スターベース東京のブログ

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すごいぞ!TSA-120でガッツリ天体写真撮影!

皆さんはTSA-120鏡筒に対してどのようなイメージをお持ちですか?

タカハシ屈折望遠鏡のラインアップにおいて、本鏡筒は多くの場合「TOA-130Nに迫る眼視性能ながら軽量で使いやすい」と表現されています。このような文脈では無意識のうちに、TSA-120は眼視主体の鏡筒だ…と思われるかもしれません。確かに撮影時の結像性能の指標であるスポットダイアグラムでも、ほぼ完璧な点像となるTOA-130Nに対して、TSA-120では星像はやや面積を持って表現されます。

しかし!!!

実はTSA-120は、天体写真撮影のための望遠鏡としても、かなりの高性能を秘めています!

今回は2通りの補正レンズを使って実写した結果をご紹介いたします。

 

1. TSA-120 + TOA-35レデューサー0.7×

ばら星雲 TSA-120 + TOA-35レデューサー0.7× + ZWO ASI6200MC Pro
ゲイン100 2分×94枚 総露光時間3時間8分

システムチャート通りの接続で撮影しました。ASI6200MC Proは内径を広く確保しつつカメラマウント接続とするため、当店オリジナルのこちらのアダプターセットを使いました。光害カットフィルター等は使用していません。

TSA-120にTOA-35レデューサー(150セット)を併用すると、焦点距離635mm、F5.3となります。35mmフルサイズやAPS-Cセンサーのカメラで大型の銀河や星雲を撮影するのにちょうどよい画角が得られます。F5.3というスペックはFSQ-85EDPの直焦点とほぼ同じです。淡い対象の撮影にも使いやすい明るさです。

1枚撮り画像(ステライメージ9でデジタル現像のみ)

(左)画面左上 (右)中央 のそれぞれ1000ピクセル四方切り出し

フラット画像

撮影結果を見てみましょう。フルサイズ6200万画素の超高画素カメラでも、中心から周辺までこれだけ均一でシャープな写りです。しかも明るい星の色ハローもありません。

星像が最もシャープな元画像・中央500%拡大表示

撮影中の各コマでは気流の影響を受けて星像の大きさがわずかに変化しますが、上は最もシャープに写った(つまり光学系の性能を最も引き出せている)コマです。フルサイズ6200万画素のカメラで、1コマ2分の露光を掛けて、星像がこれだけシャープに引き締まっている…これがどのようなことか、同様のスペックの鏡筒を使った経験のある方ならお分かりいただけるかと思います。スポットダイアグラムではTOAシリーズに一歩譲る構成ですが、実用上ではこれだけ良い写りをします。

 

元々が眼視性能も高いTSA-120ですが、レデューサーを使えばFが明るくなるということに加え、広い画角を得られて便利です。センサーが小さめのカメラ、例えばASI533MC Proで同じように撮影した場合、下のような画角となります。

正方形センサーの冷却CMOSカメラ(ZWO ASI533MC Pro等)と同じセンサー面積でトリミング

※温度変化への耐性について

この撮影中は、撮り始めから終わりまでの間に外気温が3.2度下がりましたが、合焦マスクでの回折光条の出方は変わらず、撮影結果を見てもピント移動は無かったようです。この夜はこれ以上の温度変化が無く、例えば5℃の変化でどうなるか…等は試せませんでした。しかし3度の温度変化でピントが明らかにズレる鏡筒もある中で、これはTSA-120鏡筒自体の特長かと思われます。温度変化に対してピントずれが少ないのは嬉しいですね。

外気温+1.2℃でピント合わせをしたのち、同-2.0℃となったときの合焦マスク像。ピントが合ったままと確認できたので、そのまま撮影を継続しました。

 

2. TSA-120 + TOA-645フラットナー

M101 TSA-120 + TOA-645フラットナー + ZWO ASI6200MC Pro
ゲイン100 2分×135コマ 総露光時間4時間30分

タカハシ公式ではTSA-120鏡筒にはTOA-35フラットナーが適合しますが、先日の検証でTOA-645フラットナー150セットとの相性も良いことが分かりましたので、今回はそちらを使いました。接続等の詳細はこちらのブログ記事をご覧ください。↓↓↓

starbase.hatenablog.jp

焦点距離は900×0.99=891mm(F7.4)ほどかと思います。

1枚撮り画像(ステライメージ9でデジタル現像のみ)

(左)画面左上 (右)中央 のそれぞれ1000ピクセル四方切り出し

フラット画像

この日はシーイング条件も良かったようで、焦点距離900mmほどの状態で撮影してもシャープさを維持しています。以前のブログ記事で述べたのと同じ理由で、シーイング条件の良い日なら「レデューサーを使って撮った画像をトリミングする」よりも「フラットナーを使って撮る」方が、アンダーサンプリングを回避して実解像度を高める効果があると感じます。

中央の等倍切り出し。(左)今回の撮影で最もシャープなコマ (右)最も星像肥大の大きなコマ

このような長焦点撮影ではシーイングの影響を受けやすくなります。上画像の比較をご覧ください。同じ夜でもシーイングの変化によってこれだけ星像の大きさが変わります。この日は比較的シーイングが良かったですが、肉眼で星がチカチカと瞬いて見えるような日はもっと星像が肥大してしまいます。そのような日は比較的大気の影響を受けにくい短焦点での撮影(例えばフラットナーではなくレデューサーを使う)に切り替えたほうがよさそうです。

 

このくらい長めの焦点距離であれば、小さいセンサーのカメラと組み合わせて銀河や星雲のクローズアップ撮影を行うのも楽しそうですね。

IMX585センサーの冷却CMOSカメラ(Player One Uranus-C Pro等)と同じセンサー面積でトリミング
※星像の肥大を復元する処理(BlurXTerminator)は使用していません。

※TSA-120は直焦点での周辺像の肥大が比較的少ない鏡筒なので、そもそも小さいセンサーであれば、フラットナーが不要かもしれませんが…

 

TOA-35レデューサー0.7×とTOA-645フラットナー、どちらの補正レンズを使っても、たいへん良好な結像が得られました。温度変化に対するピントずれ量が小さそうなのも魅力です。また、ここまで触れませんでしたが、TSA-120は口径の割に軽めなのでEM-200 / EQ6系よりも一回り小型の、SXD2 / AM5クラスの赤道儀に搭載しても安定した撮影結果が得られるという利点もあります。

(今回の撮影にはSXD2赤道儀を使用しました。AM5の場合は剛性の高いメタル三脚にハーフピラーを併用して搭載するのが安心です。)

 

いかがでしょうか?もう眼視用とは思わないでください!TSA-120は、紛れもなく「眼視・撮影両用」の高性能鏡筒です!!!

 

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www.starbase.co.jp