この記事では当店へお越しになるお子様連れのご家族層を想定し、店頭でお伺いする「よくある質問」を踏まえながら、はじめての天体望遠鏡の選び方をご紹介いたします。
はじめての天体望遠鏡選びでは、単純な倍率の数字だけでなく、天体の見つけやすさ、扱いやすさ、保管しやすさ等も大切です。今回はミルムーン、ラプトル50、SW-60A、ラプトル60、アトラス60の5機種を比べながら、ご家庭に合う一台の選び方をご紹介します。
天体望遠鏡を選ぼうと思ったとき、「子どもに合うのはどれだろう」「月や惑星はちゃんと見えるだろうか」と迷われる方はとても多いです。店頭でもこのようなご相談をいただく機会はたくさんあります。
「あまり難しすぎるものは心配」「でも、ちゃんと月や惑星が見えるものが欲しい」「最初の一台で失敗したくない」……こうしたお気持ちは、はじめて望遠鏡を選ばれる方ならとても自然なことだと思います。
実際のところ、天体望遠鏡は単純に「倍率が高いものがいちばん良い」というわけではありません。どんな天体を見たいのか、どのくらいの重さなら無理なく持ち出せるのか、お子さまが自分で使うのか、それとも親子でいっしょに楽しむのか――そうしたことによって、向いている製品はかなり変わってきます。
今回ははじめての一台として、こちらの5つの製品
について、違いが分かりやすいように整理してみました。
「まずは月を楽しく見たい」という方と、「せっかくなら木星の縞や土星の環まで見てみたい」という方では、選び方が少し変わってきます。順番にご紹介していきます。
★一言で比較すると…★
まずは月を見つけやすく、楽しく始めたいという方には、ミルムーンが向いています。
軽くて扱いやすい、きちんとした入門機をお探しなら、ラプトル50はとても有力です。
60mm口径で、できるだけシンプルに始めたいなら、SW-60Aが選択肢に入ります。
親子でいっしょに使いながら、少し長く使いたいなら、ラプトル60がバランスの良い選択だと思います。
月や土星、木星を高倍率でじっくり見たいなら、アトラス60が魅力的です。
もちろん、どれが絶対に正解ということではなく、ご家庭ごとの使い方に合うかどうかが一番大切です。以下ではそれぞれの特徴をもう少し丁寧に見ていきます。
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【はじめての望遠鏡選びで大切なのは、倍率だけではありません】
天体望遠鏡の説明を見ると、どうしても「何倍まで見えるか」が目につきやすいのですが、実際に使い始めてみると、それと同じくらい大切なのが「天体を見つけやすいか」「見つけたあとに追いかけやすいか」「架台の振動の収束は早いか」「また使おうと思える重さかどうか」という点です。
たとえば月はとても明るいので、最初に楽しむ対象としてぴったりです。ただし、月であっても望遠鏡の視野にうまく入れられなければ、せっかくの機材も楽しさにつながりません。導入のしやすさや動かしやすさは想像以上に大切です。
また、木星や土星のような惑星を高倍率で観察したい場合には、見つけやすさに加えて、細かく向きを調整しやすいかどうか、望遠鏡から手を離した後すぐに振動が収束してクッキリ見えるかどうか、も重要です。高倍率になるほど、少しの揺れやズレが大きく感じられるためです。
さらに、望遠鏡は「買ったその日だけ使って終わり」ではなく、何度も空を見上げるうちに楽しさが深まっていく道具です。ですので、無理なく出し入れできて、長く続けやすいこともとても大事だと思います。
店頭でも、「よく見えるものが欲しい」というお気持ちと同じくらい、「出すのが大変だと結局使わなくなりそう」というお声をいただきます。ご家庭に合ったサイズ感や扱いやすさを選ぶことが、長く楽しむための秘訣だと思います。
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■ビクセン お月見望遠鏡ミルムーン・三脚セット 14,500円(税込)

