スターベース東京のブログ

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すごいぞ!!【FC-76DCU+76Dレデューサー】とモノクロ冷却CMOSカメラで高解像度☆天体撮影

ここ数年のカメラ関係機器のめざましい進歩により、フィルターを活用して光害地域でも天体写真を撮影する手法が注目されています。中でも、カラー冷却CMOSカメラ + デュアルナローバンドフィルターの組み合わせはたいへん人気で、当店でも多くの方にお求めいただいております。先日こちらの記事でご紹介させていただきました「Optolong L-Ultimate フィルター」など、半値幅のきわめて狭いフィルターも登場しており、カラー冷却CMOSカメラでの撮影の幅はますます広がっていきそうです。

一方「モノクロ」冷却CMOSカメラは、最低でも3色、つまりカラーカメラの3倍撮影し、RGBチャンネルごとに位置合わせをした上でRGB合成を行わないとカラーの作品として完成しないことから、気軽に天体を撮影したい場合には敬遠されがちでした。

とはいえ、一つの「色」ごとに全ての画素を使って撮影し高い解像度を実現できる点は、モノクロ冷却カメラの大きなメリットです。そこで本記事ではHαフィルター"だけ"を使って光害地から撮影した写真をご紹介いたします。「色」は付きませんがカラーカメラで撮影するよりも高解像度です。このような撮影・鑑賞法もアリではないでしょうか?

 

以下にご紹介しますのは、タカハシのFC-76DCU + 76Dレデューサー + ASI294MM Pro + Hα ナローバンドフィルターを使用した作例です。

NGC6888 クレセント星雲周辺
撮影鏡筒 タカハシ FC-76DCU76Dレデューサー
撮影カメラ ZWO ASI294MM Pro -5°冷却
フィルター  ZWO ナローバンドHaフィルター 7nm
露光時間 60秒 × 141コマ(総露光 2時間21分)
画像処理 ステライメージ9 FlatAidePro PhotoshopCC
中程度の光害地で撮影

使用したタカハシの「FC-76DCU」はファインダーを含めて1.9㎏とたいへん軽量でコンパクトな2枚玉フローライトアポクロマート屈折望遠鏡です。別売の「76Dレデューサー」を併用すればF/5.5 焦点距離417mmとなり、速写性が向上し、より広い範囲を一度に撮影できるようになります。軽量なためにコンパクトな赤道儀にも搭載しやすく、ご自宅のベランダからの撮影も可能です。

今回撮影を行った場所もスタッフの自宅のベランダで、天の川はもちろん見えないどころか、頑張ればなんとか南斗六星が見える気がするような光害の影響が大きい地域です。


暗い空・・・とはとても言えないような場所です。M16を撮影中です。画像は記事の後半でご紹介します♪

今回は2"(48mm)のHαフィルターを使用し、ZWOのマウントアダプターII・ASIカメラ全般用の内側にねじ込んで取り付けています。フィルター外枠とマウントアダプター内壁までの距離が1.5mmほどしかありませんので取り付けの手間は掛かりますが、2"(48mm)フィルターをここに取り付けできて便利です。

 

以下に撮って出しとスタック後の画像もご紹介いたします。

左:撮って出し(1分露光) 右:スタック後(1分×141コマ)

1分露光の撮って出しでは、中心のクレセント星雲が一応確認できる程度の写り(それでも十分にすごいのですが)でしたので、「クレセント星雲、ちゃんと写るかなぁ~」と少々不安を感じながら撮影をしていました。ところが、スタック(コンポジット)後に出てきた画像を見てビックリ!!星雲がハッキリ写っていて、背景のガスのうねりも分かります。画像を見ただけでも嬉しく感じ、その後の画像処理もそこまで複雑な操作は行いませんでした。(ステライメージ9のコンポジットパネルでスタック→FlatAideProで恒星が飽和しないように対数現像→PhotoshopCCのCamera Raw フィルター・トーンカーブを使用して強調処理を施しています。恒星を分離したり、星マスクを作成したりするなど、恒星を保護するような処理は行っておりません。)

 

