スターベース東京のブログ

スターベース東京のブログです。店頭の様子や機材情報を中心に書いていきます。不定期更新。

(ご参考)FC-100DC + FC-35レデューサー0.66×の接続について

本記事では以前の記事の補足を兼ねて、タイトルの通り、スターベースオリジナルリングを使った接続方法をご紹介したいと思います。

 

大口径レンズを使用したFC-35レデューサー0.66×は、接眼部の内径が大きなFC-100DFやFC-100DZに適合しますが、小型接眼体を使用しているFC-100DCには取り付け出来ません。

…と公式には言われていますが、実は裏ワザがあります。

※ただしいくつか注意事項がありますので、本記事を最後までご覧になってから各自のご判断をお願いいたします。

 

使用するのはスターベースオリジナルの「FC-100DC用2インチ変換リング」です。

FC-100DCのドロチューブ後端(M55.9ネジ)に本リングを取り付けることでM72ネジへと変換し、FC-100DFに使うのと同じリング類を取り付けられるようになります。FC-35レデューサー0.66×を使用する場合、具体的な接続は下図のようになります。

FC-100DC鏡筒へのFC-35レデューサー0.66×の接続方法

無限遠にピントを合わせるため、FC-100DCの接眼部の延長筒を外しています。この状態でドロチューブを12~13mmほど繰り出すと無限遠にピントが合います。

 

レンズの組み合わせはFC-100DF + FC-35レデューサー0.66×と同じなので、合成焦点距離も同じく480mm F/4.8となります。しかし「DC」ではドロチューブの内径が「DF」よりも狭いため、(FC/FSマルチフラットナー1.04×では問題にならないものの)通常想定外となるFC-35レデューサー0.66×使用時には、周辺像で「ドロチューブ先端内径によるケラレ」が生じます。

 

実際に撮り比べてみました。

周辺光量の比較(FC-35レデューサー0.66×使用時)

「DF」に対する「DC」の相対光量(FC-35レデューサー0.66×使用時)
※実写画像を用いてステライメージ9にて作成したグラフを加工しました。中央の窪みはM27星雲のためで、光量分布は平らになるはずです。

FC-35レデューサー0.66×を使用して天体写真撮影を行う場合、"585"センサー(ZWO ASI585MC Pro や Player One Uranus-C)程度まではFC-100DCでも変わらない光量が得られることが分かりました。しかしそれ以上の範囲では「DC」と「DF」の接眼体の内径差が影響して、「DC」のほうが周辺光量が少なくなります。

FC-100DF + FC-35レデューサー0.66×ではイメージサークルはΦ44mmですが、FC-100DC + FC-35レデューサー0.66×の場合は周辺減光が強まるので、中央比光量60%となるイメージサークルは実測でΦ35~37mm程度となりました。

 

また、今回のテストでは見られませんでしたが、「DC」の場合はケラレの影響で、画角周辺部の明るい星に回折光条が生じる"可能性"があります。

 

ただし、中央の結像性能は「DC」の場合でも良好です。マルチフラットナー使用時に比べて対象が小さく写りますが、F値が明るくなった分だけ同じ露光時間でもノイズの少ない結果が得られます。

FC-100「DC」 + FC-35レデューサー0.66× の撮影結果より、中央部を切り出してコンポジットとデジタル現像のみ掛けたもの。ダーク減算のみで、フラット補正は行っていません。

 

 

まとめると、

・FC-100DCにも「FC-100DC用2インチ変換リング」を使えばFC-35レデューサー0.66×を使用でき、その場合は合成焦点距離480mm F/4.8になる

・ただし接眼体の延長筒を外すなどの手間が掛かる

・周辺光量の観点からはシステムチャート通りにFC-100DF + FC-35レデューサー0.66×としたほうが有利かつ安心。FC-100DCの場合はドロチューブの内径差のため、周辺光量が一層少なくなる

 

となります。

【ご注意】上記の構成でお使いいただく際は、各パーツをご購入の前に必ずお手元のFC-100DC鏡筒で、接眼体延長筒が外れるかどうかをお確かめください。外れない場合は無理をせず、当店へご相談ください。

 

いかがでしょうか?本記事の内容が皆様にとって「FC-100Dシリーズのどれを選ぶか問題」のご検討材料になれば幸いです。

 

土星が衝を迎えて観察しやすい季節になりました。気軽に持ち出せて、2枚玉で温度順応が早く、眼視も撮影もハイレベルに楽しめるFC-100Dシリーズ。ぜひご検討ください!!!

タカハシ新製品のご紹介

今秋発売予定の新製品FCT-65D・FC-76DP・FS-60CP及び各FUレデューサー(3種)の紹介動画がタカハシ公式YouTubeにて先行公開されています。ぜひご覧ください。

www.youtube.com

価格・発売日・詳細情報等は追ってタカハシ公式サイトにて正式に発表があります。正式発表をお待ちください。

なお、各FUレデューサー(3種)の発売日は新鏡筒発売後となっています。

【ASIAIRでの天体撮影を応援】オリジナルマニュアル「ASIAIR操作ガイド」配布中です!

