笠井トレーディングさんとビノテクノさんが共同開発した新製品「31.7mmEZP正立天頂プリズム」が入荷したので、展示品にと思い1つ開封し、実際に覗いてみたところ、これはすごい!ぜひお客様にご紹介したい!と思いましたので、このブログ記事を書いております。
この製品は、2インチ正立プリズムと同じサイズのプリズムを使用していますが、像質劣化の主要因であるプリズム中央の稜線部分を避けるように光路を配し、「ミラー」ではなく「プリズム」ゆえの光路長の短さと、高い結像性能を両立したものです。
今回はTOA-130Nに取り付けて覗いてみました。LE18mm(55倍)では直視と変わらない見え味です(さらっと書いていますが像質劣化を全く感じないということです)。TAK-3.3UW(303倍)では、通常の正立プリズムではピントの山が掴みにくくなるような高倍率ではありますが、このEZPでは直視とほとんど同じ見え方で、月や惑星の細部が「どこまで見えているか」という比較をしても結果にほぼ差がありませんでした。これは驚きです…。
ただし、収束途中の光束がガラスの中を長く通過しますので、これが球面収差に影響を与えます。TOA-130Nは事実上無収差の中心像ですので却って目立ってしまったのかもしれませんが、注意して見ると、焦点外像では赤紫、焦点内像では水色のハローが存在していることが分かります。しかし、焦点像ではこれらがうまく相殺され(?)ハローは見えなくなり、結果として直視にとても近い見え方をしていました。
こちらは、同じくTOA-130Nで、一般的な正立天頂プリズムとEZPのそれぞれを使用して木星を撮影したものです。EZPではプリズムの稜線部分に光が入射しないことによる結像性能の向上効果は明らかです。対物側と接眼側のどちらも31.7mm仕様で、50.8mmアイピースは使えませんが、それを除けば最上位の正立天頂プリズムたちと比べても全く見劣りしない見え味です。
EZPは、EZM(正立天頂ミラー)よりも安価かつコンパクトに、しかもできるだけ近い像質で正立視を楽しみたい方には、非常に魅力的な選択肢となることと思います!EZMよりも光路長が短いので、下で取り付け方法をご紹介するタカハシ小型屈折望遠鏡たちや、ミューロンシリーズの鏡筒にはベストマッチです。正立像で夜空の天体たちを楽しみたい!という方は、ぜひ商品ページから詳細な情報をご覧くださいませ。
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タカハシ小型屈折望遠鏡への取り付けです。(天頂ミラー50.8が使える鏡筒ならば、天頂ミラー用31.7アダプターのような光路長の短めのアダプターと併用していただければみな無限遠にピントが出ますのでご安心ください。)
・FOA-60Qには、鏡筒に標準付属のアダプターを使って31.7mmへ変換し、その後ろにEZPを取り付けることでこのようなドロチューブ繰り出し量で無限遠にピントが出ます。
・FOA-60は、もっとドロチューブを繰り込まないとピントが出ませんので、この方法では不可です。50.8mmスリーブの出口に対して天頂ミラー用31.7アダプターのような光路長の短いアダプターを接続し、そこにEZPを取り付けてください。
FS-60CB, FS-60Q, FC-76DCU, FC-100DCは小型の接眼体を採用しています。これらの機種では標準付属のリング類では長すぎるため、上図の接続方法となります。
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ドロチューブ後端 → BORG[7911] → BORG[7522] → BORG[7317]
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※EZPを受けるパーツについて…視力や使うアイピースによっては、BORG[7317]ではなく標準付属の31.7アイピースアダプターでも大丈夫なこともあります。逆により光路長の短いBORG[7314]が必要なケースもありえます。
スタッフも実際に使ってみて、とてもよい製品だと感じました。(さっそく一つ購入してしまいました。)EZP、高倍率像を犠牲にすることなく正立で眼視を楽しみたい方にはおすすめです。