最近の天体望遠鏡関係では、赤と黒のカラーリングの製品が注目されることが多くなりました。ZWOのCMOSカメラや赤道儀、iOptronの赤道儀、そしてこちらのAskarブランドの各種鏡筒です。Askarのラインアップは天体写真を強く意識しており、
FMA135、FMA180、ACL200、FMA230、FRA400、FRA500、FRA600
という名称は皆さまも色々な場所で目にされているのではないかと思います。
このAskarのラインアップに先日、初めて Pro の名を冠する製品「FRA300 Pro」が登場しました。焦点距離の近い人気機種 FRA400 と同一夜に撮り比べを行いましたのでご紹介いたします。
まずはそれぞれのスポットダイアグラム(設計値)です。
6つある図は左上→右上、左下→右下の順で中心から周辺までの星像を示しています。左上が中心像、右上がおおよそAPS-Cの周辺像、右下が35mmフルサイズの周辺像に対応します。こうして見るとFRA300 Proのほうが中心像がかなりシャープで、しかも画面全体で星像の様子(大きさや青ハローの程度)があまり変わらないというデータになっています。FRA400は中心のあたりでやや青ハローが出ると読み取れます。
※各図の一辺は200μmでビクセンさんと同じスケールです。タカハシは一辺100μmなので異なります。
続いて作例のご紹介です。今回はカシオペア座のWの並びのすぐ東にある「ハート星雲」と「ソウル(胎児)星雲」をまとめてフレーミングしました。使用したカメラはCanon EOS6D (IR改造)で、光害カットフィルターは使用していません。
どちらもweb掲載サイズでは全く粗が見えないほど良く写ります。
周辺減光の様子はこちらです。
どちらもフルサイズ周辺までしっかり光量があります。これはフラット補正を行う場合でも、画像処理において周辺部のノイズが増えにくいので助かりますね。
等倍まで拡大してようやく差が見えてきます。星の色ハローは、FRA400が黄+青系、FRA300 Proがオレンジ+パープル系でした。またフルサイズの四隅で星像の大きさに差があり、FRA300 Proの方が一段引き締まった印象です。 ※ただしこれらはピント合わせの具合によって変わるかもしれません。
とても細かい点を指摘してしまいましたが、逆に言えばそれくらいしか言及できないほど、どちらも優れた結像性能ということです。これは誤解の無いように伝えたいと思います。「APS-CくらいまではEOS6D(ピクセルピッチ6.4μm)では限界近いシャープネスが出る」「フルサイズ周辺でも豊富な光量とシャープで丸い星像」という点は、FRA400とFRA300 Proに共通した強みです。実際の撮影では大気のゆらぎやカメラセンサーとの兼ね合いで写り方が変わります。FRA400とFRA300 Proとの実用上の性能差はスポットダイアグラムほどには大きくなく、どちらも素敵な天体写真用鏡筒だと感じました。
このようにご紹介すると、「それならFが明るく画角が広いFRA300 Proを常に使って、小さい対象を写したい時はトリミングすれば良いのでは?」という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。それに対する答えはこちらです。
同じカメラで同じ対象を撮るのなら、FRA400のほうが細かい描写をできるようです。このような「どれだけ詳細な描写ができるか」という点に関しては、スポットダイアグラムの星像サイズではFRA300 Proに及ばないとはいえ、口径の分だけ解像力が高く、また焦点距離が長い分だけアンダーサンプリングを回避できるFRA400のほうが有利だと思います。
つまり、FRA400とFRA300 Proは、ユーザーの希望(画角vs描写の細かさ・Fの明るさ・フルサイズでの均一性…)によってしっかり使い分けができる、とても上手なラインアップの構成ではないかと感じます。
スターベース東京は現在どちらも展示中。在庫もございます!ご検討をよろしくお願いいたします。