スターベース東京のブログ

スターベース東京のブログです。店頭の様子や機材情報を中心に書いていきます。不定期更新。

【Askar FMA180】35mmフルサイズ対応! 小型で多用途な撮影用鏡筒

Askar FMA180 + Canon EOS6D(SEO-SP4) ISO-1600 4分×30枚

 

Askar FMA180 は口径40mm / 重さ約600g(台座を含む)で、片手に載るほどコンパクトな鏡筒です。全系で6枚(対物3枚+付属補正レンズ3枚)の構成で、35mmフルサイズカメラに対応するイメージサークルΦ44mmを有しています。焦点距離は180mmと天体望遠鏡としては短いですが、その分小型の架台に載せたり気軽に使えるメリットがあります。

今回はこちらの鏡筒を試用する機会がありましたので、撮影結果をご紹介したいと思います。

 

 

Askar FMA180 + Canon EOS6D(SEO-SP4) 1枚撮って出し

同 等倍切り出し

Askar FMA180 + Canon EOS6D(SEO-SP4) フラット画像

 

この日は上空の気流が落ち着いていたこともありますが、FMA180は小口径・短焦点でシーイングの悪影響を受けにくい性質を持っており、星像はとても小さく引き締まって写ります。明るい星にくさび状の切れ込みやヒゲ状の光条が入りにくいようで、今回のように1等星が画面中心から外れたところにあるような構図でも星の形を綺麗に写しとめられます。

撮影用としては税込6万円強という価格でこれだけのハイパフォーマンスが得られる、大変お買い得な製品だと感じました。

 

FMA180 スポットダイアグラム。中心と35mmフルサイズの最外部(横構図の場合)に対応しています。画像全体でほとんど均一な星像が得られることが読み取れます。各々の正方形の一辺は200μmなのでタカハシが公開しているデータ(同100μm)とは異なります。

 

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FMA180の接続等をご紹介します。

 

まずは撮影状態です。鏡筒側はこのように組み上げます。写っているのは全て「FMA180」に含まれています。※このほかにも31.7アダプター等がさらに付属します。

 

この状態では後端がM42オスになっています。適正なバックフォーカスはこの端面から55mmで、これは市販のTリング+デジタル一眼レフ 等でぴったりになる距離です。

 

鏡筒側の筒外径が50.8mmより小さいため、たとえばZWOの冷却CMOSカメラなどをM42接続しようとすると、システム上で登場する「M48-M42アダプター」が端面で固定できず奥まで潜り込み、リング接続が設計光路長と異なってしまいます。このようなカメラを使う場合も一旦Tリング(Tマウント)でカメラマウントに変換し、マウントアダプター経由でカメラを取り付けることを推奨いたします。

 

今回はケンコー「Tマウント キヤノンEOS用」を使いCanon EOS6D (IR改造) を取り付けました。さらに、作例取得なので念のためオートガイド一式も取り付け、全体で1つのビクセン規格アリガタに載るような構成として撮影に臨みました。この写真ではEOS6DではなくEOS KissX5を取り付けています。
※FMA180にはアルカスイス互換とビクセンファインダー互換のアリガタが付いていますので、それらをダイレクトに活用することもできます。今回はビクセン互換アリガタの底面に設けられた1/4インチネジ穴を利用して銀色のアリガタへ取り付けました。

 

ピント合わせは対物レンズ部のヘリコイドで行います。動きは適度に重く、精密なピント合わせを行いやすいと感じます。構造上ごくわずかに傾きを生じる可能性もありますが、像質への影響はあまり気になるレベルではありません。鏡筒を軽量に仕上げるためにはラックピニオン等の接眼部ではなくこうしたヘリコイドを採用するのはベストチョイスだと感じます。ヘリコイド側面にはピントロック用の手回しネジがあります。



実際に無限遠にピントを合わせる場合は問題ありませんが、ヘリコイドを最も繰り込んだ状態ではアルカスイスプレート部分とヘリコイドが干渉します。ぶつけないように気を付けましょう。

 

対物フードの先端には48mmフィルターが取り付けられます。ただし単にフィルターを取り付けるだけでは迷光に対して極端に弱くなってしまうので、内側につや消し処理を施したM48延長筒などを別途ご用意のうえフードを設けるようにしてください。※フィルター追加はゴースト等の発生する可能性を高めます。あらかじめご了承ください。

 

以上です。ご検討を宜しくお願いします!

 

 

iOptron GEM28赤道儀で天体写真を撮ってみました(2/2)

こちらの記事は前回の記事

starbase.hatenablog.jp

の続きになります。

 

前回の記事ではiOptronの赤道儀のラインアップや選び方、夜間の集合住宅でも安心して使える静音性、独特の粗動固定機構などをご紹介しました。気軽に持ち出して星空観察を楽しむような用途ではコストパフォーマンスの高い製品群だと思います。しかし、たとえば長時間露出を掛ける場合や、搭載可能重量に収まっているとはいえ長焦点の鏡筒を載せて天体写真を撮るようなケースでは、どのくらいの性能があるのでしょうか。カタログスペックからは分からないそのような「実性能」を、本記事ではご紹介したいと思います。

 

今回は弊店展示機のGEM28赤道儀(光学極軸望遠鏡仕様、1.5"三脚)にタカハシ Mewlon180C鏡筒一式を載せ、天体写真撮影を行いました。

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赤道儀:GEM28赤道儀(光学極軸望遠鏡仕様、1.5"三脚。搭載可能重量約12.8kg)

光学系:Mewlon180C鏡筒 + Mフラットナーレデューサー (合成焦点距離1760mm F9.8)

カメラ:ZWO ASI294MM Pro + OPTOLONG Hα 7nm ナローバンドフィルター

その他:ミューロン用アリガタL + QHY Mini Guide Scope + QHY 5L-II-M + PHD2 Guidingでオートガイド。鏡筒側一式で約7.5kg。一方、ウェイト側は標準付属のバランスウェイトに加えて ビクセン バランスウェイトWT1.9kg を追加。

