スターベース東京のブログ

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「正立視」の魅力とプリズム/ミラーの選び方

※10/1 「笠井トレーディング 31.7mm90°DX正立プリズム」 に関して追記しました。

 

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先日のブログでは、笠井トレーディングさん&ビノテクノさんの新製品「EZP」をご紹介しました。このような「正立視」のための製品はすでにいろいろ発売されていますが、今回は

・正立視の魅力

・正立視のためのプリズムやミラーの選び方

を書いていきたいと思います。

 

■正立視の魅力

正立視の魅力は、なんといっても天体が正立(肉眼で見上げたのと同じ向き)で見えることです。それに尽きます。

ほとんどの天体望遠鏡は、そのままアイピースを取り付けて覗くと倒立像(180°回転)に見えます。天頂ミラーと(通常の)天頂プリズムはどちらも像を折り返す効果がありますので、これらを使うと裏像(左右反転)になります。これらのどちらとも異なり、正立視は「肉眼で見たままの向きに見える」のがポイントです。

たとえば月は、肉眼と同じ向きに欠けて見えるのでリアル感が高く、また写真や図(これらは基本的に正立です)と照らし合わせてクレーターをじっくり眺めるのには便利です。惑星は「肉眼で見える向きと…」と照らし合わせることはできませんが、金星の満ち欠けや土星の本体の影が環に落ちる様子などは、実際の太陽との位置関係が視野内でも正しく反映されますのでこれもリアル感の増幅につながります。

さらに、夜空の暗い場所で正立視をすれば、オリオン大星雲のような「写真でよく見る対象」が「いつもの形」で視野内に見えますから、きっと感動も大きくなるものと思います。

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このように、正立視は「リアル感」を最大限に増幅し、天体望遠鏡の中の景色が実際の世界とつながっていることを自然に認識できる、簡単ながら非常に有効な方法ではないかと思います。

 

 

■正立視のためのプリズムやミラーの選び方

 

まずは大前提として、「正立天頂プリズムを使用すると、直視や天頂ミラー使用時より高倍率での”見え味”が低下する場合がある」ということをご認識ください。一般的な正立天頂プリズムでは内部の反射過程で光路の右半分と左半分を反転させて正立像を得ています。その左右の像を誤差ゼロで重ね直すことができないことや、中央の境界になっている部分(プリズムの稜線と呼んだりします)で乱反射が起きたりすることで、どうしても像の劣化が起きてしまいます。またプリズムの中を光が通過するために鏡筒の収差補正にも影響があります。こうした影響は、低倍率での観察に使用する分には気づかない程度に小さく、実用上何ら問題が無いということもありますが、高倍率で観察すると分かる場合があります。

 

そうしたことを踏まえ、正立視を行う場合には

・低倍率専用で使う → 基本的にどれを選んでも大丈夫

・高倍率にも使う → 何らかの方法で像劣化を克服した製品がお勧め

と、まずは希望の倍率によって選び方が変わってきます。

 

以下では当店取り扱い製品を中心に、どのような観点で製品を選んでいけばよいか、フローチャート形式でご紹介します。

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笠井トレーディング 31.7mm90°正立プリズム

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笠井トレーディング 31.7mm90°正立プリズム ¥3,850

まずは(高倍率での厳密な観察を除いて)気軽に正立視を楽しんでみたいという方にオススメの製品です。鏡筒側、アイピース側ともに31.7mm径で、光路長も約78mmと他の製品よりも短いため多くの鏡筒で無限遠にピントが出ます。地上観察に便利な45°傾斜タイプもございます。

 

 

 

笠井トレーディング 31.7mm90°DX正立プリズム

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笠井トレーディング 31.7mm90°DX正立プリズム ¥13,200

高精度なアミチプリズムを採用した本格モデルです。上の製品はプリズムの開口径がΦ21mmですが、こちらはΦ25mmなので、より低倍率・広視野のアイピースでもケラレが発生しにくいという特長があります。低~中倍率でさまざまなアイピースを取り付けて、しっかり長く使いたい場合にはこちらがお勧めです。

 

 

笠井トレーディング&ビノテクノ 31.7mmEZP正立天頂プリズム

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笠井トレーディング&ビノテクノ 31.7mmEZP正立天頂プリズム ¥31,350~

鏡筒側は31.7mm差し込みです。その制約の中で良い高倍率像を得たいという場合には大変オススメの製品です。光路長は109mmですが、前記事でご紹介したようにタカハシ小型屈折鏡筒にも別売りのアダプターによって取り付けが可能です。

一般的な正立プリズムでは避けられない「プリズムの稜線」の影響が無く、鏡筒のF値があまりに明るくなければ高倍率でもガンガン使えますので、50.8mm接続のできる鏡筒に対しても、敢えてこの製品を使うメリットがあります。

上画像の形状(入射=右、射出=左)が標準形ですが、その逆や、両方ペアでの販売もございます。

 

 

 

笠井トレーディング 2インチ90°DX正立プリズム

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笠井トレーディング 2インチ90°DX正立プリズム ¥26,400

こちらは2インチ(50.8mm)差し込み式のアイピースが使えるモデルです。31.7mmアイピースでは焦点距離30mm前後までですが、50.8mmアイピースでは焦点距離50~60mm程度のものまであり、その分だけ倍率を下げて広い視野を眺められます。例えばタカハシ・ミューロンシリーズのような長焦点鏡筒で、オリオン大星雲などを正立で観察したい!という場合には、こちらのプリズムにLE50mmなどを組み合わせて使うのがオススメです。

 

 

 

ビノテクノ EZM

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ビノテクノ EZM ¥70,400~

ビノテクノさんの正立天頂「ミラー」です。プリズムではなく内部の2枚の平面ミラーで正立像を作っており、プリズムでは原理上避けられない色分散が起こりませんから、収差補正の観点からはこれが最強です。標準品はアルミメッキですが+7,700円で銀メッキや誘電体コートも選択できます。鏡筒側も接眼側も2インチ(50.8mm)に対応しています。

高倍率像のキレの良さは、鏡筒本体の結像性能がそのまま生かせるという意味で最高レベルではありますが、2面反射の都合で光路長が長い(本体149.2mm + 付属の31.7アダプター2mm)ために鏡筒によっては取り付けが不可となります。

 

 

 

バーダープラネタリウム 2"/90° Amici(正立)プリズム with BBHS

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バーダープラネタリウム 2"/90° Amici(正立)プリズム with BBHS ¥98,780

反射面に銀メッキを、透過面にはバーダープラネタリウム社の誇るファントムコーティングを施し、究極の正立プリズムを目指して作られた高品質な製品です。光路長は107mmと短めなので、光路長 + 2インチ対応 + 結像性能 の3つを兼ね備えた数少ない製品と言えます。アイピース側は2インチクリックロックが標準装備されており使いやすいのも特長です。本品のほかに、同シリーズで前後がT2(M42ネジ)接続のものもございますので、使い方によってはさらなる光路長の短縮も可能です。

 

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以上、長くなってしまいましたが、正立視を楽しむためのアクセサリーをご紹介いたしました。ご不明な点がありましたら、スターベース東京までお気軽にお問い合わせください!