スターベース東京のブログ

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高速導入も超静音、集合住宅で安心して使える! iOptronの赤道儀のご紹介(1/2)

 

昨年末ころから弊店でもiOptron製の赤道儀のお問い合わせ・ご注文が増えています。iOptronの赤道儀は国産品よりもお求めやすい価格で、本体重量の割に大きな搭載可能重量が目を引きますが、実際に使ってみると他にもいろいろな気づきがありましたので、これから2つの記事でご紹介したいと思います。

 

【本記事の内容】製品バリエーションと各部機構のご紹介

【次記事の内容】天体写真撮影に使ったときのレビュー(予定)

 

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まず最初にラインアップのご紹介です。現在弊店ネットショップでご紹介しているのは次の4機種です。

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価格が「~」となっているのは三脚や極軸望遠鏡のバリエーションがあるためです。これらは追ってご説明いたします。

 

●製品名称の頭文字につきまして。「C」はセンターバランス、「G」はドイツ式を意味しています。センターバランス式では鏡筒とバランスウェイトが三脚中心を跨ぐように反対側に配置されるので、結果として機材一式の重心が三脚中心とほぼ一致します。重心が北側に寄ってしまうドイツ式よりも突発的な暴風などに対して安心感があります。

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赤道儀の製品名にある数字は搭載可能重量(ポンド表記・1ポンド≒454g)です。

●極軸望遠鏡は、通常の「光学式」のものとiOptron独自の「iPolar」から選べます。

 

・光学式極軸望遠鏡はCEM26GEM28で選べます。スケールパターンは歳差補正用の離角が印された多重円の方式です。赤道儀北極星が見える位置に設置できる場合、この光学式極軸望遠鏡だけでも、観望やオートガイドを併用した長時間露出による撮影に十分な設置精度を得られます。なお光学式極軸望遠鏡には照明装置がありません。筒先側からヘッドライトやスマートフォンで適宜照らしてご利用いただくことになります。

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・一方のiPolarは光学式極軸望遠鏡の代わりに小型レンズとセンサーが赤道儀に内蔵されたタイプで、WindowsのPCに専用のソフトをインストールして使う電子極軸望遠鏡です。CEM26とGEM28では光学式 +12,100円(税込)で選択できます。より大型の赤道儀となるCEM40とGEM45では光学式極軸望遠鏡が無く、iPolarが標準付属です。PCの画面を見ながら操作するので、楽な姿勢で、大画面表示で見やすく極軸合わせができるメリットがあります。北極星が見えなくても周辺の星が4個以上画面に写ればOKです。ただし北極星周辺の星がまったく見えない環境(南向きのベランダなど)では使えませんのでご注意ください。

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iPolarの例。機種によりレイアウトは異なります。

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iPolar操作画面の例。(iOptronのwebサイトより転載)



 

●極軸望遠鏡の仕様に関わらず、共通して付属するハンドコントローラー(Go2Nova)の機能で、2つの明るい星を交互に導入し、赤道儀の方位・高度ネジで調整を繰り返すことで極軸望遠鏡の設置誤差を小さくしていく機能もございます。一般的な「アライメント」機能(赤道儀の位置ずれを把握させ、その結果に応じて2軸モーターを自動でうまく動かして追尾精度を高める方法)に比べると赤道儀の設置精度そのものを高めるので、天体写真撮影では経時変化に伴う写野回転を本質的に軽減できます。

※気軽な眼視だけであれば、極軸望遠鏡やiPolarは全く使わずにざっくり極軸を北極星の方向に合わせ、あとは通常の(いくつかの明るい星に向けて位置ずれを記憶させるだけの)簡易なアライメントで十分快適にお使いいただけると思います。

 

このように、極軸望遠鏡のバリエーションについては

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1.気軽な眼視や電視観望なら、極軸望遠鏡は使わずにざっくり設置+ハンドコントローラーのアライメントでもOK