撮影対象:M42(テストを行ったのは1月上旬で、ほぼ南中していました)

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赤道儀の搭載可能重量に対して6割程度の搭載ですが、焦点距離が長く、わずかなブレでも星像に影響してしまうシビアなテストです。逆にこの組み合わせできちんと追尾ができれば、焦点距離400-800mm程度の屈折望遠鏡で撮影する分には問題ないと思います。赤道儀は事前にPHD2 Guidingのドリフトアライメント機能を使って厳密に極軸を合わせています。(所要時間 15分ほど)

 

◆風速1-2m/sの場合

テスト日の前半は風が弱く、撮影には好条件でした。オートガイドのグラフはこちらです。

GEM28 風速1-2m/s ガイドテスト

なお中央上部に横長のアイコンが出ていますが、これは撮影場所に置いたPC(Windows10 Pro)をiPhoneから遠隔操作していたためです。RD Client というアプリを使いました。

 

青色は赤経軸です。ずれが生じるとただちに修正信号が伝達され、すぐに適正位置へ復帰しています。オートガイドの反応としては完璧です。赤色の赤緯軸は原理的にバックラッシュがありますので、修正方向が逆転する際(ガイドグラフの中央やや右など)には修正信号がギアに伝達されるまでに信号数回分のタイムラグが発生していることが分かります。とはいえ極軸をある程度しっかり合わせていれば、タイムラグ中にガイドずれが増大していく量はごくわずかで、実用上は問題ありません。(※適切な設定を行えばバックラッシュを減らす/無くすこともできます。)

この結果を見る限り、GEM28赤道儀のガイド信号に対する挙動は良好です。

赤緯軸のバックラッシュはギア伝達式の赤道儀では避けられないものです。オートガイドを行った結果として星が丸く写れば問題ありません。

 

実際の撮影結果も見てみます。

1コマ画像(露出1分)

 

トラペジウム付近を強拡大して厳しく見てみます。

1分露出を繰り返した結果

1コマ1分の露出を繰り返したところ、この日は約75%のコマで完璧な点像が得られましたが、残りの約25%は星像がやや流れてしまいました。対応するガイドグラフを見ると、突発的にどちらかの軸でガイドグラフが「跳ねる」シーンがありましたので、それに対応しているようです。

※とても厳しく見ていますが、合成焦点距離1760mmの長焦点でこれだけしっかりしたオートガイドが出来ているということは誤解なくお伝えしたいと思います。仮に焦点距離500mm前後の鏡筒であれば、右側「やや流れた」の追尾状態であっても星像はほとんど点として見えることでしょう。個人的には、上の「やや流れた」の程度であれば「ガイド完璧」の画像と一緒にコンポジットに使用してしまいたいくらいです。

 

1分露出×30枚コンポジット

上で「ガイド完璧」としたようなコマを30コマコンポジットしました。ここではデータサイズの都合で掲載できませんが、等倍で見ても星は円形の像を保っています。風が強くなければ、GEM28 + Mewlon180C での銀河星雲撮影もできそうです。

 

 

◆風速4-5m/sの場合

テストを進めるうちに風が強くなってきました。その時のガイドグラフです。

GEM28 風速4-5m/s ガイドテスト

風の強さや向きが変わるタイミングで、三脚~赤道儀~鏡筒のどこか、あるいは複数個所でしなりが発生しているようです。GEM28は比較的軽量で持ち運びしやすいのも魅力ですが、風が強い環境では限界があります。そのような厳しい状況下で天体写真撮影の成功率を高めようとすると、やはり、大きく重く頑強な(言い換えれば「一クラス大きな」)赤道儀が求められます。

ガイド信号はしっかり効いていて、やや暴れながらもガイド星は基準位置にとどまり続けているものの、やはり「跳ね」の部分で星像がいびつになってしまうので、星が完全に円形に写ったコマはほとんどありませんでした。

 

 

◆参考:風速3-4m/s 90S赤道儀の場合

90S赤道儀 風速3-4m/s

その後、同じ鏡筒一式を手持ちのタカハシ90S赤道儀(他社製2軸駆動モーターへ換装)に載せて、同様のガイドテストを行いました。この時の風速は3-4m/s程度でしたが、「跳ね」もしなりもほとんどなく、ガイド信号の発せられる頻度がGEM28より格段に減っています。

これはギアの加工精度や、赤道儀と三脚がそれぞれGEM28に比べ一回り以上大きく重いことが効いていると思います。持ち運びをあまり考えなければ大きく重い赤道儀が良いですが、移動が大変で使う頻度が減ってしまっては本末転倒なので、ご用途に合わせて大きさと安定性のバランスを判断することになるかと思います。

 

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GEM28はベランダで使いやすい静音性や高い可搬性と操作性を持ち合わせたコストパフォーマンスの高い製品ですが、風が強い環境では、大きく重い赤道儀と同じような安定性を求めることは難しそうです。とはいえ一般的な天体写真撮影の環境(風速1-2m/s程度)であれば、長焦点の反射望遠鏡を載せてもしっかりオートガイドで撮影が出来ることが分かりました。短~中焦点の小型屈折望遠鏡を載せる場合は、ガイドエラーに対してより寛容になりますので、撮影の成功率は一層上がることが期待できます。

皆様の赤道儀選びのご参考になれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

【Askar FRA500】均一な星像・豊富な周辺光量が魅力の撮影用鏡筒!

