この記事ではBORG55FL(レデューサー使用)、Askar New ACL200、Askar FMA230(レデューサー使用)を用いた天体写真撮影の結果をご紹介します。
焦点距離200mm前後の撮影を目的とした鏡筒は激戦区で、どれを選べばよいのか迷われている方もいらっしゃると思います。今回は一晩に上記3機種で撮り比べることができましたので、私(スタッフH)の感じたことなども含めてご紹介したいと思います。各鏡筒の諸元は以下の通りです。重量はCanon EOS Kiss X6i(約575g)を接続した際の総重量です。
今回はオートガイドは行わず、露出はすべてISO3200、90sで統一しました。
★焦点距離400mmくらい以上の鏡筒ではオートガイドを使わないと、一コマ1分以上の露出で星をきちんと円形に写しとめるのはなかなか難しいのですが、一方で今回のように焦点距離200mm程度ならばオートガイドは必ずしも必須ではなく、システムを簡易にすることも可能です。
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※ピント位置はライブビューモニターで色ハロが出来るだけ目立たなくなる場所に合わせています。
※画像処理はダーク・フラット補正と多少の調整を加えたのみです。星を小さくする、色収差を補正する等の処理は行っていません。
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まずはBORG55FLです。
BORG55FLはF3.6と競合機種の中で最も明るい鏡筒で、その速写性は圧倒的です。F4の鏡筒と比べても約1/3段明るい(約80%の露出時間で同じように撮れる)ため淡い対象を狙う際に真価を発揮してくれるでしょう。
ピント合わせのヘリコイドは適度な硬さがあり微妙なピント合わせが可能ですが、Fの明るさに伴うピントの薄さからピント合わせには少し苦労しました。
この鏡筒についてもう一点特筆すべき点は軽さです。カメラ、鏡筒、アリガタまとめて1500g弱しかありません。ポータブル赤道儀での運用を考えている方にとっては大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。
圧倒的軽さと速射性が唯一無二の製品だと感じました。
次にNew ACL200です。
New ACL200はアストロカメラレンズと称される製品です。F4と十分に明るく、粗動+微動のピント合わせ、絞りリング、カメラ回転機構といったカメラレンズのような取り回しの良さが特徴です。
天体を撮影する場合、粗動ピントリングは予め∞指標に合わせてロックしておき、微動ピントリングで細かくピントを合わせることになります。微動ピントリングは軽快に回せるので初めは「こんなに軽くて大丈夫…?」と不安でしたが、実際に使ってみるとベストピント位置がとっても分かりやすく、簡単にピント合わせができたのが印象的です。ただし、ピントロックをする際にピントリングを回転させる方向に力を掛けないよう注意する必要があります。
三脚座の部分で鏡筒ごと回転させ構図の調整を行うことができるのは便利でした。また本鏡筒ではカメラレンズのように絞りが搭載されているのですが、少なくともAPS-Cまでの範囲であれば、絞り解放(F4)の状態で周辺まで星がきれいに写りました。絞り解放状態では絞り環が隠れて完全な円形となるので、カメラレンズにありがちな、明るい星に放射状の「ヒゲ」が生えて写る現象が大幅に軽減できます。
鏡筒外径は最大部で約95mmと、FC-76DCUの対物フード部分と同じくらいの太さがありますので、レンズヒーターを使う時はやや大きめのものをご用意ください。
この鏡筒はカメラ込みで2500g超と3機種の中で最も重量があります。重さを気にしないのであれば、普段使い(マニュアルフォーカスですが)も見込めて使い勝手と明るさのバランスがとれた製品だと感じました。アリガタ、ファインダー台座が付属しているのも魅力的ですね。
最後にFMA230です。
FMA230はレデューサー使用でF4.6と、今回使った3機種の中では暗いですが、それが有利に働いているのかAPS-Cの範囲内では本鏡筒が最も結像性能が高いように感じました。(今回は色ハローが無くなる位置にピントを合わせましたが、この状態で周辺までとても良い像になりました)ヘリコイドはBORGと同様に適度な硬さがありピッチも細かく、微妙なピント合わせが可能でした。
軽さと星像のバランスがとれた製品だと感じました。こちらの製品もアリガタ、ファインダー台座が付属しているのは魅力的ですね。
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圧倒的な軽さに明るさを兼ね備えたBORG55FL、カメラレンズの使い勝手の良さを持ち普段使いも見込めるNew ACL200、軽さと星像のバランスがとれたFMA230、それぞれ特徴を持った鏡筒だと思いました。星像の写り方には少しずつ差はあるのですが、今回の掲載サイズで鑑賞する分にはどれも全く欠点が見えてこないと思います。それほどに、どれもハイレベルな天体写真に十分対応できる製品です!
※周辺光量落ちの補正だけでなく、カメラのセンサーに固有の様々なムラやノイズを取り除くため、フラット補正ができるのであればした方が良いと思います。今回は筒先を白色モニターに押し当てる簡易的な方法(こちらでご紹介しているような方法です)で取得しましたが、3機種とも容易にフラットが合いました。
※すべてEM-10赤道儀を使った撮影です。このEM-10赤道儀は旧型のスケールパターンを内蔵しているので現在の北極星の導入位置が書いてありませんが、極軸望遠鏡を覗き、それを「予想」して目測で合わせました。極軸設置誤差のため、最初と最後のコマでは星の位置が少しズレてしまいましたが、それでも各コマ90秒の露出ではそれぞれの元画像は点像となっていたので、このようにコンポジットをすれば十分なクオリティの天体写真となります。そういった手軽さも含めて魅力的な製品群だと思います。
短焦点の屈折望遠鏡としてFS-60CBについても記事にしています。あわせてご覧ください!