ミルムーンはその名前の通り、まずは月を楽しく見ることを大切にした望遠鏡です。対物レンズ有効径は50mm、焦点距離399mm。付属する接眼レンズはH25mmとPL7mmで、16倍と57倍を切り替えて観察できます。
この製品の良さは、「はじめての方が楽しみやすいよう気を配って作られている」ところにあります。鏡筒が短く、スペースを取りにくいのも、ベランダ観察においては大きな魅力です。
望遠鏡を初めてお使いになる方は、「見たい天体の方向へ向ける」こと自体が最初の壁になり、天体望遠鏡を使うことを諦めてしまう理由にもなりがちです。その点、ミルムーンは天体望遠鏡としてはかなりの低倍率(16倍)に出来る接眼レンズが標準付属しているので、その部分のハードルを下げてくれる印象です。月は明るくて観察しやすい対象ですので、まず16倍で月全体を見て、次に57倍でクレーターを見てみる、という流れで自然に楽しめます。月の位置を案内する専用アプリが用意されている点も、初めてのお子さまには心強い部分だと思います。
こんな方に向いています
・まずは月を楽しく見たい方
・低学年くらいのお子さまにも分かりやすいものを選びたい方
・最初の一台で「見えた!」という体験を大切にしたい方
この機種についてひとこと
月を中心に、最初の一台としてのやさしさを重視するなら、とても魅力的な製品です。お子さまが最初に月を見て、クレーターの凸凹に驚いてくれるような、そんな入口を作りやすい機種だと思います。
■スコープテック ラプトル50 14,990円(税込)

ラプトル50は長く定番として支持されている日本製の入門機です。付属アイピースは30倍と75倍の2本。月のクレーターだけでなく、もっと高倍率で金星の満ち欠け、木星の縞やガリレオ衛星、土星の環などが観察できます。
この製品の魅力は、とにかく軽く、扱いやすいことです。全体重量は約1.5kgで、望遠鏡としてはかなり軽量な部類に入ります。望遠鏡は、思い立ったときにさっと出せることが大切ですので、この軽さは大きな長所です。
また、スコープテックらしい「のぞき穴ファインダー」もポイントです。一般的な光学ファインダーよりもシンプルで、はじめての方が狙いをつけやすいよう工夫されています。メーカー側でも、6~9歳くらいの子どもがひとりで使える望遠鏡を目指して開発された経緯が紹介されており、実際に来店されたお子さまもその場ですぐに使い方を覚えてくださっています。
入門機とはいえ、見え方はきちんとしています。一般的な双眼鏡よりもずっと高い倍率で、月面のクレーターや惑星の姿をしっかり楽しめます。「最初の一台としてちゃんと天体望遠鏡らしい体験がしたい」という方には、おすすめしやすい機種です。
一方で、三脚は固定式で、高さ調整はできません。小さなお子さまが使うにはむしろシンプルで良いのですが、親子で共用したり、大人がメインで使ったりする場合には、姿勢の工夫が必要になることもあります。
店頭でも、「子どもが自分で持てるくらい軽いものがいいです」というお声には、このラプトル50をご紹介することが多いです。最初のうちは、出しやすさそのものが使いやすさにつながりますので、その点で非常に優秀な製品だと思います。
こんな方に向いています
・軽くて持ち出しやすいものを探している方
・子どもが自分でも扱いやすい望遠鏡を選びたい方
・月だけでなく、木星や土星も見てみたい方
この機種についてひとこと
「はじめての本格的な望遠鏡」として、非常に魅力のある一台です。軽さを重視するなら、5機種の中でもかなり有力で、空を見たくなった夜にすぐ出せる気軽さは大きな強みです。
■ケンコー SKY WALKER SW-60A 17,900円(税込)

SW-60Aは「60mm口径の見え方を確保しつつ、できるだけシンプルに始めたい」という方に注目していただきたい機種です。口径60mm・焦点距離700mmの屈折式で、付属の20mmと8mmアイピースによって35倍と87.5倍で観察できます。
