スターベース東京のブログ

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【FSQ-85EDP + レデューサーQB0.73×】 さすが専用品!新型レデューサーは超シャープです

 

天体写真を撮ると周辺までシャープに写り、眼視用としても抜群の中心像が得られる「フォトビジュアル」の大人気機種 FSQ-85EDP に、このたび専用品のレデューサーが登場しました。その名も FSQ-85EDレデューサーQB0.73× です。これまでMewlon-CRSシリーズと共用であった従来品レデューサーQE0.73×に対し、FSQ-85EDP専用の設計とすることで結像性能を一層向上させた製品です。

FSQ-85EDレデューサーQB0.73×

スポットダイアグラムを見ると中心から半径8mmのあたり(ZWO ASI533MC Proなどの最周辺に相当します)までは大きな差はありませんが、それより外側では星像の収束が改善されていることが分かります。

他の補正レンズも合わせてスケールを統一して並べてみました。新型品のレデューサーはフラットナーをわずかに上回るほどのスポットダイアグラムとなり、しかもイメージサークルΦ44mmを維持したままFが明るくなるので驚きます。

この度は新型レデューサーを使った撮影を行いましたので、その結果をご紹介いたします。

 

1.フルサイズの周辺像は◎

35mmフルサイズのデジタル一眼レフカメラ Canon EOS6DのIR改造機を使って撮影しました。

1枚撮って出し

等倍切り出し

フルサイズ最周辺まで色ハローが無く、しかも星像はほぼ真円を維持しています。F3.9の明るさでこの結像なので、すごいです。

 

従来品と同じ構図で撮り比べたデータはこちらです。シーイングの変化を避けるため、同じ夜に連続して撮影を行いました。

PixInsightの Aberration Inspector 機能で出力した2画像を並べました

こうしてみると、特にフルサイズの周辺において新型品の結像性能のすさまじさがよく分かります。

 

2.ミラーボックスケラレが少ない!

デジタル一眼レフカメラにはミラーボックスがあり、その枠自身や撮影時に跳ね上がったミラーが光路中の遮蔽となって周辺減光を生じることがあります。これがミラーボックスケラレです。

ミラーボックスケラレは画像の上下で横辺に沿った直線状の減光として見られ、特に画像の下側(実際のカメラでは上側=ミラーの跳ね上がった側)で強く生じます。従来品と新型品で、その程度を比較してみました。

RAW画像(ベイヤー配列)のまま「新型で撮った画像」を「従来品で撮った画像」で除算し、ぼかしてレベル調整(強調)したものです。上下の明るい領域が【新型のほうが光量の多い部分】 を表しています。

Fの明るい天体望遠鏡ではミラーボックスケラレが強く出る傾向がありますが、新型では従来品に比べて影響が軽減されていました。ミラーボックスケラレに関してはフラット補正でも補正が難しいので、一眼レフカメラをお使いの方にとっては嬉しい特長です。

これに関連して、画角の最周辺で明るい星に発生する放射状の光条(カメラマウントやミラーボックスでのケラレ由来)も、新型品のほうが目立たなくなっている印象を受けます。

※ミラーボックスケラレの程度はカメラにより異なります。今回はCanon EOS6D(IR改造)での結果です。他機種についても結果が得られ次第ご紹介いたします。

 

3.APS-Cセンサーでの比較

ここまでは35mmフルサイズで比較を行いましたが、最近はAPS-Cやそれより小さなセンサーを使ったカメラが人気です。小型の冷却CMOSカメラを使って素晴らしい写真を撮る方が増えています。皆様が気になるであろうAPS-Cまでの範囲では結像性能に差があるか?」も見ていきます。フィルターの有無による結像性能の比較も気になるところです。

