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新製品「2×オルソバロー」登場!!!

12月19日に発売となったタカハシの新型バローレンズ「2×オルソバロー」。"収差の無い対物レンズに取り付けると、どこまで収差の無い状態のまま焦点距離だけを延長することができるかを追求した"(タカハシWebサイトより)ということで、結像性能には大いに期待できそうです。

この記事ではそんな注目の新製品2×オルソバローについて、気になる情報をまとめてみたいと思います。

タカハシ 2×オルソバロー 外観です。

 

概要

2×オルソバローは標準的なアイピースに対して同焦点設計になっています。つまりアイピースを単独で使うのと、2×オルソバロー+アイピースとするのでは、ドロチューブの繰り出し量はほとんど変わりません。

※眼視のピント位置は個人差があり、「同焦点」とされる場合でも、観察者によってはドロチューブ繰り出し量がわずかに変わることがあります。

ただしカメラや天頂プリズム等を取り付ける場合には、ドロチューブの繰り出し量が変わります。これは追ってご説明します。

 

取り付けについて

2×オルソバローを使う際に気にしていただきたいのが「差し込み部分の長さ」です。先端の黒色部分は外径Φ30mmで、31.7mmスリーブの付け根から測った差込深さは49mmです。通常のアイピースの差込深さ(タカハシ製では通常25mmほど)に比べて長いので、鏡筒側パーツに当たらないかをご確認ください。

例えば31.7mm径の天頂プリズム/ミラーと併用する場合、2×オルソバローは天頂プリズム/ミラーよりも対物側に配置する必要があります。

 

50.8mm径の天頂ミラーやプリズムは、接眼側のスペースに余裕があるので、ほとんどの場合で写真のような接続が可能です。

 

また、2×オルソバローのレンズユニットは31.7mm(アメリカンサイズ)のフィルターと同じネジ規格ですから、フィルター対応の天頂ミラー等にはこのように取り付けることも出来ます。

 

CMOSカメラを取り付ける場合は、差し込みだけでなく、2×オルソバロー後端のM42オスネジにカメラをねじ込む方法もあります。

 

惑星撮影でADCを併用する場合は、バローとADCは直接ねじ込み、ADCとカメラは構図回転できるよう31.7スリーブを介して取り付けるのが良いでしょう。このような使い方にも便利です。

 

取付方法と拡大率について

このように2×オルソバローは眼視にも撮影にも多目的に使用できますが、接続方法によって実際の拡大率が変化することに注意してください。

タカハシWebサイトより

2×オルソバローの後端から焦点面(焦点を合わせたい位置)までの距離[メタルバック=b]が大きくなるほど、上記の計算式に従って拡大率が上昇します。

また、拡大率の変化に伴ってドロチューブの繰り出し量も変える必要があります。以下に具体的な接続例についてスタッフが実測した結果をご紹介します。

※2024/01/20 最下段の接続を追加しました



これらの結果より、接眼部に2×オルソバロー → (追加アクセサリー) → アイピースやカメラ、と取り付ける場合には、「bの増加分」と「アイピース単独で使用する場合に比べたドロチューブの繰り込み量」がおよそ6対1となることが分かります。2×オルソバローのご検討に際しては、上記のピント移動量を参考にして、ご自身の機材に対して問題なく使えそうかご確認ください。

 

このように2×オルソバローはメタルバックに応じて実際の拡大率が変わり、理論上は3倍や4倍になるようにして使うことも出来ますが、元々は2倍+αくらいまでで使うことを想定されています。結像性能の観点からは、拡大率は最大でも2.7-8倍くらいまでになるようにして使用するのが良いのではないかと思います。

 

 

具体的な運用について

CMOSカメラによる惑星撮影では、例えば

(1) FC-76DやFC-100D(F7~8の屈折望遠鏡

 → 2×オルソバローにCMOSカメラを31.7mmスリーブで差し込み(フィルターはスリーブ先端へ取り付け) で合成F値が15前後になるので、ピクセルピッチの細かいZWO ASI715MCを使用する

(2) Mewlon180CやMewlon210(F10-12の大口径反射望遠鏡

 → 2×オルソバロー、ADC、CMOSカメラと接続すると合成F値が30~35程になるので、惑星用として定評のあるZWO ASI662MCやセンサーが大きくて導入しやすいZWO ASI585MCを使用する

といった運用が考えられます。いずれの場合も無限遠には問題無くピントを合わせられます。

※このあたりは昨年の別記事でご紹介しております。あわせてご覧ください。↓

starbase.hatenablog.jp

 

肝心の2×オルソバローの「結像性能」についてですが、まずは発売からこれまでに使った感想をお伝えいたします。(スタッフ個人の主観です。あくまで一個人の感想なので、人によっては感じ方が異なる場合もあると思います。)

今回はTOA-130NFB鏡筒を使って、木星、月、重星などを観察しました。TPL-6mmと2×オルソバロー + TPL-12.5mm や TPL-9mmと2×オルソバロー + TPL-18mmのようにほぼ同じ倍率となるようにして比較したところ、両者の見え味にわずかな差は感じましたが、総合的に甲乙付け難く、どちらも中心像については同程度という印象でした。

ただし2×オルソバローを併用したほうが

・アイレリーフの長いアイピースを使っているので覗きやすく、また目とアイピースが離れるためレンズが曇りにくい

・(TPLアイピースとの組み合わせでは)周辺像が明らかに良くなるので月面観察では視野のフチまでシャープに見えて好感触

という利点を感じます。2×オルソバローを追加することによるコントラストやシャープネスの劣化は、今回は感じませんでした。

 

例えば現在12mm前後のシャープなアイピースをお待ちで、次は6mmくらいのアイピースが欲しいなぁ…と考えている方は、アイピースではなく2×オルソバローを追加することで6mm相当の倍率とするのも良いと思います。さらにここへTPL-9mmを買い足せば、2×オルソバロー併用の有無で4.5mm / 9mmという2通りのシャープな見え味が得られます。このように、良質なバローレンズが1本あれば、アイピースとの組み合わせでいろいろな倍率を実現できるのも魅力です。

他の鏡筒とのマッチングやシーイング条件の良い時(関東では春以降になるでしょうか…)の詳細な比較は、機会を見てまたご紹介したいと思います。

 

他にもお伝えしたい点があります。それはアイピース側の固定ネジが2つあることです。1つより2つのほうが良い…当たり前のことではありますが、「気軽な眼視なら手が届きやすい方の1つだけを締める」「重いカメラを取り付ける場合は2つともしっかり締める」など、状況に応じて柔軟に使える、その自由度が上がることに、スタッフはちょっと感動しました。ネジには硬めのグリスが使用され、タカハシらしい適度な締め感が実現されています。


2×オルソバローを使うのが楽しみですね!現在在庫は潤沢にございます。ぜひご検討ください!