◇概要
ε-180EDは焦点距離500mm / F2.8の鏡筒です。副鏡(斜鏡)の遮蔽を考慮した実効F値は3.1ほどとなります。
ε-130Dに比べると2まわり近く大きく重いのですが、その圧倒的な速写性と隅々までシャープな像質の高さを評価され、発売以来多くの皆様にお使いいただいております。最近のカメラの性能向上によって「Fの明るさは必須ではない」時代になってきましたが、それでもやはりFの明るさがもたらす恩恵は確実に存在します。淡い対象を丁寧に撮る場合だけでなく、雲の流れる夜、各対象にあまり時間を割けない夜などには、実効F3.1のε-180EDが大いに活躍するでしょう。
※10年以上弊店にて展示している個体での撮影です。その間さまざまに使ってきましたが、光軸は一度も修正せず今回のテスト撮影となりました。
光軸やスケアリングが少しずれてしまっているのはご容赦ください。それでも星像が非常に「鋭い」ことはご覧いただけると思います…!(2022.03.11追記)
ε-180EDは星の収束が大変良いので、明るい星に出る十字の光条が最もはっきり見える位置で、明確にピントの山がわかります。また下記のようなメリットも感じます。
・星に色ずれや色ハロがほとんど見えないので、星を点として素直に表現できる
・星の占める面積が少ないので星々の背景にある構造がよく見える
・暗い星はしっかり小さく、明るい星は光条を伴って大きく写るので、星々の明るさ関係が写真に写る大きさにきちんと現れ、宇宙の奥行き感を感じやすい
・光条に星色が乗るので、HDR的手法を使わなくても星の色を表現しやすい(スパイダーを持つ光学系に共通して言えることですが…)
一眼レフデジタルカメラではミラーボックスのケラレが避けられず、PC白画面に筒先を当てるだけの簡易フラット補正ではこれをきれいに補正できません。フラット補正に関しては工夫が求められます。
鏡筒としてはかなりのシャープさを持っていますので、小型センサーの(そして、ミラーボックスのない!)冷却CCD/CMOSカメラを使った深宇宙の撮影にも活躍できるでしょう。たとえば本記事の作例で、マイクロフォーサーズ相当にトリミングすると
このくらいの画角を得られます。Fの明るさと隅々までシャープな星像を高次元に両立させたい方へ、ε-180EDはきっと大きな力になってくれると思います。