スターベース東京のブログ

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【イラストあり】STARBASE80で土星・木星はこう見えた!

今年の夏はご自宅や近くの空地から惑星を見てみませんか?夏の大三角から視線を南へおろすと、やや低いところに輝く「土星」と、それを追いかけるように東(左)から昇ってくるひときわ明るい「木星」。この2つの惑星はビギナー向けの小型天体望遠鏡でもしっかりと見ることができます。

 

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当店オリジナル・口径80mm屈折望遠鏡セット「STARBASE80」です!

 

今回は当店オリジナルのSTARBASE80を使ってこれらの天体を見てみました。目で見た様子を記録するために筆者は人生初めての惑星イラストに挑戦しました…これから上達していく予定です。

 

■STARBASE80の使い方

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STARBASE80は、レンズ式のファインダースコープ(メイン望遠鏡の横に取り付ける照準合わせ用の小さな望遠鏡)が付属しません。鏡筒本体には円形にくりぬかれた小さな突起が2つ(=のぞき穴式ファインダー)あり、これを使って筒先を天体に向けます。接眼レンズは2つ付属し、差し替えることで低倍率(Or14mm:57倍)と高倍率(Or6mm:133倍)を切り替えられますが、まずは低倍率の状態にしておいて、のぞき穴式ファインダーの2つの穴が同心円になるように接眼側から覗き、その2つの穴の重なった先に目標の天体が見えるようにします。するとメインの望遠鏡の視野にも目標天体が見えていますから、あとはピントを合わせればOKです。

この状態(57倍)でも、土星は円形ではなく楕円状であること、木星にはガリレオ衛星が見えるので、一目でそれらの天体と分かります。しかし本当に楽しいのは接眼レンズを交換して高倍率(133倍)にしたときで、以下でご紹介するような見え方になります。

 

 

土星

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上側が北です。天頂ミラーを介しているので実物とは左右逆に見えています

土星は、接眼レンズの視野の中では環の長径が「ピンと前方に伸ばした手の薬指の太さ」くらいの大きさに見えます。パッと見ただけでは本体に環がついている=土星だ!とわかるのですが、それで満足して見るのをやめてしまうのは大変もったいないです。高倍率で惑星などを見るときは、じっくりと時間を掛けることで、最初は全く分からなかった詳細がはっきりと見えるようになってきます。少なくとも1分間くらいは注視してみてください。そのようにすると、この時は

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①環は本体と比べてはっきり白い色をしていること

②本体に対して環は下側(=南側)で手前、上側(=北側)で奥にあり、奥側では本体からの影が落ちているようにみえること

 ※より大口径の望遠鏡で見直したら、影のようなものはもっと小さく見えました。

カッシーニの間隙(環に目立つスキマがあること)

④本体には横(東西)方向にこげ茶色~黒色の縞があり、その上(北)は濃い茶色、下(南)は薄い茶色で緯度ごとに色合いが異なっていること

⑤下(南)側で、土星の輪から本体が少し飛び出していること

が見えてきました。

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このうち②は、観察をした8月2日には左右でほとんど等量に見えましたが、太陽と地球、土星の位置関係が変わると影の落ちる向きも変わるため、8月後半になると片一方だけに見えるようになるはずです。このように日ごとの変化を楽しむこともできます。

③のカッシーニの間隙は、これから数年かけて土星の傾きが小さくなっていきますので、なるべく早くに見たほうが分かりやすいです。4~5年後には環の真横から見る位置関係になるため環は細く線状に見え、ほとんど見えなくなる時期もあります。その後はまた開いていきます。

 

 

木星

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上側が北です。天頂ミラーを介しているので実物とは左右逆に見えています

木星の見かけの大きさは(今の時期は)土星の環まで含めた大きさとあまり変わらず、ピンと前方に伸ばした手の、薬指の太さくらいです。こちらもパッと見ただけでは「横(東西)方向に縞があるので木星だ!」とわかるのですが、せっかくなのでじっくり観察しましょう。縞、といってもどのような色合いか、まっすぐかぐにゃぐにゃしているか、縞の中に目立つ模様は無いか…そうしたことをじっくり観察するとたのしいですよ。この日は

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①上方(北側)はくすんだ肌色で、外側ほど暗くなっている

②その下の薄いこげ茶色の縞は、上下に小刻みにぐにゃぐにゃしながら左右に伸びている

③この縞は左右にスッと直線状に伸びる部分とぐにゃぐにゃした部分が隣接している

④縞の中に黒めの小さい楕円状の模様がある

⑤大赤斑

⑥下部(南側)はあまりグラデーションは無く、均一な印象

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のように見えました。木星は表面の模様が分かりやすいのと10時間ほどで自転していますので、一度しっかり観察して、もし表面に大赤斑や目立つ模様が見えたなら、1~2時間後にもう一度観察するとそれらが移動していることがしっかり分かります。とっても楽しそうではありませんか…?

 

 

■おわりに

長々と書き連ねてしまいましたが、これらはSTARBASE80で実際に見えた惑星の様子ということを強調したいと思います。税込5万円未満の天体望遠鏡でも、ただ天体を「眺める」のではなく、表面模様を「観察する」という気持ちを持って接眼レンズを覗くことで、宇宙の神秘的な姿を存分に楽しめます。ただし観察には多少の根気強さ・慣れが必要ですので、初めての方にはここまでは見えないかもしれません。何度も覗くうちに見かたのコツがわかってきて、どんどん詳細が観察できるようになります。また大気の状態や近くの熱源の影響も受けますので、見る場所や時間帯を少しずらすだけで見え方が大きく変わることもあります。上空大気は一般には冬よりも夏の方が良いですので、夏場に土星と惑星が見える今年はラッキーです。天体観察はおうちでひっそり楽しめる趣味ですから、ぜひ多くの方に楽しんでいただきたいと願っています。

 

 

■その他

STARBASE80で高倍率状態で惑星などを観察する時、対象の天体の周囲に赤紫色のにじみが出る位置がベストピントで、惑星の表面模様などが最もはっきり見えます。少しピントをずらすと赤紫色のにじみは消えますが、天体の詳細は見えにくくなります。つまりこの望遠鏡では常に「にじみ」が出た状態で観察していただくことになります。(それでも上のイラストのように見えますが!)

「にじみ」を無くそうとすると、屈折望遠鏡ではより高価なレンズ素材に頼ったり、反射望遠鏡を使ったりする必要があります。見え味は向上しても、価格が上がったり、望遠鏡一式が大きく重くなったりします。そのあたりを踏まえた天体望遠鏡の選び方については、またしっかりご紹介したいと思っています。