スターベース東京のブログ

スターベース東京のブログです。店頭の様子や機材情報を中心に書いていきます。不定期更新。

Optolong L-Ultimate 究極のワンショットナローバンドフィルターによる作例!

 

当店ブログでは、これまで撮影や電子観望用途に様々あるフィルターについてご紹介してきました。

 

starbase.hatenablog.jp

starbase.hatenablog.jp

 

なかでも Optolong L-eXtreme フィルターはHα、OIII周辺での半値幅7nmというたいへん狭い帯域幅をもち、当店でもワンショットカラーカメラで淡い輝線星雲を撮影してみたい方にとても人気が高いフィルターです。

今回は、この L-eXtreme フィルターよりも更に狭い帯域幅をもつ Optolong L-Ultimate フィルターを使った作例を撮影してきましたので、ご紹介します!

 

L-Ultimate フィルターについて

このフィルターの特長は、なんといってもその狭い半値幅で、L-eXtreme が 7nm なのに対し、L-Ultimate は 3nm になります。これにより、光害の多い地域や撮影に適さない月齢時期であっても、超高コントラストな撮影が期待できます。

L-eXtreme フィルターと L-Ultimate フィルターの比較

左が L-eXtreme、右が L-Ultimate の波長特性です。グラフを一見しただけでも、いかにL-Ultimateの帯域幅が狭いかがおわかりいただけるかと思います。また透過率のピークについては、L-eXtreme が90%を超えているのに対し、L-Ultimate は90%弱なので、若干 L-eXtreme に分があると言えますが、どちらも高い透過率をもっていることがわかります。

 

網状星雲を撮影

今回は山梨県にて、このフィルターで夏の定番(?)の網状星雲を撮影しました。

網状星雲一枚撮って出し
TOA-130NS + TOA-645フラットナー + QHY268C + Optolong L-Ultimate フィルター / -5℃, Gain=26, 6分 ASIFitsViewでオートストレッチ

上記データ(一枚撮り)のピクセル等倍

ダーク減算等の前処理は一切していませんので輝点ノイズはありますが、まず一枚撮りオートストレッチのみでここまで淡い部分まで写った結果が出てくるというのが驚きで、撮影地でも思わず声を上げてしまいました。明るい星がない領域ということもありますが、目立ったゴーストやハロなどもありません

TOA-130NS + TOA-645 フラットナーというひじょうに高い結像性能をもつ光学系に、カメラは QHYCCD QHY268C というカラー CMOS カメラを使用しています。ZWO ASI2600MC Pro と同じセンサです。ゲインはGain=26 であり、ZWO ASI2600MC Pro における Gain=100 に相当します。

途中、温度変化によるピントずれの修正などをしました(帯域幅の狭いフィルターですと明るい星が少ない場合にピント合わせに苦労するのがデメリットと言えます)が、夏場の貴重な撮影時間のうち3時間ほど露光することができました。

TOA-130NS + TOA-645フラットナー + QHY268C + Optolong L-Ultimate フィルター / -5℃, Gain=26, 6分×30枚コンポジット, PixInsight, Photoshop で画像処理

重ねて強調処理をしてみると、網状星雲の複雑な構造だけでなく、東側(外側)のたいへん淡い Hα の構造まで見えてきてさらに驚かされます。3時間と決して長い露光時間ではありませんが、見ごたえのある結果が得られたのではないかと思います。

またこの画像では前処理のうちフラット処理をしていません。TOA-130NS + TOA-645 フラットナー + APS-Cセンサではフィルターを入れていても周辺まで十分な光量が得られていることの証左です。

 

※半値幅の狭いフィルター使用時の注意

F値の小さいεシリーズやFSQシリーズ(レデューサー併用時)などの望遠鏡では、有効口径の「へり」の部分から入射した光は大きな角度をもってフィルターへ届きます。すると目的の波長よりも短い波長成分を透過してしまう「ブルーシフト」現象が起こります。

ブルーシフトの概念図

このように、F値の小さい望遠鏡などに半値幅の狭い干渉フィルターを組み合わせると、有効口径の中央部から入射する光は正しく目的の波長を透過できますが、周辺部から入射する光では星雲の情報をほとんど含んでいない波長を透過することになってしまい、せっかくの「明るい鏡筒」のアドバンテージを発揮できなくなってしまいます。

以上のことから、F値の小さい光学系では極端に半値幅が狭いフィルターは避けた方が無難と言えます。市販の多くの天体望遠鏡では半値幅が6~7nmのフィルターを使えば安心です。逆にミューロンシリーズや今回使用したTOA-130(F7.7)のようなF値の大きな屈折望遠鏡では、今回ご紹介した L-Ultimate のような超強力なナローバンドフィルターを使うメリットがあります。

 

 

いかがでしたでしょうか?

今回は 3nm という究極的な狭半値幅をもつ Optolong L-Ultimate による作例をご紹介しました。これからの時期、そして冬にかけてもこのフィルターの強さを活かせる淡い輝線星雲はいくつかあります。また光害の多い地域などでもその強さを発揮する製品です。ぜひお試しあれ!

フィルターサイズは 2'' と 1.25'' の枠ありをご用意しています。

www.starbase.co.jp