 この度スターベース東京では「 ASIAIR Plus-256G(新型)」「ASIAIR Mini」を新規ご購入の方を対象に、新しく作成した「ASIAIR操作ガイド」の配布を開始いたしました!(冊子単品での配布や販売はありません。なお、印刷版のみの発行です。)

B5(見開きB4)サイズ フルカラー40ページ以上です

 ASIAIRは、撮影・電視観望・オートガイド・自動導入など、天体撮影に必要な操作が可能なデバイスです。パソコンが不要となり、スマートフォンタブレット1つで天体撮影が可能となる便利さから、多くの方にお求めいただいております。そのコンパクトさから、海外遠征を考えている方にもおすすめの製品です。

ですが、中国の天文機器メーカー「ZWO」が発売しているため、アプリケーションが英語であることの他、非常に多機能であることからも「購入してもうまく使えないのではないか?」と、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

 そこでこの度、スターベース東京では「ASIAIR操作ガイド」の配布を開始いたしました。このマニュアルは、実際にASIAIRを使って天体撮影を楽しんでいる当店スタッフが執筆したものです。メーカー純正では、詳しい操作方法についての説明書は発行されていませんので、スタッフがオリジナルで一から作成しております。そのため、説明が不十分である箇所や分かりにくい箇所、ちょっと間違っているところも、もしかするとあるかもしれません。ですが、執筆したスタッフは「できるだけわかりやすく」を念頭に、ASIAIRをお求めいただいたすべてのお客様に天体撮影を楽しんでいただけるよう、一生懸命作成させていただきました。

 ASIAIRついてはネット上でもたくさんの情報が公開されていますが、これから始めたいというユーザー様にとって最大の難関は質問できる相手がいないということだと思っております。スターベース東京には、実際にASIAIRを使用しているスタッフがいますから、技術的な内容も安心して質問できるのが強みです!こちらのガイドブックをお読みになって分からないことがありましたら、お気軽にご相談くださいませ。

 

ご注文は以下から承っております!

 

 

 

すごいぞ! FC-100DC + FC/FSマルチフラットナー1.04×で天体撮影♪

FC-100DC」鏡筒は、ファインダーを除けばわずか2.8kgと、驚異的な軽さが特長の2枚玉フローライトアポクロマート屈折望遠鏡です。

ところで「FC-100DC」鏡筒と「FC-100DF」鏡筒は、同一の光学系が使用されています。では、その違いはどこにあるのか?まずは当店展示品の鏡筒を2本並べて撮影してみました。違いがよくわかるように、ファインダー脚は一時的に取り外しています。

FC-100DC鏡筒とFC-100DF鏡筒の接眼部比較

(上)FC-100DFの接眼部リング構成 
F-50.8AD取付リング→50.8アダプター屈折用→50.8延長筒L→50.58スリーブ→アイピースアダプター接続環(短)→31.7アイピースアダプター
(下)FC-100DCの接眼部リング構成
ドローチューブ延長筒(FS-60CB)→補助リング(FS-60CB)→眼視アダプター(FS-60CB)→アイピースアダプター接続環(長)→31.7アイピースアダプター

並べてみると、接眼部のリング構成が異なることが一目瞭然で、
 FC-100DF は、2インチサイズアクセサリー対応
 FC-100DC は、31.7mmサイズアクセサリー対応
となっています。
主なスペックや仕様も以下の表で比較してみました。

  FC-100DC FC-100DF
有効口径 100mm
鏡筒外径(フード外径) 95mm(124mm)
鏡筒全長 815mm 785mm
焦点距離 740mm
口径比(F値) 7.4
質量(ファインダー別) 2.8kg 3.3kg
ドロチューブストローク 30mm 63mm
FC/FSマルチフラットナー1.04× 対応
76Dレデューサー 対応
FC-35レデューサー0.66× 対応  
販売価格(税込)2024年6月現在 223,300円 251,900円

「FC-100DC」の接眼体には、「FS-60CB」や「FC-76DCU」と同様の規格のものが採用されています。そのため、100DFや100DZの接眼体と比較するとドローチューブストロークが短かったり、M55.9接続の「FC-35レデューサー0.66×」は使用できなかったりしますが、その分 "本体質量3kg以下" という驚異的な軽量化に成功しています。

そんな、軽く(Karui)て、カッコよくて(Kakkoii)、取り扱いも簡単(Kantan)で、気軽(Kigaru)に使える、フローライト(Keiseki)を使用した「FC-100DC」鏡筒。高倍率でもクリア(Kuria)な見え味を実現する10cm屈折望遠鏡として特に眼視目的の方に人気がある他、「FC/FSマルチフラットナー1.04×」を使えば四隅までクッキリ(Kukkiri)な星像で撮影できることから、中口径でしっかり撮影を楽しみたい!いう方にも大変おすすめです。

ここでしつこく赤字で書いてしまいました、FC-100DC鏡筒の【7K】を、皆様ぜひ覚えていただければ幸いです!

軽く(Karui)
カッコよく(Kakkoii)
取り扱いが簡単(Kantan)
気軽に使える(Kigaru)
高倍率でもクリアな見え味も実現し(Kuria)
マルチフラットナーを使えば四隅までクッキリな星像の(Kukkiri)
2枚玉フローライト(蛍石屈折(Keiseki)

それでは皆さまご唱和ください

軽い、カッコいい、簡単、気軽、クリア、クッキリ、ほた…蛍石(けいせき)!

