先日、税込5万円未満でお求めいただけるきちんとした天体望遠鏡セット STARBASE80 (税込49,500円)の実視レビュー記事をご紹介いたしましたが、実は同じ頃にスコープテックから販売されているもう少し小型の天体望遠鏡3つ
・ラプトル50 税込11,000円
・ラプトル60 税込19,800円
・アトラス60 税込29,800円
も使って土星や木星を観察していました。このくらいの口径の屈折望遠鏡は同じような設計や組立であれば「大口径ほどよく見える」のですが、必ずしもすべての方にとって大きな望遠鏡が良い選択になるとは限りません。大きく重い望遠鏡は保管・移動・使用のどれもが大変になりますから、実際にはユーザーそれぞれの環境に合わせ、長くきちんと使い続けられるようなものを選んでいただきたいと思います。
この記事では上の3製品についてスタッフが覗き比べをし、「実際にどのように見えるのか」をまとめました。ただし天体望遠鏡の見え味はさまざまな要因で大きく変わりますから、本記事をご覧いただいている方の環境では違った見え味になるかもしれません。あらかじめご了承ください。(※本記事の最下部にこのあたりの内容を再度まとめています)
【本編の前に…便利な画像を作ってみました】
下の記事中では「○○倍で見た様子」という形でご紹介していきますが、それが実際に視野の中でどのくらいの大きさに見えているのか、イメージしにくいと思います。こちらの画像をスマホに保存→プレビューし、大きさのイメージをつかむ助けとしてご活用ください。
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■ラプトル50 税込11,900円
口径50mmの天体望遠鏡セットです。三脚とアイピース(30倍/75倍)、天頂ミラーが付属し、全体重量約1.5kgです。三脚は固定式(望遠鏡との接続部分=高さ約90cm)で、伸ばしたりはできませんが、その分シンプルな造りで非常に軽く、持ち運びやすい製品です。こちらの記事でも紹介しているような覗き穴式ファインダーを使って天体に向けます。惑星を拡大して見るときは、最初に低倍率(30倍)の状態で対象を視野に入れてからアイピースを交換して高倍率(75倍)で観察します。
土星は本体と環が明らかに分離して見えます。注意して見ると、土星本体は下半分よりも上半分が濃い色をしていることが分かります。また環は下側で土星の手前を通り、上側では土星の裏側にあることが、なんとなく分かります。環の下側からは土星の本体が少しはみ出ているのも分かります。
木星は最も目立つ上側の太い縞と、下側の2本の縞のような暗い部分が確認できます。それぞれの縞の間にある明るい帯状の部分は、場所ごとに微妙に色合いや明るさが違うことも分かります。
入門用の天体望遠鏡ではありますが、双眼鏡とは倍率がまるで違うため、惑星の拡大観察や月面の観察に使用すればとっても迫力ある姿を楽しめます!
■ラプトル60 税込21,800円
口径60mmの天体望遠鏡セットです。三脚とアイピース2本(35倍/87.5倍)、天頂ミラーが付属し、全体重量約2.5kgです。ラプトル50とは異なりこちらは三脚が伸縮でき、望遠鏡接続部分の高さを約80-128cmで調節できます。ベランダ等で柵があるために三脚を長くしたい場合などには便利です。こちらも覗き穴式ファインダー式で、望遠鏡の筒部分を手で持って見たい方向に向ける仕組みは変わりません。
付属アイピースはラプトル50と同じですが、倍率が6:7で大きいのと光量も増しているので、体感的にはもっと大きく見えているように感じます。下側(南側)で環が本体の手前にあり、上側(北側)では奥にあることがきちんと分かります。またカッシーニの間隙にあたる部分は、明確に間隙が見えることはなかったものの、環の一部が暗くなっているように見えました。土星の暗いエリアと明るいエリアの境界には暗めのすじがあることも分かりました。なおこの観察だけ日付が異なりますが、そのために太陽-地球-土星の位置関係が変わり、土星本体の影が環の右側だけに落ちて見えていました。
こちらもラプトル50よりも詳細が観察できました。口径は5:6、対物レンズの面積比では44%増しですので、こうした差が効いているものと思います。④のエリアはこの下で紹介するアトラス60では「微妙な濃淡がある」ように見えたのですが、こちらでは倍率が足りないためか、ただぼうっとした平坦なように見えました。
■アトラス60 税込32,800円
ラプトル60と同じく口径は60mmですが、ハンドルを回すことで微妙な向き調整のできる架台と、(それによって高倍率を掛けても対象を追いやすくなるので)133倍の高倍率用アイピースが標準付属します。(40倍、64倍、133倍の3本と天頂ミラー)三脚は伸縮式です。
こちらの機種はSTARBASE80と同じくオプションで光学式のファインダーを取り付けられます。月や惑星の導入は、本体に備え付けの覗き穴式ファインダーでも十分ですが、肉眼で見つけられないような暗い天体(銀河や星雲など)を探すのには光学式ファインダーがあると便利です。
133倍という比較的高倍率で観察することで、対象が大きく見えるのと同時に、見えている像の明るさもいくらか落ち着くので元々が明るい土星や木星では「見やすい明るさ」となり、表面の濃淡が分かりやすくなります。
木星では目立つ縞は存在がよく分かりますが、それらに加えて④などの「何らかの模様が存在するような気配」が感じられます。その具体的な模様はよく分かりませんでしたが、均一ではなく微妙な濃淡があるように思いました。これはラプトル60に付属の8mmアイピースを使った場合(87.5倍)では分かりませんでしたので、倍率の違いも効いているものと思います。
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価格帯もスペックも標準的ではありますが、天体を見ることに慣れてきて、大気の影響などの条件に恵まれれば、このような惑星観察を楽しめます!この夏~秋から天体望遠鏡を使って「星見」を始めてみませんか…!!
■ご紹介したイラストについて
この記事でご紹介したイラストは、精密なスケッチではなく、あくまでイラストです。例えば木星ならば「縞」や「黒い点々」が見えたので記していますが、このイラストと全く同じ位置に・全く同じ形で見えていたのではなく、多少の誤差があることをご了承ください。
天体望遠鏡を使うとき、ただ天体を「眺める」のではなく、表面模様を「観察する」という気持ちを持って接眼レンズを覗くことで、宇宙の神秘的な姿をより一層認識できるようになります。ただし観察には多少の根気強さ・慣れが必要ですので、初めての方にはここまでは見えないかもしれません。何度も覗くうちに見かたのコツがわかってきて、どんどん詳細が観察できるようになります。また大気の状態や近くの熱源の影響も受けますので、見る場所や時間帯を少しずらすだけで見え方が大きく変わることもあります。たとえばスタッフの自宅からは、1kmほど先のビル群のある方向に惑星があるときよりも、大きなビルの無い(ゴルフ場などがある)方向に筒先を向けた時のほうが惑星の細かい模様が見えると感じています。
上空大気は一般には冬よりも夏の方が良いですので、夏場に土星と惑星が見える今年はラッキーです。天体観察はおうちでひっそり楽しめる趣味ですから、ぜひ多くの方に楽しんでいただきたいと願っています。