも等倍でしっかり解像しています。同じ条件で撮影していますのでエクステンダー焦点のほうが撮影結果が暗くなります。
②M13をトリミング、同じ見かけの大きさに調整
①の画像からそれぞれ同じ画角をトリミングし、主焦点の画像は3倍 / エクステンダー焦点の画像は2倍拡大して見かけの大きさを揃えた状態です。ドットの状態を分かりやすくするためにステライメージの「ニアレストネイバー」法で解像度変更をしています。
こうすると差が見えてきます。エクステンダーを使えば主焦点では写らなかった淡い星まで写る…といったことはありませんが、εシリーズ鏡筒のようにF値が明るくシャープでアンダーサンプリングになりがちな鏡筒においては、高性能なエクステンダーを使えば主焦点では限界であった近接した星たちの分離が可能になることが分かります。偽色の影響も相対的に減少しています。
③各々20枚コンポジット&調整
各々20枚の画像(総露出400秒)をコンポジットしてから②と同位置でトリミングしました。こちらはより実践的に、画像の拡大はステライメージを使って「バイキュービック」法で解像度変更を行いました。さらにエクステンダー焦点の画像にはトーンカーブ調整を行って主焦点の画像と似た明るさになるように調整しました。
いかがでしょうか。εエクステンダーを使うことで主焦点の限界を超えた「解像力」を得られるということをご覧いただけたと思います。
ε-130D、ε-180EDには発売中のεエクステンダーが対応します。ε-160ED用の「εエクステンダー160ED」は今後発売となる予定です。「D」の付かない旧機種のεシリーズ鏡筒には対応エクステンダーのご用意がありません。
εシリーズ鏡筒でのクローズアップ撮影には、「トリミング→拡大」ではなくεエクステンダー…おすすめです!!!
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【注意】
・今回は鏡筒の温度順応を終えた後に主焦点→エクステンダー焦点、と連続して撮影を行いました。M13は常に天頂付近にありました。このように、なるべく条件の差が出ないように心がけて比較を行いましたが、上空の気流の影響などで本記事の主張を後押しするような補正が掛かっている可能性もあります。
・エクステンダーを使うことによる「解像力」の向上は、一般にはシーイングが良くアンダーサンプリング気味のときほど影響が大きく現れます。冬場の撮影や、超高画素カメラを使った場合などは、主焦点との差が小さくなるかもしれません。
・「解像力」という言葉はきちんと定義せずに使っていますのでご了承ください。