覚えられましたでしょうか(^^)

ということで、今回は作例とともに7KなFC-100DC鏡筒の魅力をたっぷりとご紹介していきます(^^)/

 

まず今回は「FC/FSマルチフラットナー1.04×」使用時のリング構成にし、カメラマウントDX-WRを経由してZWOのASI6200MCを取り付け、MORE BLUEのアリガタと鏡筒バンドも装着した状態でビクセンの「鏡筒三脚ケース100」に収納し、空の暗いところに鏡筒を持ち出して撮影しました。ファインダーは使用しなかったため取り外して持ち運べば、気持ちの良いくらいピッタリなサイズで収納することが出来ました。

ビクセン 三脚用ケース100 に収納した様子
ファインダーも持ち運ぶ場合は、巾着袋に入れると良さそうです。

スターベースから自宅までは電車で、自宅から遠征地までは高速道路を使いながら車で移動しましたが、実際に持ち運んで思ったことはやはり、軽いということです。もちろん、一応10cmの屈折が入っていますので 軽々しく持ち上げられる!というほどに軽いわけではありませんが、持ち運ぶのがとても大変と感じることはありませんでした。女性や体力に自信のない方でも持ち運びに苦労しないサイズのように思います。ケースなどに収納すれば遠征地への運搬時に光軸がずれてしまうこともまずないでしょう。FC-100DCなどの扱いが簡単な鏡筒は、運搬時に精神的なストレスを感じにくいことも大きなメリットです。

前置きが長めになってしまいましたが、実写画像もご紹介していきましょう。まずは球状星団の「M13」を撮影しました。星の密集した中心部をどこまで解像できるでしょうか。なお、この後のM8, M20の作例に出来るだけ時間を充てたかったので、本作例は総露光わずか14分(!)です。

クリックで別ウィンドウで表示

M13
FC-100DC + FC/FSマルチフラットナー1.04×+ASI6200MC Pro
合成焦点距離 760mm F7.6
2分 ×7枚 総露光時間14分

いかがでしょうか。周辺までクッキリで、星像の色ハローは僅かです。下の画像は、中心部を解像度の高い画像でご覧いただくために、ASI585MC(11.2mm×6.3mm)程度の画角にトリミングしたものです。

クリックで別ウィンドウで表示

ASI585MC 程度にトリミング

スポットダイアグラムからは一見すると青ハローが広がるように思われるかもしれませんが、青いドットの「密度」が低いことからも分かるように、実写画像への影響はごく僅かです。今回の画像でも青ハローを低減する処理は一切かけておりません。

なお今回は鏡筒本来の性能をご覧いただくために、BlurXTerminatorなどの星像を点に近づけるような処理もしていません。

 

続いて夏の代表的な星雲、M8とM20のペアも撮影してみました。こちらもBlurXTerminatorは使用していません。

クリックで別ウィンドウで表示

M8 M20
FC-100DC+FC/FSマルチフラットナー1.04×+ASI6200MC Pro
合成焦点距離 760mm F7.6
2分 ×80枚 総露光時間160分

正直、FC-100DCってここまで撮影できるのか!と感動してしまいました。F7.6と決して明るいF値ではありませんが、明るくてメジャーな天体であればそこまで長くない総露光時間でも十分に楽しめるように思いました。対象の細部の写りなどは、口径5~6cmの小口径鏡筒で撮影するのとは全くの別物です。対物レンズの面積比で単純計算すると、FC-76Dの約1.7倍、FS-60CBの約2.7倍も光量が豊富になります。

せっかくですので、それぞれの星雲をトリミングして、拡大した画像も見てみましょう。例えばAPS-Cサイズセンサーで撮ったとすると、M8がちょうどよく収まるサイズになります。

ASI2600MC Pro程度にトリミング

ASI294MC Proなどフォーサーズサイズ程度のカメラで、明るい星雲や銀河をクローズアップして撮影するのも楽しそうです。

ASI294MC Pro程度にトリミング

いかがでしょうか?

重さ・大きさの点でも無理ない程度に、10cmクラスのカッコイイ鏡筒を使った撮影を十分に楽しみたいという方に「FC-100DC+FC/FSマルチフラットナー1.04×」の組み合わせは自信を持ってお勧めできるシステムです。

ちなみに、「FC-100DC」は「76Dレデューサー」にも対応していますが、スポットダイアグラムは以下の通りでイメージサークルは30mmとなっています。

正直なところレデューサーを使用して、明るく・広角で撮影をしたい!という場合は「FC-35レデューサー0.66×」がオススメで、その場合は対応している「FC-100DF」鏡筒が選択肢として挙がってくるでしょう。FC-100DF+FC-35レデューサー0.66×ではF4.8となり、FC-100Dシリーズでは最もF値の明るい組み合わせで撮影できます。

また、さらにワンランク上の眼視体験や撮影を楽しみたい!という場合には「FC-100DZ」鏡筒も視野に入れてご検討いただければ幸いです。しかしこちらは、税込313,500円(2024年6月現在)と100DCと比較して10万円近い価格差があります。ですが、FC-100DZはその価格差を考慮しても十分に魅力的な鏡筒です。

FC-100Dシリーズの3機種(FC-100DC / FC-100DF / FC-100DZ)は、似ているようでいてそれぞれに個性があり、どれを選ぶか悩んでしまいますね…。

 

なお、眼視での見え味につきましては、3年前にこちらの記事でご紹介をしております。

starbase.hatenablog.jp

随分昔の記事ですので、販売終了となっている製品が多く登場しておりますが、シャープでクリアな見え味の参考にしていただければと思います。

さて、今回は「FC-100DC鏡筒+FC/FSマルチフラットナー1.04×」での天体写真撮影についてご紹介させていただきました。 "7K"が自慢のFC-100DC鏡筒で、眼視や撮影を楽しんでみませんか???

 

↓↓お求めはぜひ、スターベース東京をご利用ください!↓↓

www.starbase.co.jp

 

 

すごいぞ!TSA-120でガッツリ天体写真撮影!

皆さんはTSA-120鏡筒に対してどのようなイメージをお持ちですか?