この機種の特長としてまず挙げたいのは、煩雑な調整を省きやすいのぞき穴ファインダーと、直感的に扱えるフリーストップ式の組み合わせです。鏡筒を手で動かして、見たい位置で手を放せば止まる構成なので、はじめて望遠鏡を触る方でも感覚的に扱いやすい印象があります。活動的なお子さまが望遠鏡を掴んで振りまわしても、架台の内部にギア等が無いので「簡単には壊れにくい」のが特長です。これはラプトル50・ラプトル60と共通した長所です。
また、三脚は1段式で、伸ばしたり縮めたりする必要がなく、ガタやブレを抑えやすい設計になっています。傾斜地で使う場合は転倒しないよう注意が必要ですが、分かりやすい商品構成です。これはラプトル50と似ています。
「まずは月や惑星を見てみたい」「難しすぎる機種は不安だけれど、50mmよりは少し余裕のある見え方が欲しい」という方には、かなり選びやすい一台だと思います。
一方で、親子で身長差が大きいご家庭や、高さ調整をしながら柔軟に使いたい場合には、伸縮三脚を備えたラプトル60のほうが合わせやすいかもしれません。ですので、SW-60Aは「60mm口径で、できるだけシンプルに始めたい方」に向いた機種として考えると位置づけがわかりやすいです。
こんな方に向いています
・できるだけシンプルな操作で60mm口径を使いたい方
・月だけでなく、木星や土星も無理なく楽しみたい方
・子どもと一緒に、まずは分かりやすく始めたい方
・ガイドブック付きで学びながら進めたい方
この機種についてひとこと
ラプトル50より一段明るく、でもアトラス60ほど本格機寄りではない。その中間を、できるだけやさしくまとめたような一台です。操作の分かりやすさを重視しながら、月や惑星をしっかり楽しみたい方には、かなり良い候補になると思います。
■スコープテック ラプトル60 26,900円(税込)

ラプトル60は、ラプトル50の使いやすさを受け継ぎながら、明るさや使い勝手をさらに高めたモデルです。付属アイピースによってSW-60Aと同じ「35倍と87.5倍」で観察できます。月の全景やクレーター、金星、木星、土星、さらに条件の良い明るい星雲・星団なども楽しみやすい構成です。
50mmと60mmでは、数字だけ見ると小さな差に思えるかもしれませんが、実際には集められる光の量が増えるため、見え方には違いが出てきます。たとえば木星は、口径50mmでは「縞の向きと大まかな本数が分かる」のが、口径60mmになると「縞の本数とそれぞれの色の差が分かる」ようになる、等の明確な差が感じられると思います。(機種や上空の気流の状況によってかなり変わります。あくまでも一例として。)
また、ラプトル60では三脚が伸縮式になっているのも大きなポイントです。お子さまの身長に合わせるだけでなく、親御さんが使うときにも姿勢を合わせやすく、ベランダの柵越しに観察したい場合などにも便利です。こうした「使う人に合わせやすい」部分は、実際に長く使ううえでかなり嬉しいポイントです。
さらに、31.7mm規格の接眼レンズにも対応しているため、将来的に楽しみ方を広げやすいのも良いところです。メーカーサイトではラプトル50の兄貴分にあたる「理想のラプトル」として紹介されており、親子で共用しやすいバランスの良さが感じられます。
店頭で「子どもだけでなく、大人もいっしょに使いたいです」とご相談いただいたときには、このラプトル60がかなり有力になります。軽すぎず重すぎず、見え方もしっかりしていて、高さも合わせやすいので、ご家庭全体で使いやすい印象です。お子さまが中学生や高校生になっても、接眼レンズをアップグレードしたりして長く使える製品だと感じます。
こんな方に向いています
・親子で共用したい方
・ラプトル50よりもう少し余裕のある見え方を求める方
・高さ調整のできる三脚が欲しい方
この機種についてひとこと
軽すぎず重すぎず、見え方と扱いやすさのバランスがとても良く、長く付き合いやすい一台です。カラーリングが黒-赤でカッコイイのもお子さまに人気です!
