スターベース東京のブログ

スターベース東京のブログです。店頭の様子や機材情報を中心に書いていきます。不定期更新。

おすすめソフトバッグ3種のご紹介です!

先日入荷した便利なアイテムを3点ご紹介いたします。

 

(1) Omegon アイピース用ウエストポーチ 8,020円

エストポーチ型のアイピースバッグです。アイピースをいろいろ変えながら一人でじっくり観察したい場合に便利です。いずれは天体観望会を開催するスタッフさんの必須アイテム(?)になるかもしれません。

最大7本(うち50.8mm径は最大3本)のアイピースを収納できます。

アイピース交換の時は…

姿勢を変えずにアイピースを手に取れます。便利!

 

 

(2) OKLOP EM-11等用キャリングケース 15,950円

EM-11、EM-1~EM-10、EQ5GOTOクラスの赤道儀を収納・運搬するのに便利なバッグです。内部の仕切板のフチがバランスシャフトを収納できる筒状になっていたり、「赤道儀のために造られたバッグ」と感じられる仕上がりです。小物を収納できる箇所が多いので、ちょっとした工具などもぜんぶ収納できます!

外観はこちらです。

内部の仕切やポケットも豊富です。

EM-11TEMMA3を収納したようすです。

 

 

(3) OKLOP アクセサリーケース 8,020円

可動式の仕切がたくさん付いたケースです。持ち出したい機材に合わせて仕切りの位置や数を変えられるので、とっても便利です!

本品は初回入荷分がすぐに売り切れてしまいました。次回入荷までもうしばらくお待ちください。商品ページの緑色ボタン「入荷したらメールを受け取る」よりご登録いただけますと、再入荷時に自動でメール(お知らせ)が届きます。

持ち出しやすいコンパクトなバッグです。

内部のようす。仕切は動かしたり外したりできます。

収納例その1

収納例その2

 

今後の商品展開にもご期待ください!

Star Adventurer GTi 天体写真作例 & オリジナルセットのご提案です!

1月20日に発売され、魅力的なスペックで話題になっているSky Watcherの新型コンパクト赤道儀 Star Adventurer GTi。今回スタッフが試用してみましたので 、その結果をご紹介いたします。

 

Star Adventurer GTi マウント

Star Adventurer GTiマウント

・本体約2.9kg / 搭載可能重量約5kg

スマホタブレットからアプリで自動導入ができる

・照明付きの極軸望遠鏡が内蔵

・オートガイド端子あり

と魅力的なスペックで、「同社のEQ5GOTO赤道儀(搭載可能重量約9.1kg)ほど大がかりなものは要らないけれど、気軽に自動導入赤道儀を使いたい!」というニーズにベストマッチです。今回はこの赤道儀を頑丈な三脚と組み合わせたこちらのセット

www.starbase.co.jp

を使って天体写真を撮影してみました。セット内容はこちらです。↓

 

今回使用した機材

 

■1/4"→3/8"変換アダプター(特別品)

一般的な端面に「ツバ」のあるタイプではStar Adventurer GTiマウントの下部と雲台アダプターとの間に隙間が出来てしまい、面どうしを合わせてしっかり固定することができません。このアダプターは「ツバ」の無い珍しいタイプで、マウント底面の内部に完全に埋め込めるのでしっかりと固定が出来ます。

 

 

ビクセン 雲台アダプター (特別追加工品)

Star Adventurer GTi一式を三脚に載せるためのアダプターです。中央のカメラネジ1点で固定するタイプですが、裏面に大きな窪みがあることを利用して2箇所の抜け止めネジの追加工を施しました。抜け止めネジは2mmのヘクスキーで固定します。あまり強く締めなくても赤道儀を使用中に緩んでしまうリスクを大幅に減らせます。

 

 

