シーイングの悪いこの季節、望遠鏡のピント合わせで苦戦したという方は多いのではないでしょうか。
フォーカシングマスクは、鏡筒の前側に取り付けるだけでピント合わせが一気に楽になる、大変強力な補助ツールです。
※ 今回ご紹介する商品には、バーティノフマスクとして広く知られる3本線の光条が出るタイプのものと、それとは異なる4本線の光条が出るタイプのものが含まれます。本記事では、これらを「フォーカシングマスク」と総称します。
フォーカシングマスクの使い方
使い方は至って簡単です。
まず、フォーカシングマスクに付属している固定ネジを本体に取り付けてください。
その後、シリコンの保護キャップがついている側を鏡筒側に取り付け、鏡筒の外径に合わせて固定ネジの間隔を調整してください。この際、厳密な中心出しをしなくても像に影響は出ません。手で触れてもマスクがずれない程度に固定してください。
これでセッティングはOKです。
この状態で明るい恒星を撮影すると、次の写真のような回折像が得られます。
望遠鏡のピント調整機構を動かすと、この回折像の形状が変化します。次の写真のように、回折像が上下左右対称な形状になれば、ピント調整は完了となります。
フォーカシングマスクが有効な焦点距離
焦点距離の短いレンズまたは望遠鏡でフォーカシングマスクを使用しても、得られる回折像は小さく、回折像が対称になっているかどうかよく分かりません。
当店スタッフの見解では、焦点距離が 200mm 以上の望遠鏡ならばフォーカシングマスクを使うことでピント合わせが行いやすくなると感じています。
フォーカシングマスクの効果
フォーカシングマスクは、スリットの角度方向がいくつあるかに応じて回折像の本数が決定します。次の写真のマスクの場合、左のマスクでは4本の回折像、右側のマスクでは3本の回折像を得ることができます。
上でご紹介したフォーカシングマスクを用いて、実際の星(シリウス)を撮影したものが次の写真です。
左右の画像の一番右側、マスクなしの画像にご注目ください。一見、どちらの場合も星像の大きさはほとんど同じに見えます。
しかし回折像をよく観察していただくと、左側の「ピントずれあり」では、右側の「ベストピント」よりもピントずれが大きいことがわかると思います。
星像は、シーイングの影響などを受けて常に揺らいでいます。そのため、星像が最小となるようにピントを合わせる手法でベストピントを得るのは至難の技です。
フォーカシングマスクを使えば、回折像のパターン対称性を用いるため、シーイングが悪くても客観的かつ高精度にピント合わせを行うことができます。
望遠鏡のベストピント前後の星像パターンも、次の写真のように簡単に確認することができます。
クリアフォーカシングマスクの効果
当店では、次のようなWilliamOpticsの透明タイプのフォーカシングマスクをご用意しております。
透明フォーカシングマスクと通常のフォーカシングマスクを、タカハシFS-60CBに装着したときの星像比較が次の画像です。画像は同条件で現像し、同じ拡大率で切り出しています。
透明タイプのフォーカシングマスクの方が回折像が大きく、かつ明るくなっていることがわかると思います。
暗い光学系や、焦点距離の短い望遠鏡でフォーカシングマスクを使用する場合、回折像は小さくなってしまいます。そのような鏡筒でご使用の場合は、上でご紹介しましたクリアフォーカシングマスクをお勧めいたします。
金属タイプと樹脂タイプ
当店では金属製と樹脂製の2つのタイプのフォーカシングマスクを取り揃えております。
金属製のフォーカシングマスクは、遠征などに持ち出しても壊れる心配がほとんどありません。
一方で樹脂製は、金属製のものと比べると強度的には劣りますが、コスト的な面では優位性があります。
ご予算と使用目的に応じてお選びください。
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今回の記事では望遠鏡でのピント合わせに大変便利なフォーカシングマスクのご紹介をいたしました。
大気の揺らぎに影響されず、再現性の高いベストピントを得られるアクセサリーとして、ぜひご検討ください。
今回使用したフォーカシングマスクは以下の3つです。
※1/21 用語の統一など若干修正しました。