Askar FRA500 + Canon EOS6D(SEO-SP4) ISO-1600 4分×36枚

 

Askar FRA500 は口径90mm/焦点距離500mm(F5.6)の5枚玉アストログラフです。タカハシのFSQシリーズのように鏡筒本体だけで周辺像が補正されています。鏡筒の他にM48カメラマウントだけを追加すれば、まずは撮影を始められます。

イメージサークルはΦ55mmです。35mmフルサイズ(対角44mm)を余裕でカバーし、富士フイルムのGFX(同55mm)まで対応しているので、1つの銀河や星雲を対象とした撮影に限らず、大きなセンサーのカメラで星空の華やかな領域を一網打尽にするのにも適しています。

今回はこちらの鏡筒を試用する機会がありましたので、撮影結果をご紹介したいと思います。

 

Askar RFA500 + Canon EOS6D(SEO-SP4) 1枚撮って出し

同 等倍切り出し

Askar FRA500 + Canon EOS6D(SEO-SP4) フラット画像

 

ご覧の通り35mmフルサイズの全域で星像の大きさはほどんと変わりません。明るい星には軽微な青ハローが生じますが、これは設計性能のとおりです。ピント合わせの際にはFSQ-85EDP等で感じるようなピントの「鋭さ」=ベストピントの瞬間に恒星がギュッと引き締まり明るく見える現象、はありませんでしたが、FRA500の持つ

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・画像全体でほぼ完全に均一な星像が得られる

・周辺光量が豊富である

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という特長は、画像処理を進めやすいので大きな魅力だと思います。

※FRA500は画角周辺にある明るい星にビネッティングによるクサビ状の回折が発生しにくく、綺麗に円形に写ります。青ハローは画像処理で軽減できます。

 

5/15追加。 今回の試写では諸事情により標準想定のリングが使用できず、急遽別のカメラマウントで接続していました。結果として周辺減光が改善されていたようです。

 

FRA500 スポットダイアグラム。左上=画像中央、中央上=APS-Cの周辺あたり、左下=35mmフルサイズ周辺です。周辺像では青いハローが内側に寄ることが読み取れます。円の直径が200μmなのでタカハシが公開しているデータ(正方形の一辺が100μm)とは異なります。

 

ただし上のスポットダイアグラムで分かるように、FRA500の魅力は像質の均一性にあり、恒星が"超シャープ"に結像する…というタイプの製品ではありません。星像が限界まで小さく結像すること、高倍率眼視でのシャープネスなどを求める場合には、より高価ですが FSQ-85EDP + フラットナー1.01× FSQ-106EDP のような製品もご検討ください。

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さて、このFRA500ですが、実際に天体写真に使ってみると「使いやすい」と感じる部分が多くありました。

 

・まずは鏡筒バンドとロスマンディ互換のアリガタ、持ち運び用の金属ハンドルが標準で付属している点です。アリガタをビクセン互換のものに交換する場合はこちらのような長穴タイプが便利です。長穴を使った固定ではバンド1本につき1点のネジ固定となりますが、それでも強度面では十分です。

バンド側面には多数のM6ネジ穴が配してあり、アクセサリーの取り付けに便利です。

 

・接眼部にはカメラ回転装置とマイクロフォーカサーが標準付属します。カメラ回転装置は回転時に「シュー」というすり合わせ音が小さく聞こえますが、面と面がしっかり触れて回転しているので、スケアリングへの悪影響は無く安心です。マイクロフォーカサーはガタやアソビも無くスムーズです。

 

・ドロチューブの固定ネジは底部ピニオン軸の箇所にあります。固定ネジは鏡筒の中央から左右のどちらかにずらした場所に取り付けられます。握り部分の小さいネジですが、固定力は十分です。ドロチューブの動きはなめらかで、しっかりしています。

 

・対物フードはスライド式です。移動時にはコンパクトにできます。最も伸ばした状態でもフードがあまり長くなりませんが、通常の迷光防止には十分かもしれません。これは他の鏡筒にも共通して言えることですが、夜露のひどい時期には延長フードやヒーターを取り付ければ安心です。

対物フードを最大まで伸ばした状態。

 

・接眼部のリングには内側につや消し塗装が施してあります。内面反射が少なく安心です。

 

このようにユーザーフレンドリーな設計が各部にみられ、とっても使いやすいなと感じました。しかも各部はきちんと組立調整されていて、開梱してそのままフィールドに持ち出せばいきなり高品質な天体写真が撮影できます。製品としての仕上がりが良く、ユーザーが「頑張る」箇所が少ないのが魅力だと思います。

 

ガイド鏡などを載せるのに使うビクセンファインダー互換アリミゾは、固定ネジにローレット(側面のギザギザ加工)がありませんでした。先日の試写では-10℃近くまで冷え込み、きちんと締めたり緩めたりできるか心配でしたが、実用上は大丈夫でした。

 

 

4月2日(土)より店頭販売を再開いたします。

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明日4月1日(金)までは店頭休止ですが、4月2日(土)より上記スケジュールで店頭販売を再開いたします。状況によって入店制限を設ける場合もございます。引き続き通信販売も併用ください。ご不便をお掛けしてしまい申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。

【ZWOのカラー冷却CMOSカメラ】 機種ごとの特徴・選び方のご紹介です

こちらの記事ではZWO社の冷却CMOSカメラについて、現在(2022/03)取り扱いのある機種の一覧と、それぞれの(スタッフの思う)オススメポイントをご紹介します。文字が多く長めの記事となりますがよろしくお願いします。

 

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この記事をご覧いただいている皆様は、すでに冷却CMOSカメラをお使いでしょうか?街中でもよく見かけるデジタル一眼レフカメラとは操作インタフェースが大きく異なっているので、「扱いにくそう」という印象をお持ちの方も多いのではないかと思います。一方で、天体写真が好きな方々は、冷却CMOSカメラで撮影された天体写真を見る機会がかなり多くなってきているのではないでしょうか。

背景として、以前はCMOSセンサーではなくCCDセンサーが利用されていたり、一眼レフカメラに冷却装置をつけるような改造を施す、といったことが主流だったのですが、冷却CCDカメラや改造に必要な費用がかなり高額になってしまうこともあり、なかなか多くのお客様へ浸透するには至りませんでした。しかし、現在ではCMOSイメージセンサーの主流になってきたことによって、天体用冷却カメラの価格は以前よりもかなりお求めやすくなりました。