タカハシ屈折望遠鏡のラインアップにおいて、本鏡筒は多くの場合「TOA-130Nに迫る眼視性能ながら軽量で使いやすい」と表現されています。このような文脈では無意識のうちに、TSA-120は眼視主体の鏡筒だ…と思われるかもしれません。確かに撮影時の結像性能の指標であるスポットダイアグラムでも、ほぼ完璧な点像となるTOA-130Nに対して、TSA-120では星像はやや面積を持って表現されます。

しかし!!!

実はTSA-120は、天体写真撮影のための望遠鏡としても、かなりの高性能を秘めています!

今回は2通りの補正レンズを使って実写した結果をご紹介いたします。

 

1. TSA-120 + TOA-35レデューサー0.7×

ばら星雲 TSA-120 + TOA-35レデューサー0.7× + ZWO ASI6200MC Pro
ゲイン100 2分×94枚 総露光時間3時間8分

システムチャート通りの接続で撮影しました。ASI6200MC Proは内径を広く確保しつつカメラマウント接続とするため、当店オリジナルのこちらのアダプターセットを使いました。光害カットフィルター等は使用していません。

TSA-120にTOA-35レデューサー(150セット)を併用すると、焦点距離635mm、F5.3となります。35mmフルサイズやAPS-Cセンサーのカメラで大型の銀河や星雲を撮影するのにちょうどよい画角が得られます。F5.3というスペックはFSQ-85EDPの直焦点とほぼ同じです。淡い対象の撮影にも使いやすい明るさです。

1枚撮り画像(ステライメージ9でデジタル現像のみ)

(左)画面左上 (右)中央 のそれぞれ1000ピクセル四方切り出し

フラット画像

撮影結果を見てみましょう。フルサイズ6200万画素の超高画素カメラでも、中心から周辺までこれだけ均一でシャープな写りです。しかも明るい星の色ハローもありません。

星像が最もシャープな元画像・中央500%拡大表示

撮影中の各コマでは気流の影響を受けて星像の大きさがわずかに変化しますが、上は最もシャープに写った(つまり光学系の性能を最も引き出せている)コマです。フルサイズ6200万画素のカメラで、1コマ2分の露光を掛けて、星像がこれだけシャープに引き締まっている…これがどのようなことか、同様のスペックの鏡筒を使った経験のある方ならお分かりいただけるかと思います。スポットダイアグラムではTOAシリーズに一歩譲る構成ですが、実用上ではこれだけ良い写りをします。

 

元々が眼視性能も高いTSA-120ですが、レデューサーを使えばFが明るくなるということに加え、広い画角を得られて便利です。センサーが小さめのカメラ、例えばASI533MC Proで同じように撮影した場合、下のような画角となります。

正方形センサーの冷却CMOSカメラ(ZWO ASI533MC Pro等)と同じセンサー面積でトリミング

※温度変化への耐性について

この撮影中は、撮り始めから終わりまでの間に外気温が3.2度下がりましたが、合焦マスクでの回折光条の出方は変わらず、撮影結果を見てもピント移動は無かったようです。この夜はこれ以上の温度変化が無く、例えば5℃の変化でどうなるか…等は試せませんでした。しかし3度の温度変化でピントが明らかにズレる鏡筒もある中で、これはTSA-120鏡筒自体の特長かと思われます。温度変化に対してピントずれが少ないのは嬉しいですね。

外気温+1.2℃でピント合わせをしたのち、同-2.0℃となったときの合焦マスク像。ピントが合ったままと確認できたので、そのまま撮影を継続しました。

 

2. TSA-120 + TOA-645フラットナー

M101 TSA-120 + TOA-645フラットナー + ZWO ASI6200MC Pro
ゲイン100 2分×135コマ 総露光時間4時間30分

タカハシ公式ではTSA-120鏡筒にはTOA-35フラットナーが適合しますが、先日の検証でTOA-645フラットナー150セットとの相性も良いことが分かりましたので、今回はそちらを使いました。接続等の詳細はこちらのブログ記事をご覧ください。↓↓↓

starbase.hatenablog.jp

焦点距離は900×0.99=891mm(F7.4)ほどかと思います。

1枚撮り画像(ステライメージ9でデジタル現像のみ)

(左)画面左上 (右)中央 のそれぞれ1000ピクセル四方切り出し

フラット画像

この日はシーイング条件も良かったようで、焦点距離900mmほどの状態で撮影してもシャープさを維持しています。以前のブログ記事で述べたのと同じ理由で、シーイング条件の良い日なら「レデューサーを使って撮った画像をトリミングする」よりも「フラットナーを使って撮る」方が、アンダーサンプリングを回避して実解像度を高める効果があると感じます。

中央の等倍切り出し。(左)今回の撮影で最もシャープなコマ (右)最も星像肥大の大きなコマ

このような長焦点撮影ではシーイングの影響を受けやすくなります。上画像の比較をご覧ください。同じ夜でもシーイングの変化によってこれだけ星像の大きさが変わります。この日は比較的シーイングが良かったですが、肉眼で星がチカチカと瞬いて見えるような日はもっと星像が肥大してしまいます。そのような日は比較的大気の影響を受けにくい短焦点での撮影(例えばフラットナーではなくレデューサーを使う)に切り替えたほうがよさそうです。

 

このくらい長めの焦点距離であれば、小さいセンサーのカメラと組み合わせて銀河や星雲のクローズアップ撮影を行うのも楽しそうですね。

IMX585センサーの冷却CMOSカメラ(Player One Uranus-C Pro等)と同じセンサー面積でトリミング
※星像の肥大を復元する処理(BlurXTerminator)は使用していません。

