スターベース東京のブログ

スターベース東京のブログです。店頭の様子や機材情報を中心に書いていきます。不定期更新。

(天体写真)明るい星に生じる回折光条について

皆さんは天体写真を撮影した時に、構図周辺の明るい星に不均一な光条が生じた経験はおありでしょうか。例えばこのようなものです。

今回のブログ記事では、このような現象が発生する原理を解説いたします。

 

まずは以下の画像をご覧ください。

これは、ある鏡筒で筒先を白い光源へ向け、カメラ側からスマートフォンで撮影したものです。ただしスマートフォンのレンズは鏡筒の光軸中心ではなく、右上方向にずらしています。このとき、本来円形の望遠鏡の開口部がレモン型になって見えています

 

ところで、光は波の性質も持つので、対物レンズや補正レンズの縁に当たると縁の裏側へ回り込むように進みます。それを上図では、黄色と水色の矢印で示しています。

この結果として、この位置にある明るい星には、構図中心に対して円周方向のみ光の回り込みが無く、それ以外の方向には星像が広がりを持って写ることになります。先の実写画像を改めて見てみましょう。

5時・11時の方向以外の全方向に光が広がって写り、結果として「星割れ」状態になっている



星割れ現象はカメラ側から鏡筒を覗いたときに、開口部が円形に見えない時に生じ、星割れの形状は開口部の形状(先の例ではレモン型)によって決定します。一般論としてFの明るい光学系を使った時(→周辺減光が大きい場合)に生じやすく、また構図の周辺にある星ほど光条が顕著に生じます。

 

同様の回折光条は、カメラレンズの絞り羽根によっても生じます。絞り羽根によってレンズの開口部が多角形状になっていると、その多角形の角数(奇数の場合はその2倍)本の回折光条が生じます。夜景の写真などで光源に放射状の光条が生じているのはこのためです。

 

このような現象は一般のカメラ撮影で光源に光条が生じるのと同じく、像面から見た開口部が円形ではない場合に生じるもので、カメラ用語では「口径食」「ビネッティング」と呼ばれる現象のひとつです。

 

ここで別の例を見てみます。FC-100DZ鏡筒に2種類のコンバージョンレンズを用いて、写野内のさまざまな位置にある明るい星がどのように写るかをテストしました。

フラットナー撮影時は、より周辺まで星像が円形を保っています。ポジション9と10で星割れが生じているのはフラットナーのレンズ(後端の直径Φ40mm)の縁で生じたケラレが原因と思われます。このフラットナーは複数枚のレンズを使用しており、口径のケラレ方は単純なレモン型ではありませんので、結果として生じる回折光条の形状も複雑になっています。

レデューサーも多数枚レンズ構成で、複雑な回折光条が生じています。

 

ここまででご紹介したケースはいずれも鏡筒・コンバージョンレンズ側に原因がある星割れです。理想的にはイメージサークル上のどの位置から鏡筒を覗いても開口部が円形に見える(→周辺光量100%)がベストですが、実際にはそうならないことが多く、構図の周辺に明るい星があると何らかの星割れ現象が生じてしまうかと思います。周辺減光のある光学系では、ある程度仕方の無いことかもしれません。

 

これらの現象を抑制する方法として、対物レンズ前方に円形の板を追加して、鏡筒の口径を絞る方法があります。口径が小さくなるので像面に届く光量は低下しますが、一方で写野中央に対する周辺光量が増大します。以下はこちらのリングを使用したテスト結果です。対物絞り環Φ52を使用しない場合と比較して、周辺星像に生じやすい不均一な回折光条が抑制されています。

※検証方法、サンプル抽出位置は先ほどと同様です。

 

また、鏡筒側ではなくカメラ側に原因があり、構図周辺の明るい星が変形するという場合もございます。

TOA-130NS + TOA-645フラットナー (設計上の周辺光量98%)

上記の例は、鏡筒側に周辺減光がほとんど無い場合です。それでも最周辺の星には放射状のスジが生じてしまっています。これは使用したフィルターや、カメラマウントによるケラレが原因です。カメラマウントやアダプターリングの接続方式を見直すことで改善できることがあります。

 

ε-160ED + Canon EOS6D (IR改造)

こちらの例は一眼レフカメラのミラーボックス部分でケラレが生じ、画像の上端または下端に近いところに写る星に上下方向のスジが生じる場合です。Fの明るい光学系と一眼レフカメラの組み合わせで生じることがあります。ミラーボックスを持たないミラーレスカメラでは基本的に生じませんが、開口部が長方形のマウントアダプターを使用すると生じます。冷却CMOSカメラをねじ込みで接続する場合には生じません。

 

反射望遠鏡のスパイダーによる光条について

反射望遠鏡でスパイダーを持つものは、スパイダーの縁で光が回り込むので、スパイダーの本数に応じた(奇数本の場合はその2倍)回折光条が生じます。スパイダーは筒先に設けられていて鏡筒へ入射するすべての光がこの影響を受けるため、スパイダーに由来する回折光条は構図中のすべての星に発生します。

※シュミットカセグレンのようにスパイダーではなく補正板を有する鏡筒では、回折光条は円形に生じるので分かりにくいですが、発生はしています。

 

今回のブログ記事では、天体写真において星像に回折光条が生じる原因をご紹介しました。明るい星で回折光条が生じている場合、同じ場所の暗い星や星雲なども同様の影響を受けていますが、観賞用としてはあまり問題にならないことが多いです。このような現象にお困りの方は、まずは明るい星を綺麗に写せるように、お使いの鏡筒に応じて構図を検討したり、カメラの接続を見直したりしてみてください。