Askar FRA500 は口径90mm/焦点距離500mm(F5.6)の5枚玉アストログラフです。タカハシのFSQシリーズのように鏡筒本体だけで周辺像が補正されています。鏡筒の他にM48カメラマウントだけを追加すれば、まずは撮影を始められます。
イメージサークルはΦ55mmです。35mmフルサイズ(対角44mm)を余裕でカバーし、富士フイルムのGFX(同55mm)まで対応しているので、1つの銀河や星雲を対象とした撮影に限らず、大きなセンサーのカメラで星空の華やかな領域を一網打尽にするのにも適しています。
今回はこちらの鏡筒を試用する機会がありましたので、撮影結果をご紹介したいと思います。
ご覧の通り35mmフルサイズの全域で星像の大きさはほどんと変わりません。明るい星には軽微な青ハローが生じますが、これは設計性能のとおりです。ピント合わせの際にはFSQ-85EDP等で感じるようなピントの「鋭さ」=ベストピントの瞬間に恒星がギュッと引き締まり明るく見える現象、はありませんでしたが、FRA500の持つ
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・画像全体でほぼ完全に均一な星像が得られる
・周辺光量が豊富である
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という特長は、画像処理を進めやすいので大きな魅力だと思います。
※FRA500は画角周辺にある明るい星にビネッティングによるクサビ状の回折が発生しにくく、綺麗に円形に写ります。青ハローは画像処理で軽減できます。
ただし上のスポットダイアグラムで分かるように、FRA500の魅力は像質の均一性にあり、恒星が"超シャープ"に結像する…というタイプの製品ではありません。星像が限界まで小さく結像すること、高倍率眼視でのシャープネスなどを求める場合には、より高価ですが FSQ-85EDP + フラットナー1.01× や FSQ-106EDP のような製品もご検討ください。
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さて、このFRA500ですが、実際に天体写真に使ってみると「使いやすい」と感じる部分が多くありました。
・まずは鏡筒バンドとロスマンディ互換のアリガタ、持ち運び用の金属ハンドルが標準で付属している点です。アリガタをビクセン互換のものに交換する場合はこちらのような長穴タイプが便利です。長穴を使った固定ではバンド1本につき1点のネジ固定となりますが、それでも強度面では十分です。
・接眼部にはカメラ回転装置とマイクロフォーカサーが標準付属します。カメラ回転装置は回転時に「シュー」というすり合わせ音が小さく聞こえますが、面と面がしっかり触れて回転しているので、スケアリングへの悪影響は無く安心です。マイクロフォーカサーはガタやアソビも無くスムーズです。
・ドロチューブの固定ネジは底部ピニオン軸の箇所にあります。固定ネジは鏡筒の中央から左右のどちらかにずらした場所に取り付けられます。握り部分の小さいネジですが、固定力は十分です。ドロチューブの動きはなめらかで、しっかりしています。
・対物フードはスライド式です。移動時にはコンパクトにできます。最も伸ばした状態でもフードがあまり長くなりませんが、通常の迷光防止には十分かもしれません。これは他の鏡筒にも共通して言えることですが、夜露のひどい時期には延長フードやヒーターを取り付ければ安心です。
・接眼部のリングには内側につや消し塗装が施してあります。内面反射が少なく安心です。
このようにユーザーフレンドリーな設計が各部にみられ、とっても使いやすいなと感じました。しかも各部はきちんと組立調整されていて、開梱してそのままフィールドに持ち出せばいきなり高品質な天体写真が撮影できます。製品としての仕上がりが良く、ユーザーが「頑張る」箇所が少ないのが魅力だと思います。