では、そもそもなぜ天体写真に冷却カメラを利用するのかというと、①センサーを冷却することで撮影時に発生する(熱に起因する)ノイズが減少すること、②センサーの温度を一定に保つことによって正確なダークノイズ減算が可能となること、③デジタル一眼レフカメラに備わっている固有の画像処理エンジンを通さない、受光に対する素直な応答としての画像を得られること、などが挙げられるかと思います。特にDSO撮影の際には②や③の事項に関して、通常のデジタル一眼レフカメラでは基本的に絶対に実現できない、非常に大きなメリットを享受することができます。

 

では前置きはこれくらいにして、実際の冷却CMOSカメラの紹介をいたします。

市販の冷却CMOSカメラにはカラーカメラとモノクロカメラがありますが、カラーカメラの長所はなんといってもフィルター交換の手間を省けることにあります。モノクロカメラでカラー画像を得るためには、複数のフィルターを使ってそれぞれ撮影した画像に色を割り振って合成する必要がありますが、カラーカメラであれば最初からカラー画像が生成されますので、そのあたりがとっても楽です。

・たまにしか遠征できないので現地で苦労したくない

・まずはセンサーを冷却できるメリットがあれば十分

という場合にはお勧めです。ただし、カラーカメラではすでに各画素にRGBの色が割り振られていますから、例えばSAO合成(いわゆるハッブルパレット)のように、通常の可視光の色合いから大きく外れた画表現は苦手です。またεシリーズのようにFが極めて明るかったり、FSQシリーズのような小口径でシャープな鏡筒と組み合わせる場合は、モノクロカメラのほうが高解像度な結果を得やすくなります。

 

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ZWO社のラインアップを見てみましょう。

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現在のZWO社冷却CMOSカラーカメラのラインアップ

 

センサーサイズの小さい方から、それぞれの特長とお勧めポイントをご紹介します。

 

A.    ASI183MC Pro / 税込104,600円
センサーが小さいために他のカメラよりもクローズアップ撮影の効果があり、たとえばFS-60CB + レデューサーC0.72×(焦点距離255mm)と組み合わせるとアンドロメダ銀河が対角いっぱいに写ります。このようにカメラレンズや小型の屈折望遠鏡、εシリーズ鏡筒などを使って主要な銀河や星雲を大写しにしたいような場合に活躍します。各ピクセルが極めて狭い間隔で配置されているので画素数Canon EOS6D(フルサイズ一眼レフ)とほぼ同じくらいあり、これはA3プリントでも十分鑑賞できるほどです。ただし各ピクセルが小さい=ピクセルごとの受光面積が小さいので、Fが暗くて長焦点のシュミットカセグレンなどよりもFの明るい短焦点εシリーズなどのほうが(センサーへ届く光の密度が高くなるので)相性が良いと言えます。
<こんな方にオススメ>
・カメラレンズ / 小型屈折望遠鏡 / εシリーズなどで、主要な天体をクローズアップで高精細に撮影したい

 


B.    ASI533MC Pro /税込117,700円
正方形センサーを採用したユニークなカメラです。ピークQEは80%で、これはカラーカメラとしてはセンサー感度が優秀であることを示しています。上のASI183MC Proとはセンサー形状は異なりますが面積は同程度です。ASI183MC Proと比べると画素数がやや控えめ(各辺3008ピクセル)で、大伸ばしプリントよりはPCやスマホの画面で表示させるのに向いているスペックです。が、その分1つひとつのピクセルにはたくさんの光が届きますので、例えばF7-8前後の屈折望遠鏡などで淡い星雲のクローズアップ撮影に用いたり、F10前後のカセグレン式鏡筒で系外銀河を狙ったりするのには向いています。画素数が少なめ(約905万画素)なのでPCへの負荷も少なく、多数枚コンポジットなどの画像処理を進めやすいのも魅力です。
<こんな方にオススメ>
屈折望遠鏡やFの暗いカセグレン式鏡筒などで、見かけの小さい天体を大写しにしたい

 


C.    ASI294MC Pro / 税込130,799円

ZWOのカラー冷却CMOSカメラでは現状で唯一マイクロフォーサーズセンサーを搭載した製品です。広いダイナミックレンジを有しています。APS-Cやフルサイズの大センサーモデルよりもお求めやすい価格が魅力です(フィルターも2”/50.8mmではなく1.25”/31.7mmサイズで十分ですのでこのあたりも安価にできます)。短焦点の鏡筒と組み合わせてメジャー天体を大写しにするのにも、長焦点のカセグレン式鏡筒と組み合わせて見かけの小さな天体をクローズアップ撮影するのにも使いやすく、総合的にとてもバランスの取れた製品です。
<こんな方にオススメ>
・さまざまな面で使いやすい、バランスの良い機種で冷却デビューしてみたい

 

★システムチャート★

ここまでの3機種のシステムチャートとオプションパーツのご紹介です。

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ZWO ASI183MC / 533MC / 294MC のシステムチャート

■これらの機種は、標準状態では可視光の外側の波長も取り入れてしまいますので、通常のカラー画像を撮影する場合でも「IR/UVカットフィルター」をご利用ください。特別な理由がない限りノーフィルターで使うことは無いと思います。

 

■フィルターの取付方法はさまざまにありますが、

1枚だけ(たとえばIR/UVカットフィルターだけ等)をつけっぱなしでよい場合はセンサー保護ガラスの直前に31.7mm(1.25")ネジ式フィルターを、または上の図中で矢印で示したさまざまな箇所に48mm(2")ネジ式フィルターを取り付けられます。

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例)ASI294MC Pro センサー保護ガラス直前に31.7mm(1.25")ネジ式フィルターを取り付ける場合。上記3機種に付属の「T2→1.25インチフィルターアダプター」を併用しています。この状態でも黒リング内側のM42メスネジが使えます。