以下にそれぞれの組み合わせで撮影した画像の、APS-C左上隅300ピクセル四方の切り出しを掲載します。

カメラはZWO ASI2600MC Proで、下段ではZWO IR/UVカットフィルター(2インチ)をカメラマウントDX-WRの対物側内側にねじ込んでいます。

<フィルター無しの場合>

APS-C での周辺像でも新旧レデューサーの結像に差が見られます。しかし従来品でも星像は丸くて色がずれているだけなので、画像処理によって新型品とほぼ変わらない結果に出来ると思います。

<フィルター有りの場合>

光路中にフィルターを追加すると、フィルター(ガラス)中を光が通過することによる諸収差の変化、フィルターの厚みに応じたバックフォーカスの光路長現象などの影響で結像性能が変化します。

このとき従来品では星像が放射状に伸びてしまいますが、新型品ではフィルターを入れてもなお真円を保っていて大変良好です。なお星像の"大きさ"に関してはシーイングの影響を受けているので完全な比較はできません。

最近は市街地から光害カットフィルターを使って天体撮影することが増えているので、そうしたニーズに対しても、新型の「フィルターを入れても最低APS-C周辺までは真円のまま」という特性は魅力的です。(フルサイズでフィルター有無の比較は、機会があれば後日行いたいと思います。)

 

4.作例写真(M33)

FSQ-85EDP + FSQ-85EDレデューサーQB0.73× + ZWO ASI2600MC Pro
ゲイン100 -15℃ 3分×40枚(総露光2時間)

APS-C冷却CMOSカメラによる撮影です。総露光時間は2時間とそう長くはありませんが、F3.9の明るさに助けられて滑らかな結果を得ることが出来ました。

撮って出し(ASIFitsViewで明るさ調整)

APS-Cセンサーでも周辺減光はありますが、フラット補正によって綺麗に補正できました。FSQ-85EDフラットナー1.01×使用時と同じく中心から周辺まで色ハローが無く均一にシャープな写りなので、使っていてとても心地よく感じました。

 

今回最もシーイングの良かったコマです。

ASIFitsViewの機能で星の大きさを評価してみました。中心からAPS-C周辺まで星の大きさが均一なことが数値でも見て取れます。すでに秋~冬の気流となって肉眼でも星のまたたきが分かる条件でしたので、鏡筒の光学性能が完全には発揮できていないと思われますが、この時期にこれだけシャープに撮れればかなり良いのではないかと感じます。

 

5.その他の特長

鏡筒の前後バランスが多少改善されている

無限遠にピントを合わせた状態。ドロチューブ繰り出し量は約10~15mmです。

従来品「レデューサーQE0.73×」は光軸方向の長さが約45mmあり、さらにカメラを取り付けるので全体の重心がリアヘビーになりがちでした。前後ネジに対してレンズ位置の異なる「レデューサーQR0.73×」ではレデューサーの大部分がドロチューブ内に隠れるものの、逆にドロチューブの繰り出し量が増大して、結局リアヘビーの状態は変わりませんでした。
それに対して新型のFSQ-85EDレデューサーQB0.73×は、レデューサーの大部分がドロチューブ内に隠れて光軸方向の取付厚みが25mmと短く、しかも無限遠にピントを合わせた際のドロチューブ繰り出し量はわずか10mmほどです。したがって重心位置が比較的対物側に寄っていて、これまでよりも前後バランスを改善できています。

 

・カメラのスケアリングエラーに対して鈍感

従来品と新型品ではベストピントの前後で星像の傾向が異なります。どちらも中心像は〇→・→〇ときれいな円形ボケとなりますが、周辺像では

※模式図です

と変化します。このためもしカメラ側にスケアリングのエラー(センサー面の傾き)があっても新型のほうが「四隅の星像の傾向が似ている」という特長があります。

 

 

まだまだ撮りためたデータがありますので、今後もご用意ができ次第ご紹介してまいります!FSQ-85EDP鏡筒の魅力をまた一つ増やしてくれる新型レデューサー「FSQ-85EDレデューサーQB0.73×」。ぜひご検討ください。