※TSA-120は直焦点での周辺像の肥大が比較的少ない鏡筒なので、そもそも小さいセンサーであれば、フラットナーが不要かもしれませんが…

 

TOA-35レデューサー0.7×とTOA-645フラットナー、どちらの補正レンズを使っても、たいへん良好な結像が得られました。温度変化に対するピントずれ量が小さそうなのも魅力です。また、ここまで触れませんでしたが、TSA-120は口径の割に軽めなのでEM-200 / EQ6系よりも一回り小型の、SXD2 / AM5クラスの赤道儀に搭載しても安定した撮影結果が得られるという利点もあります。

(今回の撮影にはSXD2赤道儀を使用しました。AM5の場合は剛性の高いメタル三脚にハーフピラーを併用して搭載するのが安心です。)

 

いかがでしょうか?もう眼視用とは思わないでください!TSA-120は、紛れもなく「眼視・撮影両用」の高性能鏡筒です!!!

 

【お得なセット販売もございます!】

www.starbase.co.jp

 

最強のビクセン鏡筒! 「VSD90SS」試用レビュー!!

VSD90SS」は2023年11月30日にビクセンが新発売した高性能アストログラフです。

ビクセン VSD90SS 口径90mm 焦点距離495mm F5.5
ビクセンWebサイトより)

5群5枚の天体撮影と眼視観望、扱いやすさと性能を極めたフラッグシップ鏡筒で、SDレンズ2枚と高屈折率EDレンズ、凹レンズには高性能ランタン系ガラスを採用した光学設計により、従来品「VSD100F3.8」を上回る高レベルな収差補正を実現しています。写野中心から、35㎜判フルサイズの最周辺に至るまで、シャープで美しく均一な星像を得ることができます。

VSD90SS断面図
ビクセンWebサイトより)

鏡筒スペックなど詳細はビクセンさんのホームページもご参照くださいませ。

ということで、今回はこの「VSD90SS」をスターベーススタッフが実際に使用してみましたので使用感をご紹介したいと思います!

 

 

外観など

スタイリッシュな外観でシルバーで印字されたロゴは高級感を放っています。重さは本体だけで約4.3kg。手に持ってみるとずっしりとした重みがあり、レンズが詰まっている感があります。それでいて、フード収納状態では全長476mmとコンパクト(ε-130Dの全長が460mmです。)になるため、手軽に運搬することができました。今回は運搬のために弊店オリジナルの屈折用バッグSに収納し、車に乗せて運びました。"超高性能な5枚玉"ではありますが、通常の屈折望遠鏡と同様の運搬方法で問題なさそうです。安心して持ち運びができる鏡筒だと思います。

フード収納時
ビクセンWebサイトより)

なおフードについては、いったん取り外して反対にして取り付けることで収納する形になります。また、上の図で左端に見えている黒いものは対物キャップです。この対物キャップを着脱する際には、フードは収納状態とするか、いったん外す必要があります。下のように、フードを取り付けた状態で対物キャップを着脱することはできません。

この状態で対物キャップを着脱することは不可
ビクセンWebサイトより)

豊富な周辺光量

フルサイズ周辺でも中心比約94%と従来品の「VSD100F3.8」と比較して周辺減光が大幅に改善されています。カメラマウント、またはフィルターホイールによるケラレ以外の光量低下はほとんど見られません。

フルサイズでも周辺光量豊富です!
ビクセンWebサイトより)

以下は「ASI6200MC Pro」での撮って出しの画像を強調表示したものになります。周辺減光の様子を見ようとして強調したところ、かぶりが先に見えてきてしまいました。周辺減光は見た目にはほとんど判りません。

ASIFitsViewにてプレビュー

作例

今回は、2月の新月期に長野県まで足を延ばしZWOのフルサイズカラー冷却CMOSカメラ「ASI6200MC Pro」で撮影を行いました。

撮影対象はマルカリアンチェーンです。
こちらをクリックすると高画質でご覧いただけます(約8MB)。

VSD90SS+ASI6200MC Pro ゲイン100 冷却-15度
2分×125コマ 総露光250分(4時間10分)

フルサイズ周辺まで申し分のない素晴らしい星像で、撮影していても画像処理していても気持ちよさを感じます。なお、鏡筒本来の性能を評価するために、最近話題のAI画像処理ツール「BlurXTerminator」は使用しませんでした。

下は右下1000ピクセル四方の切り出し画像になりますが、フルサイズ最周辺であることは言われないとわからないどころか、言われても信じがたいほどです。

右下1000ピクセル四方の切り出し

なお星が少し ぼてっ としてしまったのは気流の影響を受けたものです。連続する2コマでも下の様に星像が変化していました。

各120秒露光 連続する2コマの中心500ピクセルの星像比較
わずかな差ではありますが左の方が星像が小さいです。

冬の悪いシーイング下でもこれだけの性能を発揮してくれているのを見ると、夏の気流が良い時季に撮影をするのが楽しみになります。

 

フォーカサーの使用感と気温によるピント変化

フォーカス調整にはラック&ピニオン式が採用されています。合焦ハンドルの回転はものすごく滑らかで、フルサイズの冷却カメラを取り付けた状態で筒先を天頂付近に向けても滑らかなタッチのまま動かすことが出来ました。ただその滑らかさゆえに合焦ハンドルに触れただけでもピント位置が変化してしまうほどです。鏡筒の性能を十分に発揮すべく精密なフォーカス調整にはオプション品の併用が必須でしょう。標準でデュアルスピードフォーカサーの付属はなく用途に応じた汎用性が考慮された設計となっており、ZWOのEAF(電動フォーカサー)を取り付けることも可能です。