複数枚のフィルターを交換しながら使いたい場合は、上記の箇所で毎回ネジ込みを行って着脱できます。それが面倒に感じる場合、フィルタードロワーM42Newフィルタードロワー付マウントアダプターは、フィルターをはめ込んでおく(フィルターホルダー)のみでも追加購入いただけますから、これを複数用意しておけば着脱が簡単に行えます。電動フィルターホイールは図中に記した3種類が使えます。撮影のリモート化を行う場合はこれらが便利です。

※ASI294MC Proでは、F5を切る明るい光学系で電動フィルターホイールを使う場合、ケラレの観点から31.7mm(1.25")フィルターではなくΦ31mmまたはΦ36mmの枠なしフィルターをご利用ください。

 

オフアキシスガイダーは図の位置に取り付けられます。ガイドカメラはZWO ASI462MCのような形状のものは直接ねじ込んで、内部のプリズムの差し込み深さを変えることでピントを合わせます。ASI120MM miniのような筒状のものも同様に差し込めますが、こちらは本体を奥まで差し込める分ピントに余裕があり、ヘリカルフォーカサーを併用できるのでピント合わせが楽になるというメリットがあります。

 

 

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続いてAPS-C以上のセンサーのカメラです。

 


D.    ASI2600MC Pro / 税込261,700円
ASI294MC Proよりも一回り大きなセンサーを持つ製品です。天体撮影に初めて取り組む方の多くが Canon EOS KissシリーズなどのAPS-Cデジタル一眼レフカメラをお使いであったことと思いますが、本製品はそれらと同じAPS-Cサイズのセンサーで、しかもモノクロではなくすぐにカラー画像を得られますから、ある意味ではデジタル一眼レフカメラで培った「慣れ」がかなり通用するとも言えます。Φ30mm程度のイメージサークルを持つ鏡筒であれば周辺まで良像を得られるため、フルサイズのカメラよりも対応鏡筒が多く存在しているのも魅力です。デジタル一眼レフカメラからのスムーズなステップアップをしやすい製品です。
<こんな方にオススメ>
デジタル一眼レフカメラとなるべく近い感覚で、冷却カメラに移行して撮影を続けたい

 


E.    ASI071MC Pro / 税込193,700円
こちらも上のASI2600MC Proと同じAPS-Cセンサー機ではありますが、感度面ではより新しいASI2600MC Proに一歩譲ります。価格のアドバンテージを活かして周辺パーツをきっちり揃えたりしやすいのが魅力です。
<こんな方にオススメ>
・なるべく低価格でAPS-Cセンサーの冷却CMOSカメラが欲しい

 

★システムチャート★

APS-C機のシステムチャートです。

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ZWO ASI2600MC / 071MC のシステムチャート

■これらの機種には黒色の「センサーチルトアダプター」(スケアリング調整リング)が赤色のカメラ本体に標準で取り付けられています。押しネジと引きネジを使って取り付け面の傾きを微調整できます。出荷状態ではほとんど調整する必要はないと思いますが、全系のどこかでわずかな片ボケ等が発生してしまう場合には、この部分で調整ができ便利です。

■フィルターホイールは7×36IIの他、2"(48mm)のものを使用することもできます。

 


F.    ASI2400MC Pro / 税込458,000円
35mmフルサイズセンサーを搭載した製品です。画素数は2454万画素と大伸ばしプリントにも十分で、しかも比較的ピクセルサイズが大きいためダイナミックレンジは極めて広く、恒星の輝きから星雲の非常に淡い部分まで、輝度差の大きいエリアの撮影には最適なカメラです。下でご紹介するASI6200MC Proに比べると撮影画像1枚あたりのファイルサイズが小さい(16bitFITS で約110MB→約45MB)ので扱いやすいのも魅力です。また、気流の影響を受けやすい大口径・長焦点の鏡筒と組み合わせて使う場合には超高画素のASI6200MC Proではオーバーサンプリングになってしまうこともありえるので、敢えてこちらのASI2400MC Proを使うことで価格面とデータサイズ削減の点でメリットがあります。
<こんな方にオススメ>
・扱いやすいフルサイズカラー冷却CMOSカメラが欲しい

・大口径や長焦点の鏡筒と組み合わせで銀河や星雲を狙いたい

 

★データ例★

ここで一つデータの例をご紹介します。下の画像で、左はASI2400MC Proでの画像(こちらの記事でも紹介したM31のデータです)、右はCanon EOS 6Dでの画像になります。どちらもピクセル等倍、またコンポジット後に微調整をしています。光学系や撮影時の状況が違いますので単純な比較はできませんが、6Dでのデータではダーク減算を行ってもコンポジット後に画像全体にノイズによる縞状の模様が出てきてしまいました。天体撮影時とダーク画像撮影時のカメラのセンサー温度が一致していなかったことが主要因であると思われます。他方、ASI2400MC Proのデータではこのような模様やノイズがひじょうに少なくなっています。冒頭でも述べました通り、冷却CMOSカメラの「センサー温度を一定に固定できる」という強みが活きて、正確なダーク減算が画像素材に一定の効果をもたらした例と考えることができます。

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左:TOA130NS+ASI2400MC Pro+UV/IRカットフィルター, 右:FS-60CB+Canon EOS 6D+Hαフィルタ

 

G.    ASI6200MC Pro / 税込523,500円
こちらも35mmフルサイズですが、長辺が約10000ピクセルとなる圧倒的な高画素が最大の持ち味です。一般的なカメラではアンダーサンプリング気味になりがちな鏡筒(FSQ、εなど)と組み合わせることで、これまではモザイク合成によってしか得られなかった高精細&超高画素数の撮影が可能になります。1枚あたり約110MBとなる元画像の大きさ、センサーが大きいことに由来する周辺減光の影響増大などは避けられませんが、それでもこのカメラでしか撮れないものが明確にありますので、ご用途と一致している場合には本当にお勧めです。
<こんな方にオススメ>
・シャープな短焦点鏡筒と組み合わせて、超精密なカラー写真をカラー合成無しに撮りたい

 

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★システムチャート★

フルサイズ機のシステムチャートです。

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2400MC / 6200MC のシステムチャート

■「センサーチルトアダプター」(スケアリング調整リング)は標準付属です。

■センサーサイズが大きいため、フィルターホイールは2インチのもののみ使用可です。

 

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まとめです!