ビクセン APP-TL130三脚

ビクセンAP赤道儀とセットで使用されることの多い三脚です。本体は3.0kgと軽量ながら、ねじれ剛性が高く3段伸縮脚で高さ調整範囲が広いなど、機動性の高いStar Adventurer GTiにはベストマッチな三脚です。

 

--------------

 

これらの組み合わせは当店オリジナルの「Star Adventurer GTi 強化型三脚セット」として販売しております。ぜひご検討ください。

 

 

さて、鏡筒を載せてみましょう。

FS-60CB+レデューサーC0.72×+ASI294MM Pro 撮影機材一式(約3.3kg)

機材構成の拡大写真です。

この状態で撮影を行ってみました。風は微風でした。その結果がこちらです。

Star Adventurer GTi 強化型三脚セット + FS-60CB + レデューサーC0.72× + Astronomik IR642BPフィルター + ASI294MM Pro
3分×60枚加算平均(総露出3時間)

一コマあたり3分の露出を掛けて、オートガイド有りで撮影を行いました。今回は微風だったからか、星像が流れてしまうコマは1枚もありませんでした。

 

Star Adventurer GTi 強化型三脚セット + FS-60CB + レデューサーC0.72× + Astronomik IR642BPフィルター + ASI294MM Pro 3分×40枚加算平均(総露出2時間)

M66銀河部分の等倍切り出しです

この拡大率で見ても星はしっかり円形を保っています。この日は気流も良かったのか、オートガイドはRMSエラーが1.5秒角ほどで良好な結果を得られました。今回のような使い方ならば天体撮影にも安心して使える組み合わせだと感じました。

 

 

Star Adventurer GTi 強化型三脚セット + FC-76DCU一式(約2.5kg)

こちらはFC-76DCU鏡筒一式(約2.5kg)を載せた状態です。この状態では天体撮影は行いませんでしたが、TOE-4.0mmを取り付けた142.5倍で特に不満なく天体観察ができました。このような高倍率で月や惑星をじっくり観察するのには、手動式架台よりも自動で追尾してくれる架台のほうが確実に快適です。この組み合わせでは電子観望も問題無く行えそうです。

 

 

Star Adventurer GTi 強化型三脚セット + FC-100DZ一式(約5kg)

Star Adventurer GTiの搭載可能重量の上限ギリギリ、FC-100DZ一式で約5kgになるように載せてみました。バランスウェイトは付属品だけでは足りませんでしたので、内径の同じ ビクセン バランスウェイトWT 1kg を追加しました。

 

微風の環境下では風によるブレはほぼ感じませんでしたが、ピント合わせのために鏡筒に触った後、手を離してから振動が収束するまで2秒ほど掛かりました。微動はスマホタブレットから出来るので、その際に鏡筒に触れる(=ブレる)ことが無く、手動式の架台と比較すればとっても快適になります。眼視では100倍前後では快適に使用できます。200倍を超えると風による微振動が目に付きます。たとえばシリウスBを検出したいのでじっくり凝視する…といった用途には、この組み合わせではやや剛性不足の感があります。ですが月や惑星を高倍率で観察するにはストレスなくお使いいただけそうです。

※FC-100DCやFC-100DFはこれよりも軽いので、ブレの程度はさらに少なくなることが想像されます。

 

 

Star Adventurer GTi 強化型三脚セット は、全体で実測約9.0kgと搭載可能重量5kgの赤道儀一式としてはかなり軽量で、手持ち移動のニーズにも応えられるコンパクトで使い勝手の良い架台です。風が強くなければFS-60CBクラスでの本格的な天体撮影にも使えます。FC-100Dクラスでの眼視でも活躍できます。皆様の機材選びのご参考になれば幸いです。

Star Adventurer GTi 強化型三脚セット

 

※記事中の感想(眼視の際のブレが気になるかどうか等)はスタッフの主観です。人によっては感じ方が異なるかもしれません。どうかご了承ください。

 

 

 

 

