TOAシリーズに迫る高い眼視性能を備えつつ、格段に軽量で扱いやすいTSA-120鏡筒。大口径屈折望遠鏡のデビューに好適なスペックで、発売以来多くの方にご愛用いただいております。
この鏡筒は基本的は眼視性能の高さをウリにしていますが、実は天体写真用としてもお勧めです。TOAシリーズ用に設計された補正レンズ(TOA-35レデューサー0.7×やTOA-35フラットナー)を流用することで、フルサイズの周辺まで整った像が得られます。
※TOA-35フラットナー併用時は周辺光量低下のためイメージサークルΦ40mmとなっていますが、星像の様子は35mmフルサイズの周辺まで良好です。
TSA-120にTOAシリーズ用の補正レンズが使えるのなら、もしかしたらTOA-645フラットナー0.99×も使えるのではないか…?という想像ができます。(実際そのようなお問い合わせもございます。)
そこで、今回のブログ記事ではTOA-645フラットナー0.99×をTSA-120に取り付けたらどのような写りになるのか試してみたいと思います。レデューサーの類推から、こちらも同じくTOA-150B用の構成(TOA-645フラットナー150セット)を使いました。
※今回試した組み合わせはタカハシが公式にアナウンスしているものではなく、スターベース東京の独自検証です。焦点距離、公称イメージサークル、スポットダイアグラム等のデータもありません。この組み合わせについてはタカハシにお問い合わせいただいてもデータをご提供できません。ご了承ください。
接続について
2通りの方法をお勧めいたします。下図の接続方法(1)がシンプルで、ドロチューブ後端から
・カメラマウントDX-WR
と接続すれば無限遠にピントが合います。ただしこの状態ではドロチューブ繰り出し量がほぼ最大で、数mmしか余裕がありません。オートフォーカサーを使用する場合はドロチューブの端点まで回転してしまうと機器に負荷がかかりますから、カメラ回転装置Mとフラットナーの間に何らかの延長筒を加えてドロチューブの繰り出し量を減らし、オートフォーカサーが安全に駆動できるようにした方が良いと思います。接続方法(2)ではフィルターボックス補助リング(TSA-102)という、長さ52mmのM72延長筒を併用しています。
実際の撮影結果
TOA-35フラットナーはシステムチャート通り、TOA-645フラットナーは上記(2)の接続として、それぞれオリオン大星雲を撮影してみました。カメラは35mmフルサイズです。
どちらのフラットナーでも中心から周辺まで良く写っています。ただし周辺光量には大きな違いがあります。公称イメージサークルΦ40mmのTOA-35フラットナーに対して、TOA-645フラットナーの場合はAPS-C周辺で約10%、フルサイズの周辺では50%以上も光量が豊富な結果となりました。
TOA-645フラットナーを使用した場合、焦点距離は900mm×0.99=891mmほどでしょうか。この焦点距離では画面全体に銀河や星雲が写ることも多いので、周辺まで光量豊富に写しとめられることは大きなメリットに感じます。
カメラ回転装置の併用について
TOA-35フラットナーの場合、システムチャート通りに接続すると、カメラの構図回転は50.8スリーブ側面の固定ネジを緩めて行うことになります。極端に重いカメラを使わない限り、50.8差し込みの接続でも強度や傾きズレは問題ないことがほとんどですが、「カメラの構図回転」に関してはカメラが重くなるほど微調整が難しくなります。
これを解決するためにカメラ回転装置を追加しようとすると、標準付属の50.8アダプター(屈折用)を光路長の短い50.8アダプター(M-250CR)へ変更する必要があります。結果として下図のような構成になります。
このように比較するとコスト面ではあまり差がありません。また、どちらもカメラ回転装置MとカメラマウントDX-WRはレデューサー使用時にも流用できます。
TOA-35フラットナーは50.8スリーブ仕様で、2インチ天頂ミラーと併用できたり眼視-撮影の切り替えを素早く行えるのが魅力ですが、天体写真を撮ることに限ってみれば、やはりカメラ回転装置の併用をお勧めしたいと感じます。
今回のブログ記事では2つのフラットナーを比較しました。TOA-645フラットナーは大口径レンズのため周辺光量が豊富で、シャープネスに関してもTOA-35フラットナーとほぼ変わらない結果となりました。TSA-120鏡筒をお持ちの方は天体のクローズアップ撮影にいかがでしょうか?
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