ここまで文章がかなり多くなってしまいましたが、最後に簡単なフローチャートの形で、ZWO社のカラー冷却CMOSカメラの選び方を描いてみました。

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ZWO社のカラー冷却CMOSカメラの選び方フローチャート

 

それぞれのカメラ名の下には一言でメリットを書いてみましたが、それらのメリットや本ブログ記事でご紹介したオススメのポイント以外にも、カメラには様々な個性がございます。より具体的に、「〇〇のような望遠鏡を使っており、○○のような天体を撮影してみたいが、最適なカメラは何か?」といったご相談は是非スターベース東京までお問い合わせください。

ZWO社のモノクロ冷却CMOSカメラについても、次回以降のブログ記事でご紹介予定です。ご期待ください!

 

AR(拡張現実)多機能デジタルファインダー!?「アストロイド」を使ってみました

筆者(スタッフS)は自宅からの天体写真撮影にタカハシ90S赤道儀(非自動導入機)を使っています。思い入れのある赤道儀なのでこれからもずっと使い続けるつもりではありますが、Mewlon180C + Mフラットナーレデューサー + ZWO ASI294MM Pro のメイン撮影システムでは画角がわずか0.31度×0.21度となり、天体の導入になかなか時間が掛かってしまいます。ファインダーで直に見えたり、目立つ星の並びを追いかける「スターホッピング」で導入できる対象ならば良いのですが、市街地ではそれが通用しないケースも多くあります。そのような場合、これまではあらかじめ近くの明るい恒星と目標天体との座標を調べておき目盛り環を使って導入していましたが、目盛り環の最小目盛りは2度(赤緯)/2.5度(赤経)なので、正直、このような長焦点撮影では結構キツイです。

同じように天体写真撮影で自動導入ではない架台をお使いの方も、多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そんな方にオススメ!な素敵な新製品がオーストラリアのDynamicDeepSKY社から発売になります。名前は「Astroid」(アストロイド)です。

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本体とファインダー規格アリガタ。(いずれも試作品)

今回その試作品をお借りすることができましたので、この記事でその魅力をお伝えしていきたいと思います。なるべく分かりやすくするために画像をたくさん入れました。読み込みが遅くなってしまったらすみません…。

※今回の画像はPCで操作したものですが、スマホでもレイアウトはほぼ同様です。

※製品版とは一部仕様が異なるかもしれません。

 

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アストロイドは一言で表すと【PCやスマホで無線操作するデジタルファインダー】です。電源に接続するとWi-Fi通信ができるようになり、PCやスマホタブレット等から操作します。

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電源はUSB Type-C(5V)です。市販のモバイルバッテリー等から給電できます。アストロイド本体には、基本的にはこの1本のケーブルしか接続しません。

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鏡筒への同架例。ここでは電源ケーブルを画面外へ伸ばしていますが、モバイルバッテリーごと鏡筒に載せてしまえばシンプルになりますね。

 

Wi-Fiのネットワーク名(SSID)は「DDS_DIRECT」です。

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iPhoneの画面です


接続には定められた初期パスワードが必要です(製品版でご案内予定です)。接続ができたらウェブブラウザで「10.10.10.10」と入力します。これでアストロイドの操作画面が表示されます。(事前にアプリ等のインストールは不要です)

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PCの画面です

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こちらが初期画面です。ご覧のとおり、かなりの広角で夜空が写せます。これだけ画角が広いので、アストロイドの取り付けはメインの望遠鏡とおおまかに方向が合っていさえすれば全く問題ありません。ファインダー調整が不要なので気楽ですね。この時はメイン鏡筒(M-180C)の下に吊り下げる格好で取り付けていたので画像がさかさまですが、これはこの後「イメージ反転」ボタンが表示されるのでそこで簡単に補正できます。

 

さて、まずは上画像の赤矢印で示した下側の2つのアイコンに注目します。

・左側の設定アイコンをクリックすると画面右上に設定ウィンドウが出ます。ここでは明るさや露出時間を設定できます。明るさを設定するとその下のゲインが自動的に最適値に変更されます。明るさは画面上で星が見やすい程度にすれば良いと思います。露出時間は0.5秒くらいでOKでした。0.5秒に設定すると、ここから先の画面は1秒間に2コマのペースでほぼリアルタイムで更新されます。

・ここでアストロイド本体の対物レンズを手で回して回転させ、星にピントを合わせます。

・右側の眼のアイコンをクリックすると向き解析(プレートソルブ)が始まります。この時は10秒ほど待ったところで解析が完了し、星ぼしに名前が自動で添えられました。眼のアイコンをクリックした際、ご覧のように下部メニューが一気に増えます。

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画面右側には+と-のズームボタンがあります。これを押すと画像サイズを変更できます。下は+を何回か押して拡大させたものです。(設定アイコンも押して右上の画面を非表示にしています)

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次に「ファインダー合わせ」を行います。アストロイドの画角はかなり広いので、メイン鏡筒の向いている方向が画角のどこかに写っていればOK…という非常にざっくりした取付で大丈夫でした。(端っこよりも画面中央付近に写っていた方が気持ち的には安心ですが…。)この段階では「メイン鏡筒が向いているのはアストロイドの写野のどの位置か」を教え込みます。この時はメイン鏡筒をシリウスに向けていましたので、画面上で「Sirius」と振られている星(プレートソルブが成功しているのでたしかにシリウスです)の位置を教える必要があります。下部アイコンの電源マークから右に6番目、○に+字のアイコンをクリックします。

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すると上のような画面になります。左下に緑色のマークが出ています。これを使って「ファインダー合わせ」をしていきます。緑色マークの真ん中の●をつかんで動かすと…↓↓↓

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このようにセンターを示す赤マークが連動して動きます。画面右側のズーム機能とこの緑マークを使って、メイン鏡筒が向いている方向に正しく赤マークを合わせます。これができたら再び下部アイコンをクリックします。これで「ファインダー合わせ」が完了です。それではこれから天体導入をしていきましょう!

