スターベース東京のブログ

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中心像がすごい!!! タカハシTPLアイピース実視レビュー

AbbeやLE、Erfleに代わる新時代のタカハシ標準アイピースとして今年7月に登場したTPLシリーズ。発売当初は12.5 / 18 / 25mmの3種でしたが、この度6mmと9mmが追加されて一層選びやすくなりました。

今回、スターベースのスタッフが実際に覗いた感想を記事にしましたので、皆様のアイピース選びのご参考になれば幸いです。

 

※眼視は個々人の身体(眼球→網膜→脳)を使って楽しむ行為です。見え方そのものや、見え方に対する「好み」も人それぞれです。本記事の内容はあくまでもスタッフの主観に基づいたものですのでご了承ください。

今回はTOA-130NFBにアイピースを差し替えてテストを行いました。恒星時追尾を掛け、常に対象が視野中心となるようにして観察しました。観察した日のシーイングは標準的でした。

 

 

私の思う「TPLアイピースの魅力」

TPLアイピースは設計こそ"標準的"なプローセルですが、以下の点においてかなり"特殊"な見え味の製品だと感じております。

1.ベストピントの瞬間に見え味が大きく変わる

2.像が明るい

 

<1.ベストピントの瞬間に見え味が大きく変わる>

中心像の見え味に関する内容です。標準的なアイピースでは、ピントを合わせる最中に “ベストピントのシャープネスはきっとこの位だろう” と予想ができて、実際その通りの結像になるのですが、TPLアイピースベストピントの際に予想を大きく超えてシャープネスがグググッと伸びるので驚きました。

※主観にもとづいたイメージです

この現象はタカハシ旧製品のAbbeシリーズ等でも感じていました。しかしTPLではベストピントの瞬間の「シャープネスの伸び」が凄まじくて驚きます。

しかも、この「一気にシャープになるピント範囲」が、Abbe等ではカミソリの刃のように"薄い"のに対し、TPLではわずかではありますが"範囲"と呼べるくらいには広いと感じます。

 

TPLアイピースではベストピントの範囲では、シャープネスが一気に向上しますが、同時にコントラストがもう数段上がって、惑星表面の模様などの濃淡の「濃」が一層濃くなるように感じます。

(視野の背景そのものが暗くなっている訳ではなさそうなので、あくまで気持ちの問題かもしれませんが…。)

 

 

<2.像が明るい>

レンズ枚数の多い広角アイピース等との比較ではもちろんですが、シンプルなタカハシAbbeシリーズと比較しても、やはり像が明るく見えます。

TOA-130NFBにAbbe6mmとTPL-6mmを取り付けてみずがめ座ζを観察した際にこれが顕著でした。みずがめ座ζは4.3等と4.5等の重星で、現在の離角は約2.4秒です。Abbeを覗いてからTPLに変えると明らかに像が明るく感じます。0.2等の差ですが重星のどちらがより明るいかを覗いた瞬間に判別できました。TPLは色合いが暖色系にならずニュートラルな感じなのも好印象です。

他の焦点距離でも、TPLアイピースは他のアイピースよりも像が明るく見えると感じます。重星の分離や暗めの惑星(土星天王星など)を観察するのにはvery goodです。

 

「レンズ全面を可視光全域で99%以上を透過する多層膜コートにし、迷光の入りにくい金物構成に良質な艶消し塗装を施している」(タカハシwebサイトより)

という工夫が効いているのでしょうか?TPLは「背景が暗く引き締まる」という感じではなく、「天体の明るさだけが明るくなっている」ような印象を受けました。不思議です。

 

 

★低~中倍率のTPLアイピース

こちらもTOA-130NFB鏡筒に取り付けて月面を観察してみました。

TPL-12.5 / 18 / 25mmも、高倍率の6 / 9mmと同様の印象です。ベストピントとなる瞬間に、シャープネスとコントラストが想像以上に向上します。ここで気づいた点を追加します。

 

<3."エッジ"が無い?>

いわゆる「エッジの立ちが鋭い」アイピースというと、月面クレーターなどの明暗部分で"明るさにメリハリのある領域"がくっきりしているような印象です。しかしTPLの見え味は、これとは異なるように感じます。

※スタッフの主観に基づいたイメージです

TPLアイピースで月のクレーターを観察した際など、背景の真っ暗な領域からクレーターの明るさまで、一瞬で輝度が上がったり下がったりする印象です。天体写真などでアンシャープマスクを掛けたときのような「フチがしっかりある」という感じではなく、「フチ」が無い…と言うべきなのでしょうか。このためかどうか分かりませんが、月面クレーターの "輝き感" は、LEやAbbeよりも一層強く感じられました。

 

タカハシwebサイトで公開しているデータをこちらに転載します。

タカハシwebサイトより転載

AbbeやLEとの比較は全て「エアリーディスク内の出来事」で、果たしてこのようなごく僅かの差が実際の見え味に影響するのか?と思う方も多いでしょう。しかし私の感想としては確かにTPLのほうがシャープに見える、と思います。

 

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ここまでTPLアイピースのいい所ばかり書いてきましたが、使用に際し注意が必要な点もあります。

1.アイレリーフが短い

2.視野は広くない(48°)

3.見口ゴムの折り返しに「慣らし」が必要

 

TPLはレンズ構成枚数の少ない古典的な設計を出発点としており、アイレリーフは長くありません。TPL-6mmやTPL-9mmの金物設計を見るとアイレンズ部分の金物が眼の側に飛び出しており、少しでも覗きやすくしたい…という努力は感じますが、それでも眼鏡が必須な方にはなかなか厳しいと感じます。

私は近視(望遠鏡のピント調整で補正できます)に加えて軽度の乱視(同:できません)があるので、できれば眼鏡を掛けたまま覗きたいです。しかしTPL-25mmでさえ、眼鏡を掛けたままでは全視野を一度に見渡すことがギリギリ出来ませんでした。高倍率で観察すれば乱視の影響は比較的穏やかになるので、私は眼鏡を外して覗くことができました。TPL-6mmやTPL-9mmでは目の周りの皮膚をアイカップに押し付けるようにして使用する格好になります。

 

見かけ視界は48°と広くはありませんので、いずれにしても「広い視野で臨場感たっぷりの見え味」というタイプのアイピースではなく、TPLは「中心像のシャープネスとコントラスト」に特化した製品という認識です。(良質なバローと組み合わせれば周辺像は改善できると思います。)

 

それから、ゴム見口も新しくなっています。

TPLのゴム見口はやや硬めで、最初は折り返しても数分で元に戻ってしまいました。ですが何度か折り返しているうちに馴染んできたようで、今は一度折り返せばしばらくそのままの状態を維持できるようになりました。

 

31.7mmスリーブ部分の意匠も新しくなっています。

個人的にはお洒落な感じがして好みですが、いかがでしょうか?

 

今回も長文の記事を最後までご覧くださりありがとうございました。TPLアイピースこれから天体望遠鏡を手にする方のハイグレード標準アイピースとしてはもちろん、明るくシャープな中心像を求めるマニアの方の追加アイピースとしても、自信を持ってお勧めできる製品です。ご検討をどうぞよろしくお願いいたします。

 

商品ページはこちらです。↓↓↓

www.starbase.co.jp

※眼視は個々人の身体(眼球→網膜→脳)を使って楽しむ行為です。見え方そのものや、見え方に対する「好み」も人それぞれです。本記事の内容はあくまでもスタッフの主観に基づいたものですのでご了承ください。