2.電視観望や撮影を「長時間」行う場合は極軸をしっかり合わせて設置すべき。北極星が見えて光学式極軸望遠鏡を覗くのが苦でなければ光学式でOK、そうでない場合はiPolarがオススメ。ただし北天が全然見えない場合はiPolarが使用できないので注意。

3.どちらの仕様でも自動導入&再調整を繰り返すことで極軸設置精度を高めることはできる。

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とご認識ください。別売のソフト等でも極軸設置精度を高める機能を持つものが増えてきていますので、オートガイダーやPCを併用するのであれば、そちらに頼っても良いかもしれません。

 

●機種名に「EC」と付くものはエンコーダー内蔵仕様です。通常モデルは両軸の向きをゼロポジション(鏡筒が上 / ウェイトが下 / 筒先が北)にして電源をONにしたら"クランプ"を緩めず全て電動駆動する想定ですが、エンコーダー内蔵仕様では"クランプフリー"にして手で鏡筒を動かしてもその移動量がコントローラーに反映され、その先から自動導入を続けることができます。

※(2022.11.03訂正)「EC」モデルは赤経軸のみにエンコーダーが入っています。また、「EC」モデルは"クランプフリー"で動かした場合に位置情報は追従いたしません。使用中は常にモーターだけで動かすようにしてください。訂正してお詫び申し上げます。

 

 

しかも追尾状態を内蔵エンコーダーで常時監視・補正しますので、赤道儀としての追尾精度が飛躍的に向上します。赤道儀の設置が完璧で、風や自重によるしなりが無ければ、オートガイド無しでもかなりの精度で天体写真撮影も可能かもしれません。このような使い方をしたい!という場合には、お値段は上がりますが快適便利なのでオススメです。

 

●CEM40とGEM45では末尾に「G」と付くモデルがあります。これは鏡筒を載せるアリミゾ部分の横に「iGuider」(焦点距離120mmのガイド鏡とガイドカメラを合わせたようなもの)が取り付けられているバージョンです。iGuiderにはZWOやQHYのCMOSカメラのような「ガイドポート」がありません。外部機器との接続はPC等と結ぶUSBケーブル1本だけで、これで給電とデータのやりとりを行います。ASCOM対応しているガイドソフト(PHD2 Guidingなど)で操作します。ガイド方式はオートガイドケーブルを必要としないパルスガイドです。

iGuiderはオートガイド有りの撮影システムをシンプルに構成できるのが魅力です。一方で、メイン鏡筒の焦点距離が長い場合にはもう少し焦点距離の長いガイド鏡を使ったり、メイン鏡筒が重く大きいために姿勢変化にともなう「しなり」が想定される場合には市販のガイド鏡を鏡筒のファインダー受け部分へ取り付けたりといったように、市販のガイド鏡(とガイドカメラ)を使った方がガイド結果が良くなるケースもあります。

なお「G」と付かないCEM26/GEM28/CEM40/GEM45等にも別売りの外付けiGuiderを取り付けできます。別売り品ではメイン鏡筒用アリミゾの側面に開いているM3ネジ穴×2を利用してそこに小型アリミゾを取り付け、iGuider本体はアリガタアリミゾ式で着脱できる仕組みです。

このほかにも2つのM3ネジ穴の中央にはM6やM8のネジ穴(機種による)が開いていますから、市販のガイド鏡を取り付けたりもできそうです。

 

※オートガイドをon camera方式(ZWOやQHYなどのガイドカメラとガイドケーブルを使う方式)で行う場合に使うGUIDEポートも機種により異なる位置に配置しています。ガイドケーブルはZWOやQHYCCDのカメラに付属するST-4互換のものがそのまま使えます。

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(iOptronのwebサイトより転載)

 

●自動導入はハンドコントローラー「Go2Nova」だけでなく、PCやZWO ASIAIR等でも行えます。その場合はハンドコントローラーや赤道儀本体(場所は機種による)のUSBポートとこれらの機器をUSBケーブルで接続します。