 

 

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画面下部の「星を検索」アイコンをクリックします。すると画面左上に検索ウィンドウが出てきます。ここに天体名称や、番号が振られている場合には番号を入力します。上の画像では「M42」と打ち込んでいますが、今回の試作品では「42」と打つ必要がありました。するとM42やNGC42、IC42などがヒットしますので、目当てのM42を選択します。(この画面は後ほどご紹介します)

 

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するとこのような画面になります。現在の向きと目標天体の位置、導入に必要な移動量が表示されています。左下の赤字を読むと、あと右側に26.35度、上に7.309度動かせば良い…ということですね。分かりやすいです。

 

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筒先を目標の方向に近づけていくと(ここでは露出時間0.5秒にしていたので1秒に2コマのペースで)ほぼリアルタイムで画面に反映されます。対象が近づくと画面が自動的に拡大されて細かい調整を行いやすくなります。さらに近づけていくと↓↓↓

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このように画面左上に微調整用ウィンドウが追加されます。光学式のファインダーに近いレイアウトです。ここから先はこのウィンドウと、左下の赤字の補正量を見ながら追い込んでいくのが良いでしょう。ぴったり合わせられると↓↓↓

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このようになります。誤差0.4分角(土星の本体直径くらい)となっていますが、この程度であれば全く問題になりません。これで導入が完了です。念のためメイン鏡筒に取り付けたカメラの画像も見てみましょう。

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目標天体は「M42」でしたからピッタリですね。もっと視直径の小さな天体のほうが精度確認には良かったです…このあとやります。

 

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それではNGC2371に筒先を向けてみましょう。ふたご座の惑星状星雲です。これは6×30ファインダーではまず見えません。今回はメイン鏡筒は一切見ずに、ただアストロイドの画面だけを見ながら導入をしてみました。

※先ほどの補足です。上画面では「2371」で検索を掛けたので、他にも2371という文字列を含む天体たちがヒットしています。それらは検索結果を左右にスワイプすれば出てきます。

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導入完了ということになりました。それではメインカメラの方を見てみましょう。↓↓↓

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ゲイン最大、1コマ15秒のプレビュー画面で写っていることが確認できました!(中央少し上です)換算焦点距離約3500mmの長焦点でこれだけの精度で導入ができれば完璧ではないかと思います。アストロイドはこのような非自動導入架台での天体導入に大きな力を発揮してくれます。

 

 

 

【補足:使用可能な空の明るさについて】

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DynamicDeepSKY社のwebページ(https://www.dynamicdeepsky.com/astroid)よりキャプチャ

DynamicDeepSKY社の公開している参考動画ではプレビュー画面に天の川がはっきり写っています(!)羨ましいです… しかし日本の都市部などではこんなに多くの星が写りませんから、位置解析(プレートソルブ)の難易度は高くなっているはずです。今回のテストは神奈川県川崎市の光害地で行ったのですが、冬の夜空(1-2等星が多い)では全く問題なくプレートソルブが成功しました。それではもっとキビシイ条件ではどうでしょうか…?

 

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春の星空です。星が少ないですね…30秒くらい考えていましたが↓↓↓

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成功しました!

 

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もっと厳しいテストです。先ほどの方向からやや地面側に振り、地上景を多く入れると…↓↓↓

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失敗!実際とは異なる空域が表示されてしまいダメでした。このあたりが限界のようです。とはいえ、アストロイドは広角レンズを搭載しており、街明かりが強くても広範囲から基準星を探してこれるので、かなり健闘しているのではないかと思います!

 

 

 

【補足2】極軸合わせ支援機能について

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下部の「望遠鏡」アイコンを押すと極軸合わせ支援ができます。プレートソルブ機能を使って、赤経軸だけを回転させながら3度空を認識させるだけで、極軸のずれ量が分かるという便利なものです。やってみましょう。

 

まずは東の空に向けます。星が認識されるまで10-20秒ほど待ちます。

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すると赤字の「お待ちください」が緑色で「次へ」になります。そうしたら赤経軸を西側へ30度ほど回転させ、再び10-20秒ほど待ちます。

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2度めのプレートソルブが完了した状態です。さらに30度ほど西側へ振り、また待ちます。

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プレートソルブが完了しました。そして「次へ」を押すと↓↓↓

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極軸合わせをしてください…というメッセージが表示されます。「完了」を押します。

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すると、現在のアストロイドのプレビューしている空の情報を元に、北極星付近の星図が仮想的に表示されます。ここには天の北極と赤道儀の極軸の指す向きが表示されていて、これらを一致させれば極軸合わせが完了ということになります。補正量はここでも画面左下に表示されています。今回は露出時間0.5秒でしたので、ここでも1秒に2コマ、ほぼリアルタイムで情報が更新されます。

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極軸合わせが完了しました。本当に合っているかは南向きベランダなので分かりません。なのでオートガイド(PHD2 Guiding)を併用して追尾テストを行いました。その結果がこちら↓↓↓

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赤緯軸のガイド信号が一方向のみに出ているので、極軸合わせは少しずれが残っているようです。しかし結果としてこのように星を点に出来ることが分かりましたので、オートガイドを併用する天体写真撮影であれば実用上は問題ないレベルで調整できていると思います。

 

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今回は非自動導入赤道儀での天体写真撮影を念頭に置いてご紹介しましたが、他にも非自動導入の架台はいろいろあります。ドブソニアン、経緯台などでの星空観察に対しても、アストロイドはきっと活躍できることと思います。ただし1つだけ注意点があります。

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取り付け位置についてです。アストロイドのレンズは広角なので、屈折望遠鏡のファインダー位置などに取り付けるとメイン鏡筒自身がアストロイドの写野を遮ってしまいます。できるだけ鏡筒前方に取り付けて写野を広く確保するか、「ファインダー合わせ」が画面内のどこでもできる特性を活かして(何らかのアダプターで)メイン鏡筒よりやや上方に傾けて取り付ける等の工夫が必要です。上画像くらいの位置関係であれば問題なさそうです。

 

発売はもう少し先だそうです。続報にぜひご期待ください!!