デュアルスピードフォーカサー(左)とEAF(右)を取り付けた様子
ビクセンWebサイトより)

 

また今回はバーティノフマスクを使用して気温変化によるピント位置の移動についても検証しました。日没頃から鏡筒を設置し、できる限りの温度順応を済ませてから撮影に臨みましたが、約2度の外気温変化でもバーティノフマスクの回折光条にハッキリわかる違いが出ました。星像が超シャープな分、気温変化によるピント移動にはやはり敏感なようです。

スタッフの個人的な感覚ですが、もし私が使用するなら1度ごとにピント位置をチェックしたいところです。

 

カメラ回転機構

今回は「直焦ワイドアダプター60DX EOS用」(別売品)を使用したため、その回転機構でカメラの回転を合わせを行いましたが、ネジを閉めて固定する際に画角が0.1~0.2度ほどずれてしまうことがありました。多くの場合0.1度のずれはそこまで気になりませんが、精密な回転合わせを短時間で行うのは難しそうです。
(カメラ回転装置が有ると使いやすいということを改めて感じます・・・)

直焦ワイドアダプター60DX EOS用
ビクセンWebサイトより)

先日のCP+では参考出品として、天体用CMOSカメラの接続に特化した「直焦ワイドアダプター60DX for 48mm」が展示されていました。これが登場すれば、ますます使いやすくなりそうですね。

 

鏡筒バンド

鏡筒バンドは専用の「VSD鏡筒バンド115S」(別売品)が用意されています。

バンドを締めるネジは程よい大きさで、とても回しやすく感じました。寒さで手がかじかんでいる場合でも回しやすそうです。また、完全に緩めた場合でも下側に"くるっ"と回ってしまうことはありません。鏡筒が傷つかないように配慮された設計となっています。

専用の鏡筒バンドを取り付けた様子
ビクセンWebサイトより)

 

専用収納ケース

持ち運びに便利な専用の収納ケース(別売品)もございます。接眼部側が広く設計されており、EAFやカメラマウントを取り付けた状態でも鏡筒を収納することが可能です。鏡筒バンドやアリガタの金具も取り外さずに持ち運べるのはうれしいですね。(以下の画像はビクセンWebサイトより)

 

おわりに

先日のCP+では、参考出品として専用のレデューサー「レデューサーV0.71x」も発表され、ますます注目を浴びている今話題の鏡筒です。「VSD90SS」のシャープネスな星像を体験してみませんか?

↓↓ぜひ!お求めはスターベース東京をご利用ください↓↓

www.starbase.co.jp

「バックフォーカス」と「カメラの接続方法」について。基礎事項から具体例までご紹介いたします。

最近は天体望遠鏡CMOSカメラの接続についてのお問い合わせが増えてきています。これらの接続は、これまでは「Tリング + カメラ」のほぼワンパターンでしたが、現在はCMOSカメラのラインアップが増えて接続方法が多様化し、以前より複雑になりました。鏡筒側の取り付け規格も従来のM42ネジに加えてM48ネジが増えてきました。こうした背景を踏まえ、今回のブログ記事では主要な接続方法を一通りご紹介したいと思います。

 

はじめに

このような話題を扱う際に、まずは天体望遠鏡とカメラの接続には大きく分けて2種類あるということをお伝えしたいと思います。

 

(1) 「ただピントが合えばOK」のパターン

主な例として、①補正レンズが無い屈折望遠鏡、②補正レンズと対物レンズが一体となっている屈折望遠鏡、が挙げられます。

上の模式図のように、ピント合わせによって「対物レンズユニット一式」と「センサー面」との距離のみが変わる場合は、ユーザーが調整できる光学ユニット同士の間隔は1箇所のみです。この距離を適切に調整してピントを合わせることができればOKです。

この場合は、(基本的にはシステムチャート通りに接続するのが確実なのはもちろんですが、)お手元にあるリングを適当に接続してピントが合えば、それで使っていただいてもOKです。

 

 

(2)システムチャート通りに接続する必要があるパターン

上の模式図ではピント合わせの際に、光路中の「レンズ・鏡面同士の距離」が変わります。ドロチューブやヘリコイドよりもカメラ側に補正レンズのある場合(FS-60CB+レデューサーC0.72×、FMA180proなど)が該当します。この場合はユーザーが調整できる光学ユニットどうしの間隔が複数あり、どちらもメーカーの想定どおりに調整する必要があります。

 

例えば補正レンズ~センサー面の距離がメーカー想定よりも大きくなると、ドロチューブ繰り出し量は減り(あるいはピントが合わない)、補正レンズの効果が強く出すぎて周辺像が過補正になってしまいます。逆に補正レンズ~センサー面の距離が近すぎるとドロチューブは長く繰り出す必要があり(あるいはピントが合わない)、周辺像の補正が足りず結像性能が劣化します。

実際にFS-60CB + レデューサーC0.72× で試してみました。補正レンズ~センサー面の距離を規定より5mm長くすると、APS-Cセンサーの周辺像でもかなりの悪化が見られます。また、この際はレデューサーの効果が強まって、合成焦点距離はカタログ値の255mmよりも短くなりました。

このようにユーザーが調整できる「レンズ・鏡面どうし、あるいはレンズ・鏡面からセンサー面までの距離」が複数箇所ある場合は、システムチャートに従って補正レンズ~センサー面の距離を正しく合わせる必要があります。これを守らないと、仮に無限遠にピントが合ったように見えても、実は中心像のシャープネスが設計値より落ちていたり、周辺像が肥大したり、実際の焦点距離が設計値とズレたりします。

