◇概要
ε-160EDは2020年7月に発売となったイプシロンシリーズ最新の鏡筒で、シリーズ史上最高の結像性能で多くのご注文・ご予約をいただいている人気機種です。カタログスペックは焦点距離530mm / F3.3 / イメージサークルΦ44mmです。
副鏡の遮蔽を考慮した実質のF値は3.6(ε-180EDは同3.1、ε-130Dは同3.8)でイプシロンシリーズとしては標準的な明るさですが、最大の特徴である結像性能は35mmフルサイズの周辺でもスポット径がわずか3ミクロンと、実用上の限界に達しています。スポットダイアグラムをご覧になった方は驚かれたかと思います。↓↓↓
今回のテスト撮影では上空の気流に恵まれ、シリウスがほぼ瞬かないような好条件でした。気流由来の星像の肥大が少なかったためか、使ったデジタル一眼レフカメラの限界といえる、最小星像が2×2ピクセルに収まる極めてシャープな結果が得られました。
※撮影時には南が上でした。トップ画像は180°回転させて北を上にしています
【お勧めポイント】
★フラット補正はε-130Dと同じような方法でほぼ完璧に合いました!
撮影後、店舗に戻ってきてフラット画像を撮影しているときの図です。PCの白色モニターの上に白くて均一な紙(今回使ったのは一般のコピー用紙よりも均質そうに見えたチラシ印刷用紙です)を2枚載せ、そこに鏡筒先端を押し当てて撮影したものをフラット画像として使いました。これでほぼOKです。Fの明るい反射鏡筒はフラット補正が難しそう…と思っている方にもε-160EDは安心です。
★主鏡裏フタを取り外して外気に馴染ませられる!
主鏡の裏側中央にある直径70mmほどの「フタ」を外し、主鏡の裏面に外気を直接当てて温度順応を促進できる構造です。撮影地に到着したら、まずは赤道儀を組んでε-160ED鏡筒を載せ、対物キャップとこのフタを外す。その後、極軸合わせ・構図とピント合わせ・オートガイダーの設定(使う場合)を済ませたらフタを閉じて本撮影を開始…という流れが想像されます。結露に悩まされているという方は、この部分を利用して乾燥空気装置などの自作ができそうですね。
★デジタル一眼では太刀打ちできないほどシャープ
等倍画像をご覧いただくと、中心像では微光星が2×2ピクセルや3×3ピクセルに収まっています。これはベイヤーRGB変換を伴うカラーデジタルカメラでは限界ともいえる結果です。モノクロカメラやもっとピクセルピッチの細かい超高画素カラーカメラを使えばさらにシャープに写せます。逆に言えばε-160EDの結像性能の真価を発揮するためにはこうしたカメラを使いたいところです。
【気を付けたいポイント】
★そのままではピント合わせは難しい
ε-160EDでは「星の光条が最もはっきりするピント位置」がベストピントです。F3.3なのでε-180ED等に比べればまだ許容ピント幅が広いこと、滑らかに動き出し止まるドロチューブの仕上がり、等のためピント合わせの行為自体は快適に行えます。ただ、「星の光条が最もはっきりするピント位置」というのはなかなかピークが掴みにくいので、市販の合焦マスクを併用したほうがベストピント位置が分かりやすいと思います。なお鏡筒先端の外径はΦ223mmです。
★カメラ側の調整が必要になることも
今回の試写では、鏡筒側は単体で光軸を追い込んだうえでカメラを取り付けて撮影を行いましたが、鏡筒~カメラのセンサー面のどこかにわずかな傾き等があると周辺の星像が不均一になります。今回も厳密に見ればその傾向があるので、これ以上を目指す場合にはカメラまでを含めた全系での光軸調整が必要です。Fが明るくシャープな鏡筒ならではの悩みかもしれません。
※とはいえ、今回の画像も、等倍でじっくり眺めない限り四隅の不均一には気づけないと思います。そのくらいの極めてわずかなエラーの話です。A3くらいまでの観賞サイズであれば、そこまで厳密にならなくても大丈夫だと思います。
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このように、ε-160EDは初めて天体写真に取り組む方でも無理なく使える高性能な鏡筒です。また、四隅まで厳密に「完璧」な星像を目指す方にも、カメラまでの全体で光軸を整えていただければきっとご満足いただける結果が得られると思います。
ちょうどよい大きさでとてつもない性能のε-160ED。現在(11/24)ではご注文に生産が追いついておらず納品までお待たせしてしまいますが、ぜひご検討ください!