関東はようやく秋らしい天気になってきました。今年は土星→木星→火星と観察の好機が続きます。すでに土星は南中時刻が20時頃となり西へ傾いてきましたが、季節は秋で、18時台に薄明が終了しますので、撮影可能な時間はまだまだあります。
大口径の天体望遠鏡にCMOSカメラを取り付けて惑星の撮影(動画撮影→PCで画像処理)をするという手法がメジャーになって久しいですが、その影で「小口径の望遠鏡では惑星撮影は出来ないんでしょ」という声も聞きます。そこで今回は口径6cmの屈折望遠鏡を使って惑星の撮影を行ってみました。
FOA-60Q鏡筒(口径60mm / 焦点距離900mm / F15)です。フローライトレンズを含む6枚構成の屈折望遠鏡で、極限的な収差補正を実現し、実用上完璧な中心像が得られます。スタッフの愛用している小型で超高性能な製品です。
使用したカメラはZWO ASI662MCです。かつて惑星撮影用として大ヒットし、今でも十分通用する性能を誇る「ASI290MC」の後継である「ASI462MC」の後継機です。センサーが小さいので惑星を画角に導入するまでが大変ですが、FOA-60Qの場合はまず眼視で100倍ほどで視野中心に導入し、その後カメラに取り替えることですぐに画面に見えました。
※大口径や長焦点の鏡筒を使う場合は、よりセンサーの大きいZWO ASI585MC などのほうが導入が楽になります。
FOA-60Q鏡筒はF15なので、もう少し像が暗くなっても拡大するメリットが大きいと判断し、テレビュー パワーメイト2× を併用しました。無限遠にピントを合わせるために50.8延長筒を追加しています。この状態で合成焦点距離は1800mmで、得られる惑星像は小さめ(口径6cmなので仕方ありません)なので、大気色分散を補正するADCは使わなくても色ずれが目立たないので問題無いだろうと思いました。
ASI662MCは赤外光にも感度があるため、肉眼で見た自然な色合いで撮影するために、別売のIR/UVカットフィルターを併用しました。今回はパワーメイトと2インチ差し込みで接続したので、フィルターの取り付けにはセンサー直前に取り付けるためのアダプターを併用しています。
当店で非冷却CMOSカメラをご購入の方限定で差し上げている「かんたんマニュアル」の手順に沿って撮影とスタックを行ったものがこちらです。↓↓↓
この「かんたんマニュアル」ではこの後「RegiStax」というフリーソフトを使って惑星の模様を強調していますが、今回はステライメージ9の画像復元機能を使いました。
この操作を3回ほど繰り返したのち、いつも使っているLightroomで色合いの微調整を施したものがこちらです。
FOA-60Q鏡筒は眼視で見ても非常にシャープな見え味です。今回の撮影では眼視像と(体感で)ほぼ同等の画像を得られました。私は以前ASI290MCを所有していましたが、その正当後継機であるASI662MCは、さらに感度が良く、ノイズが少なくなっているように感じました。
このように、口径が小さい鏡筒を使った場合でもバローレンズ等で適切に拡大し、適切なMOSカメラを使えば、惑星の模様を写し出すことが可能です。当店でCMOSカメラをお求めいただきますと「かんたんマニュアル」が付属しますので、初めての方でもある程度の仕上がりが期待できます。
CMOSカメラの選び方はこちらのブログ記事に詳しくまとめましたので、ご参考になさってください。今年はまだまだ惑星を楽しめます。冬になるとだんだん気流が悪くなり、シャープな像を得にくくなりますが、晴れ間を見つけて惑星の観察や撮影を楽しみましょう!!
※本当は火星も撮ろうと思ったのですが、仮眠を取ったはずが朝になっていました…。