こんな条件下でバラ星雲は写るのか!?各種フィルターで撮り比べてみました!

現在様々なフィルターが発売されており、どれを選べばよいのか迷われている方もいらっしゃると思います。今回は一晩に6種類のフィルター(IR/UVカットLPR-NCBPQBPDuoBandL-eXtreme)を用いて撮り比べることができましたので、その結果と光害地でフィルターを使うメリットなども含めてご紹介したいと思います。

 

・撮影結果

まずは撮影結果を並べて紹介します。それぞれのフィルターを装着し、神奈川県川崎市にてFSQ-85EDP(直焦点)を用いてバラ星雲を撮影しました。この日はほぼ満月で、撮影対象(バラ星雲)と月との離角は約21°という非常に厳しい条件でした。

撮影した画像をご覧ください。使用カメラはZWO ASI294MC ProでGain120、-15℃、60秒露出の30枚を加算コンポジット(ダーク・フラット補正済み)しました。

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撮影の様子

撮影画像 60秒×30枚 加算コンポジット (0-400000の階調で表示しています)

フィルターの透過特性によってカラーバランスが変化しています。強いフィルタを使うほどフィルタの効果によって背景の輝度値が抑えられ、バラ星雲が強調されている様子が確認できます。次にこれらの画像にステライメージ9を使用してオートストレッチとレベル調整をかけたのが以下の画像です。

(レベル調整は目視で合わせました。細かいツッコミはナシでお願いします…!)

それぞれのフィルターで星雲の写り、星の数や明るさが異なることが分かります。IR/Uカットフィルターではぼんやりとしかバラ星雲が確認できませんが、適切なフィルターを用いることで、光害が強い撮影地で対象が満月の近くにある場合でもでもこのように撮影することが可能です。

 

・フィルター使用のメリット

撮影結果からも効果はおわかりいただけると思いますが、フィルターを使用するメリットについて少し簡単に説明します。今回使用したフィルターは可視光のみを通すフィルター(IR/UVカット)、光害をカットすることを目的としたフィルター(LPR-N)、特定の波長のみを透過することを目的としたフィルター(CBP、QBP、DuoBand、L-eXtreme)に分けられます。各フィルターの効果について以下の模式図をご覧ください(あくまでも模式図ですので実際の天体スペクトルや光害スペクトルとは異なります)。

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フィルターを用いない場合

カメラには天体の光と街明かりの二つが同時に入射します。図に示したように、輝線星雲は特定のスペクトルで輝いていて、銀河や反射星雲は連続波長で輝いています。フィルターを用いない場合、天体と街明かりを単純に加算した値がカメラに記録されます。

 

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UV/IRカットフィルターを用いた場合

一般にCMOSセンサーは可視光以外の波長に対しても感度があります。天体用CMOSカメラでは可視光波長のみを捉えるためにIR/UVカットフィルター等を使用します。(通常のデジタルカメラでは内蔵されていることがほとんどです。)IR/UVカットフィルターを使用した場合、可視光波長の光のみが記録されます。

 

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「光害をカット」するフィルター

次に「光害をカット」するフィルターを使用した場合です。フィルターの特性によりますが、このようなタイプのフィルターでは街明かりの多くを占めているような波長(LEDや蛍光灯など)を重点的にカットします。銀河や反射星雲の光も一部カットされますが、街明かりの影響の多いところを効果的にカットしているのでフィルター未使用の場合と比べると対象の写りがよくなります。しかし、光害が強い場所では対象のコントラストを劇的に向上させる効果は見込めません。

 

「輝線を透過」するフィルター

最後に「輝線を透過」する強めのフィルターを使用した場合です。目的波長の付近だけを透過し、それ以外の波長はほとんどカットされます。このようなフィルターは輝線星雲など特定の波長で輝く対象に対しては非常に有効です。

一方で、銀河や恒星といった連続波長を発する対象では天体本来の滑らかな色調が失われ、赤系(Hα(約656nm)付近)と青緑系(OⅢ(約500nm)付近)の色しか残りません。このような対象に強めのフィルターは向いていません。

半値幅の異なるフィルターの比較

 

輝線を透過するフィルターでは「半値幅」が狭いほどより良いコントラストが得られます。今回使用したフィルターではL-eXtremeでコントラスト向上効果が最も強く、 次いでDuoBand 、QBP…という順です。

実際にコンポジット後画像の輝度値を比較してみます。右下のフィルターになるほどより多くの波長成分がカットされ,背景が暗くなっていることがわかります。一方でバラ星雲の波長の大部分を占めるHαやOⅢの光はどのフィルターでもほぼ同じだけセンサーに届いていますから、結果としてコントラストが向上しているということになります。

平均輝度値比較

・まとめ

各種フィルター(IR/UVカットLPR-NCBPQBPDuoBandL-eXtreme)を用いて超光害条件下で天体写真撮影を行ってみた結果をご紹介しました。フィルターを適切に用いることで光害地でも、月があってもこれだけ撮影できる!新月期の遠征だけでない天体撮影の魅力もお伝えできればと思います。半値幅が狭く効果の間違いないL-eXtreme、半値幅は広くなってしまいますがより安価に始められるDuoBand、HαやOⅢだけでなく様々な輝線を透過できるQBPやCBP、カラーバランスをなるべく崩さず光害をカットできるLPR-N…それぞれの特性を活かしていただければと思います。今すでにフィルターをお持ちの方も効果の差を確認するなど、参考にしていただければ幸いです。

 

サイトロン Dual BP フィルターはこの日にテストができませんでした!L-eXtremeとDuo Bandの中間的な効果を持つフィルターです!

 

皆様、良き天文ライフを!