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GEM28の例

 

●CEM26とGEM28では標準仕様でWi-Fi接続にも対応しています。これを利用してスマートフォンタブレットからSkySafari等を用いて自動導入もできます。SkySafari6の場合は接続先の赤道儀として「CEM-120」を選択してください。

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SkySafari6の接続設定

 

 

●三脚は1.5"仕様(1段目パイプ径約38mm・約5kg)と1.75"仕様(同約44.5mm・約8kg)の2種類よりお選びいただけます。気軽に持ち出して使いたい場合は軽量な1.5"仕様、天体写真撮影では重心が下がり風に吹かれてもより安定する1.75"仕様がお勧めです。1.75"仕様は1.5"仕様よりも +19,800円(CEM26とGEM28)/ +13,200円(CEM40)となります。※搭載可能重量の大きなGEM45は1.75"仕様三脚のみとなります。

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左がGEM28+1.5"三脚、右がGEM45+1.75"三脚。どちらも脚を最大まで伸ばした状態です。

 

●今回ご紹介している4機種はすべて専用のアルミケースが標準で付属します。メイン部分に赤道儀本体、上フタの内部にバランス延長シャフトや三脚開き止め金具を収納するような仕組みです(機種により若干異なります)。ケース代も込みと思えばかなりコストパフォーマンスが高いと思います。国内用ACアダプターも標準付属です。

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赤道儀の組立てです。三脚と赤道儀の締結には、付属のボルトとヘクスキーを使用します。これらは保管時に赤道儀本体へ格納できるので、現地で失くしてしまう心配が少なく安心です。

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◆両軸の粗動-微動の切り替えについて、iOptronの赤道儀は独特のロック機構を有しています。タカハシ赤道儀など多くの製品が採用しているような、ウォームホイル外周に摩擦力を加えるクランプ方式ではなく、「ウォームホイル・ウォームネジを直接当てたり離したりする」方法です。ギアの歯どうしが噛み合う場所でしか固定できないデメリットはありますが、基本的にはギアを当てたままハンドコントローラーで操作する製品ですのであまり気になりません。むしろ、粗動時の回転軸の負荷が極めて軽くなりますので、厳密にバランスを合わせられるというメリットを享受できます。

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GEM28の例。左=赤経軸、右=赤緯軸の粗動ロック機構。

 

◆ハンドコントローラー(十字キー)での駆動操作はとっても快適です。スピードを変えたいときは1~9の数字キーを押すだけでよく、順番に恒星時の1, 2, 8, 16, 64, 128, 256, 512, MAX倍になります。ハンドコントローラー単体で自動導入を行うこともできます。

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※安全機構として、筒先が子午線を越えたあと(最大設定で)1時間経過したところで、自動的に反転操作を行う、または追尾を停止します。連続追尾をしすぎて鏡筒が三脚にぶつかってしまう事故のリスクは下がりますが、シンプルな赤道儀のようにずーっと回転させ続けるようなことはできません。

 

 

◆最後になってしまいましたが、ここでタイトルの回収です。iOptronの赤道儀は高速駆動時の駆動音がとっても静かです。一般的な赤道儀では高速駆動の際にそれなりに大きな動作音が発生します。キュイーン系、ギュイーン系、ニョーン系、ガリョリョリョ系など赤道儀によって個性がありますが、多くは寝ようとしている人にとって耳障りなノイズになります。しかしiOptronの赤道儀では「シュー」という小さい音で、不快になりにくいと感じます。都市部のアパートなどで使っても、近くの道路を走る車の音などと混じり合いやすい音色なので、夜間に安心して使えます。これは大きな魅力として、皆様にきちんとお伝えしたいと思います。

 

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ここまでiOptronの赤道儀の基本的なことがらをご紹介いたしました。次の記事はGEM28を天体写真撮影に使ってみたレビュー(の予定)です!