焦点距離2000mmで銀河を大きくシャープに写せる! セレストロン EdgeHD800鏡筒

今回は「EdgeHD800鏡筒」をご紹介いたします。大口径シュミットカセグレンシリーズを得意とするセレストロン社の製品で、補正レンズを組み込むことで従来のシュミットカセグレンよりも周辺像をシャープにした鏡筒です。いわゆるビクセン互換のアリガタが取り付けられたEdgeHD800-CG5鏡筒を使って、弊店スタッフが天体写真を撮影してみました。

EdgeHD800-CG5鏡筒

 

EdgeHD800-CG5 のスペックと撮影システム

EdgeHD800-CG5鏡筒の基本スペックは口径203mm/焦点距離2000mm(F9.9)です。口径20cmの大口径でありながら重さは約6.4kgと比較的軽量で、多くの赤道儀で安定して使える扱いやすさも魅力です。そのままでも周辺までシャープな星像が得られますが、専用のレデューサーを取り付ければ焦点距離1422mm(F7)の状態で使えます。接眼部のリング接続はとってもシンプルです。↓↓↓

撮影用リング接続図

直焦点撮影では鏡筒の後端にTアダプターEdgeHD8用Tリングを接続します。レデューサー撮影時にはTアダプターのカメラ側部分を外し、それ以外は同様に使用します。撮影状態の切り替えにリングの無駄がありません。

※レデューサー撮影時にはTアダプターの後端外径が小さいため、内外ネジ式のアダプターリングを併用して冷却CMOSカメラをねじ込む方式はネジが端面で止まらず不向きです。Tリングを使用して接続したほうが確実です。

 

直焦点での撮影(月)

まずは直焦点の状態で、35mmフルサイズのSONY α7RIVを使って朝の月を撮影してみました。

EdgeHD800-CG5(直焦点) + SONY α7RIV トリミング無し

 

EdgeHD800-CG5(直焦点) + SONY α7RIV トリミング無し

APS-Cセンサーでは満月がはみ出てしまう大きさです。直焦点でも月面の全体でクレーター群がシャープに写るので気持ちいいです。周辺減光の具合が分かりやすいのでトリミング無しで掲載いたしました。フルサイズの四隅以外では急激な光量低下はありません。

 

直焦点での撮影(夜間)

ここからは夜間の撮影結果をご紹介します。

鏡筒を屋外へ出してから念のため1.5時間ほど待ち(温度順応)、そのあと直焦点状態でオリオン大星雲を撮影してみました。

EdgeHD800(直焦点)+ ZWO ASI2600MC Pro + ※フィルター無し、フードあり
Gain100、冷却-15℃、オフセット20、1分露出×60枚 中程度の光害地にて撮影

※最近は大気の揺らぎでぼやけた星像をシャープに復元する画像処理が流行っていますが、これまで本ブログでご紹介してきた天体写真と同様に、今回もそのような処理は行わずに結果をご紹介いたします。

 

焦点距離2000mmの鏡筒にAPS-Cセンサーなので換算焦点距離は約3000mmとなります。M42が画面に収まらないほどで大迫力な写りです。このような大型の星雲では画面いっぱいに星雲が広がって写ることになりますから、その星雲を中心から周辺までシャープに写すには、周辺像の良いEdgeHD800のような鏡筒が適しています。

 

オリオン大星雲が西に傾いてきたので、その後は筒先を東の空へ向け、春の銀河からNGC4565を選びました。機材構成は同じです。

EdgeHD800(直焦点)+ ZWO ASI2600MC Pro ※フィルター無し、フードあり
Gain100、冷却-15℃、オフセット20、1分露出×240枚 中程度の光害地にて撮影

モノクロ冷却CMOSカメラでナローバンド撮影も行いました。F9.9の「暗い」光学系、しかも可視光のほとんどを遮断してしまうナローバンドフィルターを使った撮影ですが、じっくり撮影することで星雲のディテールをダイナミックに表現できました。