※対物レンズ~補正レンズの距離はドロチューブである程度調整できるので、例えばカメラ回転装置の代わりに同程度の光路長を持つ延長筒で代用したりするのはアリです。

ドロチューブ内部に補正レンズを組み込んだAX103S、ドロチューブに補正レンズをねじ込むεシリーズ等も該当します。他にも主鏡移動方式のカセグレン系(Mewlon、シュミカセなど)や副鏡移動方式のMewlon-CRSなどもそうです(ピント合わせで鏡間距離が変わるため)。

 

当店にいただくお問い合わせでは、多くの場合、(2)のパターンで補正レンズ(または鏡面)からセンサーまでの距離に原因があります。この距離は一般に「バックフォーカス」あるいは補正レンズの金枠端面から測った距離であることを明示して「メタルバック」と呼ばれます。これらの用語は直焦点の場合にも接眼体後端から焦点面までの距離を指して使われることもありますが、特に補正レンズを使用する場合、バックフォーカス/メタルバックの概念はたいへん重要です。

補正レンズがピント移動によって動く場合や、主鏡や副鏡を動かしてピント合わせを行うカセグレン系鏡筒の場合は、メーカーが公開しているシステムチャートの通りにリングを接続し、正しいバックフォーカス/メタルバックで使用するようにしましょう。

 

ただし、各社が公開しているシステムチャートは主に一眼レフカメラの使用を前提としています。CMOSカメラはさまざまな接続方法が可能なので、それを鏡筒側のシステムチャートで網羅的に紹介することは困難です。ユーザーが自身の機材に対する知識を持って、正しい接続を行う必要があります。

ここからは長くなりますが、基本的な接続方法を一通り網羅してみたいと思います。

 

基本的な接続方法

1. M42ネジ バックフォーカス55mmの場合

(主な例:Askar FMA135)

デジタル一眼レフカメラ

ほとんどの場合、Tリングとデジタルカメラの合計でバックフォーカスが55mmとなります。(例えばキヤノンEFマウントではTリングの光路長が11mm、ボディのフランジバックが44mmで合計55mmです。ニコンFマウントでは同8.5mm+46.5mm=55mmとなっています。このように、Tリングの光路長は対応するカメラボディにより異なります。)なので市販品をそのまま取り付けるだけでOKです。

フランジバック=カメラの取り付け面からセンサー面までの距離。

具体的には、Tリングとして

タカハシ カメラマウントDX-S

ビクセン Tリング(N)

ケンコー TマウントアダプターII

等が使用できます。

 

【天体用CMOSカメラ / キヤノンニコンマウント経由】

天体用のCMOSカメラでは、そのメーカーからカメラマウントへの変換アダプターが用意されていることがあります。この場合はデジタル一眼レフカメラと同様に簡単な接続が可能です。使用するのはTリングに加えて「マウントアダプター」です。例えばZWO社ではキヤノンEFマウントに対してこのような製品を用意しています。

シンプルなマウントアダプター

フィルターを着脱しやすいマウントアダプター

ニコン用等もあります。

 

【天体用CMOSカメラ / 全ネジ接続】

M42ネジからカメラまでの全ての接続をねじ込みで行う場合、カメラ自身のフランジバックに応じて適切な長さの延長筒を使用する必要があります。代表的なものをこちらにまとめました。

フランジバックが12.5mmのCMOSカメラの場合、

ZWO M48→M42変換リング

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

笠井トレーディングT2延長等セット(15mm+10mmを使用)

でバックフォーカスがほぼ55mmとなります。

フランジバックが17.5mmのCMOSカメラの場合、

ZWO M48→M42変換リング

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

ZWO M42→M42エクステンダーリング(21mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

 

【天体用CMOSカメラ /  31.7スリーブ差し込み】

スリーブ差込の場合、スリーブの固定位置によってある程度の自由度があるため、使用する延長リングの組み合わせは一つには決まりません。スリーブを奥まで差し込まず「浮かせて」固定するのもアリですが、ここではスリーブを奥までしっかり差し込む前提でリング構成を検討しました。

以下に、代表的な例を示してみます。

フランジバックが12.5mmのCMOSカメラの場合、

バリチューブ(小)(20mm)

MOREBLUE TP521 M42*0.75→1.25inホルダー変換アダプター(20mm)

・スリーブの厚み(1.5mm)

でバックフォーカスがほぼ55mmとなります。

フランジバックが17.5mmのCMOSカメラの場合、

・バーダーT2延長筒(16mmで使用)

MOREBLUE TP521 M42*0.75→1.25inホルダー変換アダプター(20mm)

・スリーブの厚み(1.5mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

M42ネジ用の1mm厚シムリングもご用意しました。必要に応じてご活用ください。

 

2. M48ネジ バックフォーカス55mmの場合

(主な例:Askar FMA180pro, SkyWatcher鏡筒の多く)

デジタル一眼レフカメラ

各社で名称が異なりますが、「M48カメラアダプター」あるいは「M48大型Tリング」などと呼ばれるリングを使用します。多くの場合でバックフォーカスが55mmとなるようになっています。具体的には

Sky Watcher M48 カメラアダプター

笠井トレーディング M48大型Tリング

等が使用できます。

 

【天体用CMOSカメラ / キヤノンニコンマウント経由】

M42接続の時と同様に、「M48カメラアダプター」と「マウントアダプター」を併用します。

 

【天体用CMOSカメラ / 全ネジ接続】

M48ネジからカメラまでの全ての接続をねじ込みで行う場合、カメラ自身のフランジバックに応じて適切な長さの延長筒を使用する必要があります。代表的なものをこちらにまとめました。

