スターベース東京のブログ

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最強のビクセン鏡筒! 「VSD90SS」試用レビュー!!

VSD90SS」は2023年11月30日にビクセンが新発売した高性能アストログラフです。

ビクセン VSD90SS 口径90mm 焦点距離495mm F5.5
ビクセンWebサイトより)

5群5枚の天体撮影と眼視観望、扱いやすさと性能を極めたフラッグシップ鏡筒で、SDレンズ2枚と高屈折率EDレンズ、凹レンズには高性能ランタン系ガラスを採用した光学設計により、従来品「VSD100F3.8」を上回る高レベルな収差補正を実現しています。写野中心から、35㎜判フルサイズの最周辺に至るまで、シャープで美しく均一な星像を得ることができます。

VSD90SS断面図
ビクセンWebサイトより)

鏡筒スペックなど詳細はビクセンさんのホームページもご参照くださいませ。

ということで、今回はこの「VSD90SS」をスターベーススタッフが実際に使用してみましたので使用感をご紹介したいと思います!

 

 

外観など

スタイリッシュな外観でシルバーで印字されたロゴは高級感を放っています。重さは本体だけで約4.3kg。手に持ってみるとずっしりとした重みがあり、レンズが詰まっている感があります。それでいて、フード収納状態では全長476mmとコンパクト(ε-130Dの全長が460mmです。)になるため、手軽に運搬することができました。今回は運搬のために弊店オリジナルの屈折用バッグSに収納し、車に乗せて運びました。"超高性能な5枚玉"ではありますが、通常の屈折望遠鏡と同様の運搬方法で問題なさそうです。安心して持ち運びができる鏡筒だと思います。

フード収納時
ビクセンWebサイトより)

なおフードについては、いったん取り外して反対にして取り付けることで収納する形になります。また、上の図で左端に見えている黒いものは対物キャップです。この対物キャップを着脱する際には、フードは収納状態とするか、いったん外す必要があります。下のように、フードを取り付けた状態で対物キャップを着脱することはできません。

この状態で対物キャップを着脱することは不可
ビクセンWebサイトより)

豊富な周辺光量

フルサイズ周辺でも中心比約94%と従来品の「VSD100F3.8」と比較して周辺減光が大幅に改善されています。カメラマウント、またはフィルターホイールによるケラレ以外の光量低下はほとんど見られません。

フルサイズでも周辺光量豊富です!
ビクセンWebサイトより)

以下は「ASI6200MC Pro」での撮って出しの画像を強調表示したものになります。周辺減光の様子を見ようとして強調したところ、かぶりが先に見えてきてしまいました。周辺減光は見た目にはほとんど判りません。

ASIFitsViewにてプレビュー

作例

今回は、2月の新月期に長野県まで足を延ばしZWOのフルサイズカラー冷却CMOSカメラ「ASI6200MC Pro」で撮影を行いました。

撮影対象はマルカリアンチェーンです。
こちらをクリックすると高画質でご覧いただけます(約8MB)。

VSD90SS+ASI6200MC Pro ゲイン100 冷却-15度
2分×125コマ 総露光250分(4時間10分)

フルサイズ周辺まで申し分のない素晴らしい星像で、撮影していても画像処理していても気持ちよさを感じます。なお、鏡筒本来の性能を評価するために、最近話題のAI画像処理ツール「BlurXTerminator」は使用しませんでした。

下は右下1000ピクセル四方の切り出し画像になりますが、フルサイズ最周辺であることは言われないとわからないどころか、言われても信じがたいほどです。

右下1000ピクセル四方の切り出し

なお星が少し ぼてっ としてしまったのは気流の影響を受けたものです。連続する2コマでも下の様に星像が変化していました。

各120秒露光 連続する2コマの中心500ピクセルの星像比較
わずかな差ではありますが左の方が星像が小さいです。

冬の悪いシーイング下でもこれだけの性能を発揮してくれているのを見ると、夏の気流が良い時季に撮影をするのが楽しみになります。

 

フォーカサーの使用感と気温によるピント変化

フォーカス調整にはラック&ピニオン式が採用されています。合焦ハンドルの回転はものすごく滑らかで、フルサイズの冷却カメラを取り付けた状態で筒先を天頂付近に向けても滑らかなタッチのまま動かすことが出来ました。ただその滑らかさゆえに合焦ハンドルに触れただけでもピント位置が変化してしまうほどです。鏡筒の性能を十分に発揮すべく精密なフォーカス調整にはオプション品の併用が必須でしょう。標準でデュアルスピードフォーカサーの付属はなく用途に応じた汎用性が考慮された設計となっており、ZWOのEAF(電動フォーカサー)を取り付けることも可能です。

デュアルスピードフォーカサー(左)とEAF(右)を取り付けた様子
ビクセンWebサイトより)

 

また今回はバーティノフマスクを使用して気温変化によるピント位置の移動についても検証しました。日没頃から鏡筒を設置し、できる限りの温度順応を済ませてから撮影に臨みましたが、約2度の外気温変化でもバーティノフマスクの回折光条にハッキリわかる違いが出ました。星像が超シャープな分、気温変化によるピント移動にはやはり敏感なようです。

スタッフの個人的な感覚ですが、もし私が使用するなら1度ごとにピント位置をチェックしたいところです。

 

カメラ回転機構

今回は「直焦ワイドアダプター60DX EOS用」(別売品)を使用したため、その回転機構でカメラの回転を合わせを行いましたが、ネジを閉めて固定する際に画角が0.1~0.2度ほどずれてしまうことがありました。多くの場合0.1度のずれはそこまで気になりませんが、精密な回転合わせを短時間で行うのは難しそうです。
(カメラ回転装置が有ると使いやすいということを改めて感じます・・・)

直焦ワイドアダプター60DX EOS用
ビクセンWebサイトより)

先日のCP+では参考出品として、天体用CMOSカメラの接続に特化した「直焦ワイドアダプター60DX for 48mm」が展示されていました。これが登場すれば、ますます使いやすくなりそうですね。

 

鏡筒バンド

鏡筒バンドは専用の「VSD鏡筒バンド115S」(別売品)が用意されています。

バンドを締めるネジは程よい大きさで、とても回しやすく感じました。寒さで手がかじかんでいる場合でも回しやすそうです。また、完全に緩めた場合でも下側に"くるっ"と回ってしまうことはありません。鏡筒が傷つかないように配慮された設計となっています。

専用の鏡筒バンドを取り付けた様子
ビクセンWebサイトより)

 

専用収納ケース

持ち運びに便利な専用の収納ケース(別売品)もございます。接眼部側が広く設計されており、EAFやカメラマウントを取り付けた状態でも鏡筒を収納することが可能です。鏡筒バンドやアリガタの金具も取り外さずに持ち運べるのはうれしいですね。(以下の画像はビクセンWebサイトより)

 

おわりに

先日のCP+では、参考出品として専用のレデューサー「レデューサーV0.71x」も発表され、ますます注目を浴びている今話題の鏡筒です。「VSD90SS」のシャープネスな星像を体験してみませんか?

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