ただ、ダーク減算とフラット補正は行っています。このような撮影の場合、面倒でもこれらは行ったほうが良いと感じます。

左はダーク減算・フラット補正「あり」右は「なし」ですが、その差は一目瞭然です。天体写真の画像処理では非常に強い強調処理を行うため、周辺減光など星雲とは関係のないムラは、可能な限り補正しながら処理を進めていくことが大切です。またダーク減算はディザリングガイドを行うことで省略することも可能ですが、今回使用した「ZWO ASI294MM Pro」では、アンプグローを消すためにもダーク減算はぜひしたいところです。ダーク画像やフラット画像の取得は面倒に感じがちですが、結果に大きな差があります。

 

今回は同じ機材・撮影地で、M16も撮影してみましたのでご紹介します。

M16 わし星雲
露光時間 60秒 × 161コマ(総露光 2時間41分)

わし星雲の中心部には、ハッブル宇宙望遠鏡の画像で有名な「創造の柱」があります。なんとなく"あこがれ"を感じる創造の柱、撮影中もプレビュー画面を拡大して、写り具合を確認しながら楽しく過ごしていました。

 

そしてやはり「想像の柱」部分を拡大して画像処理してみたくなりましたので、超クローズアップの作例も仕上げてみました。

光害地で撮影したとは思えないような解像感で、処理していてとても楽しく感じました。これを実現しているのは、FC-76DCUのポテンシャルの高さ &  ASI294MM Pro の超高密度なセンサーのおかげでしょう。ASI294MM Proはマイクロフォーサーズのモノクロ冷却CMOSカメラで、8,288×5,644ピクセルという高い解像度と2.3μmの小さなピクセルサイズが魅力です。ほどよいセンサーの大きさと、超高画素を両立しているカメラですので、上記のような創造の柱のクローズアップなど、画像の一部を強拡大して作品を仕上げるという楽しみ方も十分可能となっております。

 

同様にM8も撮影してみました。が、途中で曇られてしまいあまり露光時間が稼げませんでした。

M8 干潟星雲
露光時間 60秒 × 64コマ(総露光 1時間4分)

露光時間が短い分、上記2対象と比較すると解像度に欠けるようにも感じますが、考え方を変えますと約1時間の露光でこれだけ写ってくれれば十分と捉えることもできるでしょう。ご自宅や近くの公園などで1時間ほどの露光をするという方法でしたら、お仕事などが忙しくて天体写真をやる暇がない!という方でも撮影に取り組みやすいかもしれません。実際、たった1時間でも素晴らしい解像度で、中心部分のみをトリミングして処理しても、十分魅力的な画像に仕上げることができました

天体写真の画像処理は”難しい”というイメージをお持ちの方も多くいらっしゃるかもしれません。私は画像処理の中でも特に「色がうまく出ない」「カラーバランスの調整が難しい」「色が変になってしまう」など「色」に関して悩むことが良くあるのですが、モノクロ画像の場合はこの「色」について悩むことはありません。だってモノクロなのですから。モノクロ画像の画像処理はカラー画像よりもしやすいように思います。

 

さて今回は「FC-76DCU+76Dレデューサー」と「ASI294MM Pro+ナローバンドHαフィルター」で楽しむ高解像度モノクロ天体写真についてご紹介してきました。モノクロカメラをカラー合成用の道具ではなく「モノクロの作品を楽しむカメラ」として考えるのは、現代ではちょっと新しい考え方かもしれません。それでも今回私は、撮影でも画像処理でも十分満足することができました!

この夏は、高解像度なモノクロHα天体写真を楽しんでみるのはいかがですか?

 

【今回使った機材のご紹介です】

(1)FC-76DCU鏡筒

アリガタアリミゾ化してお使いになるのなら、こちらのセットがお得です。↓↓↓

 

(2)冷却CMOSカメラ ZWO ASI294MM Pro


(3) ナローバンドフィルター※Hαのみ

今回はZWO マウントアダプターII・ASIカメラ全般用の内部に2"(48mm)タイプをねじ込みましたが、ASI294MM Proでは付属のアダプターを使って1.25"(31.7mm)フィルターも取り付けられます。