フランジバックが12.5mmのCMOSカメラの場合、

笠井トレーディングT2延長等セット(20mm+5mmを使用) 

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

フランジバックが17.5mmのCMOSカメラの場合、

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

ZWO M42→M42エクステンダーリング(21mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

 

【天体用CMOSカメラ /  31.7スリーブ差し込み】

以下に代表的な例をご紹介します。

フランジバックが12.5mmのCMOSカメラの場合、

笠井トレーディングT2延長等セット(20mm+5mmを使用) 

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

でバックフォーカスが55mmとなります。

フランジバックが17.5mmのCMOSカメラの場合、 

ZWO M42→M48エクステンダーリング(16.5mm)

MOREBLUE TP521 M42*0.75→1.25inホルダー変換アダプター(20mm)

・スリーブの厚み(1.5mm)

でバックフォーカスがほぼ55mmとなります。

 

3-1. タカハシ規格(システムチャートでカメラマウントDX-WRを使用する場合 / M54ネジ・バックフォーカス56.2mm)

デジタル一眼レフカメラ

システムチャート通り、カメラマウントDX-WRをご使用ください。ただし純正品はEOS用(キヤノンEFマウント)ニコン用(ニコンFマウント)しかご用意がありません。その他のカメラを使う場合はスターベースオリジナルの"相当品"をご用意しています。

 

【天体用CMOSカメラ / キヤノンニコンマウント経由】

「カメラマウントDX-WR」と「マウントアダプター」を併用します。EOS

キヤノンEFマウント)とニコン用(ニコンFマウント)のどちらでも可です。フィルタードロワー付きのマウントアダプターもあります。

 

【天体用CMOSカメラ / 全ネジ接続】

冷却タイプやセンサーの大きなカメラ(代表例としてM42接続・フランジバック17.5mm)に限ってご説明いたします。上図のようにタカハシ接続リングM54-M48を用いて接続すれば全てネジ込みによる接続で、バックフォーカスをほぼ完璧に一致できます。21mmリング16.5mmリングはそれぞれフィルターホイールやオフアキシスガイダーに置き換えできます。当店ではそれぞれのシステムチャートを、カメラの商品ページでご紹介しています。

 

【天体用CMOSカメラ /  31.7スリーブ差し込み】

鏡筒のシステムチャートには補正レンズを使用した際の眼視接続図が載っていることがありますが、アイピースとカメラは差し込み端面から焦点面までの距離が異なるため、システムチャートのアイピースをカメラに置き換えるだけでは無限遠にピントが合わなかったり、仮にピントが合っても結像性能が損なわれることがあります。

ここまでにご説明した内容を参考に、適当なリングを使用してバックフォーカスを整えてご使用ください。例えば、タカハシ接続リングM54-M48を用いて鏡筒後端をM48オス化することで、2.のスリーブ差込みの場合と同様の構成でスリーブ差込みが可能になります。

 

 

3-2. タカハシ規格(システムチャートでカメラマウントDX-60Wを使用する場合 / M52ネジ・バックフォーカス56.0mm)

デジタル一眼レフカメラ

システムチャート通り、カメラマウントDX-60Wをご使用ください。ただし純正品はEOS用(キヤノンEFマウント)とニコン用(ニコンFマウント)しかご用意がありません。その他のカメラを使う場合はスターベースオリジナルの"相当品"をご用意しています。

 

【天体用CMOSカメラ / キヤノンニコンマウント経由】

「カメラマウントDX-60W」と「マウントアダプター」を併用します。EOS

キヤノンEFマウント)とニコン用(ニコンFマウント)のどちらでも可です。フィルタードロワー付きのマウントアダプターもあります。

 

【天体用CMOSカメラ / 全ネジ接続】

冷却タイプやセンサーの大きなカメラ(代表例としてM42接続・フランジバック17.5mm)に限ってご説明いたします。上図のようにタカハシ-ZWO接続リング60Wを用いて接続すれば全てネジ込みによる接続で、バックフォーカスをほぼ完璧に一致できます。21mmリング16.5mmリングはそれぞれフィルターホイールやオフアキシスガイダーに置き換えできます。当店ではそれぞれのシステムチャートを、カメラの商品ページでご紹介しています。

 

【天体用CMOSカメラ /  31.7スリーブ差し込み】

3-1の場合と同様に、システムチャートのアイピースをカメラに置き換えるだけでは無限遠にピントが合わなかったり、仮にピントが合っても結像性能が損なわれることがあります。

ここまでにご説明した内容を参考に、適当なリングを使用してバックフォーカスを整えてご使用ください。例えば、タカハシ-ZWO接続リング60Wを用いて鏡筒後端をM48オス化することで、2.のスリーブ差込みの場合と同様の構成でスリーブ差込みが可能になります。

 

 

4.ビクセン規格

現状では、通常の市販品によって全ネジ接続でつなぐことはできません。

直焦ワイドアダプター60または直焦ワイドアダプター60DXを用いてカメラマウント化し、一眼レフ(EFマウント/Fマウント)の場合は直接カメラを、CMOSカメラの場合は対応するカメラマウントアダプターを用いて接続することで、バックフォーカスを合わせることが可能です。

 

 

このブログ記事は、おそらくこれまでで最も長く、複雑な内容であったかと思います。ここまでお読みくださりありがとうございました。皆様が正しいバックフォーカスで各種機材を接続し、光学性能をフルに活かして、素敵な天体写真を撮ったり電視観望体験をしていただけることを願っております。