スターベース東京のブログ

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強烈にシャープ&ハイコントラスト! 「タカハシ TOE58°シリーズアイピース」実視レビュー

本年6月20日に発売されたタカハシの新型アイピースTOE 58°シリーズ」。従来のTOEシリーズ(52°)と同じく「星像に収差を付加せずそのまま網膜に結像させる」製品であり、

TOA-130と組み合わせ ~(中略)~
視界全面に無収差の星像が得られる

と謳っています。実際に使用して月や重星を観察しましたので、その感想をスタッフの言葉でお届けしたいと思います。

※眼視は個々人の身体(眼球→網膜→脳)を使って楽しむ行為です。見え方そのものや、見え方に対する「好み」も人それぞれです。本記事の内容はあくまでもスタッフの主観に基づいたものですのでご了承ください。

TOA-130NFB + TOE-10mm 58°、iPhoneで撮影。まだ青さの残る背景の空と、白く輝く月のコントラストが印象的でした。眼ではもっとシャープに見えた印象です。

 

この日はシーイングの良い夜でした。使用したのはTOE 58°シリーズアイピースの設計に使用されたのと同様の TOA-130NFB鏡筒 です。色分散を生じない正立ミラーを使って月と重星を観察しました。スタッフ私物のTPL-6mm(見え味が気に入ったので買いました)やその他の同じ焦点距離域の複数のアイピースも使いました。

 

 

月面観察

月面を観察すると、無理のない倍率(10mm→100倍、7.5mm→133倍、5.5mm→182倍)だということもあってか、網膜にパリッパリにシャープな像が結ばれて心地よい見え味です。微細な月面上の濃淡、特に黒いスポット状のクレーターがはっきりとコントラスト良く見えました。明部は突き抜けるように明るく、暗部はよく引き締まっています。この「暗部の黒の引き締まり」が印象的です。

TOE58°アイピースは赤矢印で示したような小さなクレーターの「影」の部分がはっきりと真っ黒に見えると感じました。(画像はM-180Cで撮ったものでイメージです)

 

このことはタカハシWebサイトで公開されているデータとも合致します。

公開データに説明を付記したものです。

終売品のLE 5mmと比較すると、TOE-5.5mm 58°では中心像の青系の波長でストレール比が高い、つまり青ハローとして広がる光量が少ないことを示しています。これは下段のスポットダイアグラムにも表れており、LE 5mmでは(エアリーディスク内の僅かな量ではありますが)青ハローが生じます。一方のTOE 58°シリーズは(TOA-130NS/NFBを用いた設計データにおいて)青ハローがほぼゼロです。設計上はエアリーディスク内の僅かな差ではありますが、もしかするとこれが、TOE 58°シリーズアイピースで月面の暗部が「真っ暗である」と感じる原因なのかもしれません。

TOE 58°シリーズは3本とも同様で、軸上色収差が少なく、明暗がはっきりして、ハイコントラストな見え味が印象的でした。

 

また、月面観察において、TOE58°シリーズはベストピントの出方が独特なように感じました。下図のように、同じ焦点距離域の一般的なアイピースと比較してベストピントと思える範囲が広い(?)です。その範囲内では見え味の差がほとんど生じないように感じます。これも色収差が少ないことによる"錯覚"のようなものかもしれません。

TOE 58°シリーズアイピースで月面を観察すると、ベストピント範囲が広いように感じました。



重星

いくつかの重星を観察しましたが、特に印象的だったのが、さそり座のJabbah(連星 / 明るい2つの恒星A-Bの離角=1.3秒角)です。このときはTOE-5.5mm 58°TPL-6mmを使用しました。

どちらのアイピースも1.3秒角のA-Bを容易に分離しますが、見え方には差があるように感じました。TOE-5.5mm 58°のほうが、僅かですが、星と星の隙間がはっきりと黒く見えました。

一方、TPL-6mmの方が優れていると感じた点もあります。それは暖色系の星の色乗りの良さです。TOEシリーズは全体を通して寒色系の色がしっかり出る印象ですが、TPLシリーズは逆に暖色系の色が鮮やかに見えると感じます。TPLシリーズは2群4枚のレンズ構成でヌケが良いのか、前述の月面観察においても地球照の部分が明るく感じられたのも印象的です。

 

 

眼鏡使用時の覗きやすさについて
眼鏡を掛けたまま覗く場合、アイカップを折り返すと視野を広く確保できます。自然な覗き方で40°~45°ほど、眼鏡を押し当てれば58°の視野の大部分が見えます。

イカップを折り返した図

 

●TOE58°シリーズはweb発表資料では視野全体にシャープな像を結ぶことがアナウンスされていますが、実際に使った印象では、まず、中心像がとても良いことに驚きます。収差補正の良さに加えて、4群6枚という比較的シンプルなレンズ構成にも要因がありそうです。覗いた時の「ヌケの良さ」「クリアネス」も印象的でした。

 

●TOE58°シリーズの3本は、実際に手に取るまでどれも(10 / 7.5 / 5.5mm)TOA-130NFB用には微妙な倍率であり、やや使いづらいのではないか…と感じていました。ところが実際に使ってみるとTOE 58°シリーズは凄まじい結像性能(特に中心像)で、この倍率域で星空を見ることの「楽しさ」を再発見したような思いです。月を見るだけでもこんなにわくわくするとは思いませんでした。

 

 

いかがでしょうか。TOE-5.5mm 58°、TOE-7.5mm 58°、TOE-10mm 58°はいずれも卓越した中心像を得られるプレミアムアイピースとして、スタッフがぜひお勧めしたい製品だと感じます。初めての方・初心者~中級者の方でも、ご予算が見合えば「最初からものすごくシャープなアイピースを使う」ことで素晴らしい眼視体験を堪能いただけることと思います。

ただ、本アイピースのキャッチコピーは「星像に収差を付加せずそのまま網膜に結像させる」であり、鏡筒の収差を打ち消すような機能はありません。お手元の鏡筒に取り付けても十分な性能を発揮できるのだろうか…?とご不安な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。どうぞよろしくお願いいたします。

 

※この記事ではTOE 58°シリーズアイピースのインプレッションをお伝えしましたが、その他のタカハシアイピースもお勧めです!

・高倍率域でシャープな見え味を求めるなら「TOE 52°シリーズ

・ヌケの良さが特長の高品質スタンダードアイピースTPLシリーズ

と合わせて、ぜひタカハシアイピースで宇宙の素晴らしい姿をご覧になってください。TPLアイピースに関して、以下に過去記事へのリンクを載せます。

starbase.hatenablog.jp