スターベース東京のブログ

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こんな条件下でバラ星雲は写るのか!?各種フィルターで撮り比べてみました!

現在様々なフィルターが発売されており、どれを選べばよいのか迷われている方もいらっしゃると思います。今回は一晩に6種類のフィルター(IR/UVカットLPR-NCBPQBPDuoBandL-eXtreme)を用いて撮り比べることができましたので、その結果と光害地でフィルターを使うメリットなども含めてご紹介したいと思います。

 

・撮影結果

まずは撮影結果を並べて紹介します。それぞれのフィルターを装着し、神奈川県川崎市にてFSQ-85EDP(直焦点)を用いてバラ星雲を撮影しました。この日はほぼ満月で、撮影対象(バラ星雲)と月との離角は約21°という非常に厳しい条件でした。

撮影した画像をご覧ください。使用カメラはZWO ASI294MC ProでGain120、-15℃、60秒露出の30枚を加算コンポジット(ダーク・フラット補正済み)しました。

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撮影の様子

撮影画像 60秒×30枚 加算コンポジット (0-400000の階調で表示しています)

フィルターの透過特性によってカラーバランスが変化しています。強いフィルタを使うほどフィルタの効果によって背景の輝度値が抑えられ、バラ星雲が強調されている様子が確認できます。次にこれらの画像にステライメージ9を使用してオートストレッチとレベル調整をかけたのが以下の画像です。

(レベル調整は目視で合わせました。細かいツッコミはナシでお願いします…!)

それぞれのフィルターで星雲の写り、星の数や明るさが異なることが分かります。IR/Uカットフィルターではぼんやりとしかバラ星雲が確認できませんが、適切なフィルターを用いることで、光害が強い撮影地で対象が満月の近くにある場合でもでもこのように撮影することが可能です。

 

・フィルター使用のメリット

撮影結果からも効果はおわかりいただけると思いますが、フィルターを使用するメリットについて少し簡単に説明します。今回使用したフィルターは可視光のみを通すフィルター(IR/UVカット)、光害をカットすることを目的としたフィルター(LPR-N)、特定の波長のみを透過することを目的としたフィルター(CBP、QBP、DuoBand、L-eXtreme)に分けられます。各フィルターの効果について以下の模式図をご覧ください(あくまでも模式図ですので実際の天体スペクトルや光害スペクトルとは異なります)。

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フィルターを用いない場合

カメラには天体の光と街明かりの二つが同時に入射します。図に示したように、輝線星雲は特定のスペクトルで輝いていて、銀河や反射星雲は連続波長で輝いています。フィルターを用いない場合、天体と街明かりを単純に加算した値がカメラに記録されます。

 

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UV/IRカットフィルターを用いた場合

一般にCMOSセンサーは可視光以外の波長に対しても感度があります。天体用CMOSカメラでは可視光波長のみを捉えるためにIR/UVカットフィルター等を使用します。(通常のデジタルカメラでは内蔵されていることがほとんどです。)IR/UVカットフィルターを使用した場合、可視光波長の光のみが記録されます。

 

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「光害をカット」するフィルター

次に「光害をカット」するフィルターを使用した場合です。フィルターの特性によりますが、このようなタイプのフィルターでは街明かりの多くを占めているような波長(LEDや蛍光灯など)を重点的にカットします。銀河や反射星雲の光も一部カットされますが、街明かりの影響の多いところを効果的にカットしているのでフィルター未使用の場合と比べると対象の写りがよくなります。しかし、光害が強い場所では対象のコントラストを劇的に向上させる効果は見込めません。

 

「輝線を透過」するフィルター

最後に「輝線を透過」する強めのフィルターを使用した場合です。目的波長の付近だけを透過し、それ以外の波長はほとんどカットされます。このようなフィルターは輝線星雲など特定の波長で輝く対象に対しては非常に有効です。

一方で、銀河や恒星といった連続波長を発する対象では天体本来の滑らかな色調が失われ、赤系(Hα(約656nm)付近)と青緑系(OⅢ(約500nm)付近)の色しか残りません。このような対象に強めのフィルターは向いていません。

半値幅の異なるフィルターの比較

 

輝線を透過するフィルターでは「半値幅」が狭いほどより良いコントラストが得られます。今回使用したフィルターではL-eXtremeでコントラスト向上効果が最も強く、 次いでDuoBand 、QBP…という順です。

実際にコンポジット後画像の輝度値を比較してみます。右下のフィルターになるほどより多くの波長成分がカットされ,背景が暗くなっていることがわかります。一方でバラ星雲の波長の大部分を占めるHαやOⅢの光はどのフィルターでもほぼ同じだけセンサーに届いていますから、結果としてコントラストが向上しているということになります。

平均輝度値比較

・まとめ

各種フィルター(IR/UVカットLPR-NCBPQBPDuoBandL-eXtreme)を用いて超光害条件下で天体写真撮影を行ってみた結果をご紹介しました。フィルターを適切に用いることで光害地でも、月があってもこれだけ撮影できる!新月期の遠征だけでない天体撮影の魅力もお伝えできればと思います。半値幅が狭く効果の間違いないL-eXtreme、半値幅は広くなってしまいますがより安価に始められるDuoBand、HαやOⅢだけでなく様々な輝線を透過できるQBPやCBP、カラーバランスをなるべく崩さず光害をカットできるLPR-N…それぞれの特性を活かしていただければと思います。今すでにフィルターをお持ちの方も効果の差を確認するなど、参考にしていただければ幸いです。

 

サイトロン Dual BP フィルターはこの日にテストができませんでした!L-eXtremeとDuo Bandの中間的な効果を持つフィルターです!

 

皆様、良き天文ライフを!