今回の記事はビクセンAX103Sを使った天体写真撮影のご紹介です。この鏡筒は対物レンズ3枚玉+フィールドコレクター内蔵という設計で「フォトビジュアルタイプ・フラッグシップ」を謳う製品です。
本編に入る前に、まずは少し眼視のご紹介をさせてください。AX103Sは他の多くのビクセン鏡筒と同じく、ドロチューブ後端がM60ネジとなっていて、付属のアダプターを介して2インチ(50.8mm)接続が可能です。眼視や、眼視と小型カメラの切り替えに便利なフリップミラーが標準付属しています。ドロチューブ内にフィールドコレクター(補正レンズ)が入っていますので、像質の観点からは接眼部のリング構成はビクセンの公開しているシステムチャート通りとするのが無難でしょう。
【眼視】
AX103S鏡筒は中心像の色収差補正が大変優れていて、300倍前後で月などを眺めても青ハローを感じず、自然な色合いでシャープに高倍率の観察ができます。また周辺まで補正がよく施されていますから、低倍率にして夜空を眺める場合も周辺像の乱れが少なく快適です。古典的なアクロマート鏡筒や口径比の小さい短焦点アポクロマート鏡筒とは一線を画す、落ち着いた、よく収差の補正された見え味です。このような眼視性能の高さをまずは強調しておきたいと思います。それでは天体写真撮影の結果のご紹介です。
【直焦点撮影】
この状態では焦点距離825mm(F8)です。鏡筒にフィールドコレクターが内蔵されていますので、補正レンズは追加せず(ただしVC用延長チューブが別途必要です)このままの状態で天体写真撮影に使えます。眼視と同様にやはり色収差は感じず、星ぼしの色合いを自然に写しとめられます。35mmフルサイズでも周辺減光は軽微でフラット補正は行いやすいと感じました。
中心から周辺まで星像の均一性に優れています。周辺光量にも余裕があり、画角周辺に明るい星があっても口径食による光条は発生しにくいようです。均一性の高さが印象的です。
中央と右下から各600ピクセル四方で切り出したものです。右下の画像は星像の肥大などもほぼ無く、画像中のどのあたりから切り出したのか分かりませんね。公開されているスポットダイヤグラムの通り、素晴らしい結像です。
F8というと近年の写真用鏡筒のトレンドであるF4~F6程度よりも「暗い」状態ではありますが、最近の高感度なカメラと組み合わせれば、極端に淡い対象でなければ無理なく写しとめられると思います。補正レンズ無しでこれだけ「フラット」(結像と周辺光量の両方の意味で)な画像が得られるので、眼視と撮影を頻繁に切り替える場合でも使いやすいのが魅力ですね。
この日は急激に気温の降下する夜で、レンズヒーターも使用しておらず、対物レンズが結露してしまいました。数枚撮って、結露がひどくなったらクリーニングクロスで拭いて…を繰り返しながらなんとか撮り続け、一応、画像処理を行いました。↓↓↓
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続きまして
【レデューサー併用撮影】です。
AX103SはレデューサーHDと組み合わせると焦点距離が825mm→635mm(F6.2)となり、この状態でも35mmフルサイズで写真撮影が可能です。
この状態でも色ハローがほとんど発生しないので、この作例のように明るい星から暗い星までそれぞれの色合いを表現しつつ「輝き感」を表現したい場合にはとても適しています。周辺での星像の崩れは軽微なので安心です。
AX103Sは、一見するとF8というスペックのために眼視性能ばかりが注目されがちですが、実は2通りの焦点距離でかなりのハイレベルな天体写真のできる鏡筒でした!