■スコープテック アトラス60 42,900円(税込)

アトラス60は、同じ60mm口径でもラプトル60よりさらに「じっくり観察する」ことを意識したモデルです。付属アイピースは40倍・64倍・133倍の3本で、上下・水平の両軸とも全周微動装置付きの経緯台を採用しています。
この“微動装置付き”という部分はとても重要です。高倍率で月や惑星を見ていると、天体は意外とすぐに視野の外へ動いていってしまいます。そのとき、ほんの少しずつ向きを調整できるかどうかで、見やすさが大きく変わります。アトラス60はその点がきちんと考えられていて、100倍を超える観察でも比較的落ち着いて追いやすいのが強みです。
133倍の高倍率が標準で使えることもあり、月面の細かな地形や、木星・土星の姿をより本格的に楽しみたい方にはとても魅力があります。必要に応じてオプションの光学ファインダーを取り付けられるなど、拡張性があるのも長所です。
そのぶん、ラプトル50やラプトル60、SW-60Aに比べると、重さもサイズ感も一段本格的になります。とはいえメーカーの開発コンセプトは「理科の授業で天体に興味を持った9~10歳の子供が自分で操作でき、大人になってからも使い続けられる、最初の本格的望遠鏡」として案内されていますので、決して上級者専用というわけではありません。
店頭では、「土星の環をしっかり見たいです」「月も惑星も、できればじっくり見たいです」という方に、このアトラス60をご案内する場面が多いです。少し本格的になりますが、そのぶん観察している感じをしっかり味わいやすい機種だと思います。
こんな方に向いています
・月や土星、木星を高倍率でじっくり見たい方
・微動ハンドルのある架台で、快適に追尾したい方
・最初から少し本格的なものを選びたい方
この機種についてひとこと
「見えた」で終わらず、「じっくり観察したい」と感じる方には、とても魅力の大きい一台です。月・惑星をしっかり楽しみたいご家庭にはお勧めです。
迷ったときは、こんな選び方がおすすめです
■ まずは月を楽しく見たい
→ ミルムーン
■ 子どもが自分でも持ち出しやすいものが良い
→ ラプトル50
■ 60mm口径で、できるだけシンプルに始めたい
→ SW-60A
■ 親子で共用しながら長く使いたい
→ ラプトル60
■ 土星の環や木星を、よりじっくり観察したい
→ アトラス60
最後に
天体望遠鏡は、スペック表だけ見て選ぶより、「どんな夜を過ごしたいか」を思い浮かべながら選ぶほうが、失敗が少ないように思います。
ベランダで月を見て「クレーターが見えた!」と喜ぶ時間も、とても素敵ですし、少し慣れてきて木星や土星をじっくり観察するのも、また違った楽しさがあります。
店頭でも、最初は「月が見えれば十分です」とおっしゃっていた方が、検討を進めるうちに「やっぱり土星も見てみたい」等とお話しくださることがよくあります。天体望遠鏡は比較的長持ちする趣味の道具です。だからこそ、ご用途に合ったものをじっくりご検討いただければと思います。
なお、本記事でご紹介した5機種は「はじめての一台」としてとても魅力的な製品ですが、将来的にもう一歩上の見え味を求めたくなった方には、STARBASE80 や FC-76DCU経緯台SB といったハイグレードな選択肢もございます。今回は詳しく触れませんでしたが、より本格的に月や惑星、星空を楽しみたい方は、こうした機種の商品ページもぜひご覧になってみてください。
月のクレーターを見て驚いたり、木星の縞を見つけてうれしくなったり、土星の環に思わず声が出たり――そんな時間は、ご家族にとってきっと特別な思い出になるはずです。ぜひご家族で、これからの「星見」の時間を楽しんでみてください。
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