
9月26日に発売されたタカハシの新製品「マルチレデューサー0.85×」は、タカハシ製のフローライトを使用した小型屈折鏡筒向けに設計された高性能なレデューサーです。
発売されてから間もない製品ですが、さっそく商品の概要や作例などをご紹介したいと思います!!!
- 1. マルチレデューサー0.85× とは?
- 2. FCT-65D鏡筒 + マルチレデューサー0.85× -M での天体写真作例
- 3. FCT-65D鏡筒 +マルチレデューサー0.85× の結像性能
- 4. マルチレデューサー0.85× の魅力・オススメポイント
- 5. 最後に
1. マルチレデューサー0.85× とは?
「マルチレデューサー0.85×」は、コマ収差のない焦点距離350mm~600mmの鏡筒に対応した、高性能な3群4枚構成のレデューサーです。このレデューサーを使用することで、諸収差を改善しつつ周辺光量を豊富に確保することができます。また、イメージサークル(Φ44mm)全体にわたり、鮮明かつシャープな星像を実現します。
タカハシWebサイトより
具体的な対応鏡筒はFCT-65D、FS-60CB、FC-76DCUなどです。焦点距離を0.85倍に短縮します。
マルチレデューサーの商品構成はレデューサー+CAリングのセット販売です。商品名はCAリングが適合する鏡筒の焦点距離によって、末尾にS/M/Lが付きます。
対応する鏡筒は以下の通りです。

短焦点で天体写真に使いやすい鏡筒をこれからお探しという方にも、今まで使用してきた愛機を現代の写真撮影でも使用したいという方にもオススメなコンバージョンレンズです。またFC/FS マルチフラットナー 1.04× や FUレデューサー をすでにお持ちの方も、「0.85倍のレデューサー」という新たな選択肢が加わり、より撮影スタイルや画角・構図決めの幅が広がります!
2. FCT-65D鏡筒 + マルチレデューサー0.85× -M での天体写真作例

今回は夏の天の川方向を撮影してみました!
こちらがその結果です!

ZWO ASI6200MC Pro
60s × 120枚 総露光時間 2時間 フィルター無し
いかがでしょうか?夏の天の川が細部に至るまで、極めてシャープに描写されていることがわかるかと思います。微光星の多い領域ですが、周辺まで星が肥大することなく像を結んでいます。「FCT-65D鏡筒自体の色ハローの少なさ」と「マルチレデューサーのシャープさ」の両方が相乗し、とても良い結果が得られました!
次に、作例写真で写っている【M16 わし星雲】と【M17 オメガ星雲】をクローズアップして見てみましょう!

まずは、【M16 わし星雲】です。中心部(通称:創造の柱)や星雲周辺の暗黒星雲までコントラスト高くとってもシャープに写っています!!

続いて【M17 オメガ星雲】です。この部分だけで見ても、とてもシャープに描写されています!撮影に使用したカメラが超高画素フルサイズセンサーということもありますが、ここまでクローズアップしても星雲も恒星もシャープに写っているというのは驚きです!昨今増えているセンサーサイズの小さいCMOSカメラ(ソニー製 IMX585センサーを使用した冷却カメラなど。たとえばminiCAM8シリーズ)との組み合わせも良さそうです!
もう一枚! アンタレス付近の作例

ZWO ASI6200MC Pro
60s × 60枚 総露光時間 1時間 フィルター無し
タカハシWebサイトより
画角的にもちょうど良いと思います。マルチレデューサー0.85×を手に入れたら来年の夏にはぜひ撮りたい対象ですね!
3. FCT-65D鏡筒 +マルチレデューサー0.85× の結像性能
次は「マルチレデューサー0.85×」を使用した際の結像性能を見ていきます。
FCT-65D鏡筒 + マルチレデューサー0.85× -M
まずはコンポジット前の画像です。

中心部・周辺部を等倍で切り出した画像です。
このように拡大してみても、周辺まで星が小さくシャープになっていることが分かります。天の川の数多くある微光星もしっかりと分離して結像しています!なお周辺の星像に放射状のスジが生じているのは、光路中のケラレ(周辺減光)に伴って生じる回折光条と思われます。明るい星でなければ目立ちません。
設計上の計算値であるスポットダイアグラムは下記の通りです。

フルサイズの最周辺でわずかに星像が放射状に伸びますが、実写画像(上記)と見比べていただければ、ほとんど気にならないレベルかと感じます。「65D FUレデューサー0.65×」に比べてお求めやすい価格でもあるため、初めて天体写真に挑戦したいという方にもたいへんオススメです!
4. マルチレデューサー0.85× の魅力・オススメポイント
マルチレデューサーの発売によって、FCT-65D鏡筒に使える撮影用コンバーションレンズが3種類となりました。その中で、今回の製品であるマルチレデューサーの魅力・オススメポイントをご紹介します。
① お手頃な価格!
FCT-65D鏡筒用のレデューサーには0.65倍という強烈な短縮率が得られる「65D FUレデューサー0.65×」がありますが、フローライトが使用されている分 93,500円(税込)という価格は…と思われる方もいるかもしれません。それに対して、今回の「マルチレデューサー0.85×-M」は 55,000円(税込)と比較的お求めやすい価格です。
ー出張! かんたん見積りフォーム
お手頃な価格ということで、FCT-65Dをマルチレデューサー0.85×を使用して本格的な撮影鏡筒とする場合に最低限必要なものでお見積りをしてみました!
CMOSカメラにM54ねじ込みで接続する場合(焦点距離340mm F5.2 フルサイズ対応)
- FCT-65D鏡筒 156,200円
- 鏡筒バンド95WB 19,800円
- アリガタ220B 4,950円
- マルチレデューサー0.85×-M 55,000円
- スターベースオリジナルM52-M54接続リング 2,900円
総額:238,850円(税込)
FCT-65D鏡筒にはカメラ回転装置Sが標準で付属するため商品構成はシンプルです。FCT-65D鏡筒をこれから入手される方は、最初はこのマルチレデューサーと一緒にご用意いただくのが良さそうです。お手頃ながらシャープで眼視も撮影も幅広く使用できる高性能な鏡筒として、自信をもってオススメできます!
② システムを軽量化できる!
このマルチレデューサー0.85×-Mは質量約215gと約410gの65D FUレデューサー0.65×に比べて半分ほどの重さです。小型単焦点屈折鏡筒の良さを活かして少しでも軽くてコンパクトなシステムにしたい方にもとてもオススメです! カメラ回転装置Sの後にレデューサーを接続する仕様のため、眼視と撮影を頻繁に切り替えて楽しみたい方にも使いやすい製品になっています。
③ 焦点距離を変化させて構図づくりを楽しむ!
今回新たにマルチレデューサーが加わり、FCT-65D鏡筒は以下の3通りで天体写真撮影が出来るようになりました。いずれもフルサイズ対応です。
- 416mm F6.4:FC/FSマルチフラットナー1.04×
- 340mm F5.2:マルチレデューサー0.85×-M
- 260mm F4.0:65D FUレデューサー0.65×
1つの高性能な鏡筒に複数のコンバージョンレンズを組み合わせて様々に使う…というタカハシ伝統手法の王道を行く構成です。
5. 最後に
今回は、FCT-65Dとマルチフラットナー0.85×-Mに注目してご紹介しました!FCT-65Dの良さをより活かしていろんな楽しみ方をしてみてはいかがでしょうか?
詳しい仕様やその他の鏡筒との光学性能に関しては、当店ネットショップも併せてご覧ください。