EdgeHD800(直焦点)+ ZWO ASI294MM Pro + OPTOLONG Ha 7nm ※フードあり
Gain120、冷却-15℃、オフセット20、1分露出×600枚 中程度の光害地にて撮影

 

レデューサを利用した撮影

専用のレデューサーを使用した場合の作例です。対象は先ほどと同じくオリオン大星雲ですが、F9.9→F7と明るくなることで、同じ感度なら約半分の露出時間で同等の明るさの結果を得られることになります。APS-Cの範囲では周辺像までシャープです。夏から冬までは大型の銀河や星雲が多く見られますから、そのような時期にはレデューサーが大活躍します。

EdgeHD800 + レデューサー + ZWO ASI2600MC Pro + LPR-N ※フードあり
Gain100、冷却-15℃、オフセット20、1分露出×80枚 中程度の光害地にて撮影

 

撮影時のシステム、オプションパーツなど

今回は以下のシステムで撮影を行いました。赤道儀はタカハシ90S(当時のカタログでは搭載可能重量=9kg, MAX12kg)です。迷光と夜露の対策には専用の対物フードを使用しました。底面のビクセン互換アリガタが長いのを利用して、鏡筒の先端下部にガイド鏡を吊り下げています。

※オートガイドはQHY Mini Guide Scope と一般的なカラーCMOSカメラ(ZWO ASI290MC)を使用しました。この構成で一コマ1分の撮影を行ったところ、95%以上のコマで星像がきちんと円形になりました。コマ間の星像のずれもほとんどなく、この様子なら一コマあたり3-5分の露出を掛けても星像が流れることはなさそうです。

 

対物フードはアリガタに干渉しないよう切り込みが設けられています。その部分だけ他と強度が変わるため、鏡筒へ取り付けた際にはやや楕円状に丸まってしまいますが、今回はケラレの影響はありませんでした。多少の風がありましたが撮影中にフードがずれることも無く、安心して使える良いフードだと感じました。

 

最近MORE BLUEさんから便利なアリミゾ金具「AU111」が発売されました。これを使ってガイド鏡まわりをブラッシュアップしてみました。シンプルで使いやすい構成になります。上記のようにオートガイドはカラータイプのCMOSカメラでも大丈夫ですから、惑星撮影とオートガイド用カメラを兼用するつもりで揃えていただくのもよさそうです。

各種接続例

ガイドカメラからのケーブルの取り回しについては、ケーブルがカメラ後面から出るタイプよりも側面から出るタイプのほうが干渉の心配が減ります。

MORE BLUE 「AU111」を使用したオートガイド接続の例

 

---

 

今回は銀河や星雲の撮影を行いましたが、口径20cmの集光力を活かして淡い天体の観察や惑星撮影にも活躍できる鏡筒です。筒先に補正板があるので鏡筒内が汚れにくく、メンテナンス性が高いのもGood。通常タイプのシュミットカセグレン鏡筒 C8 SCT OTA CG5 よりもお値段は上がりますが、さまざまな用途でハイパフォーマンスを提供してくれる、魅力的な鏡筒です!

 

※今回の鏡筒は大口径&長焦点で、加えて冬の悪シーイングの影響で星像が小刻みに震えたり肥大したりします。星像の大きさを見ているだけではベストピント位置がどこにあるか分かりません。そんな時にフォーカシングマスクが大活躍しました。こちらの記事もあわせてご覧ください! ↓↓↓

starbase.hatenablog.jp

 

【TOA-130】フィルターの位置とゴーストの出方について

TOA-645フラットナーを利用することで、TOAシリーズ鏡筒の撮影時の性能を最大限に引き出すことが可能であることは以前のブログ記事でも紹介した通りですが、実際に冷却CMOSカメラ等を使って天体撮影する場合などには光害の影響を低減したり、星雲などの淡い天体を強調したりするためにフィルターを使用する場合が多いかと思います。

フィルターにはその他にも多くのメリットがある一方で、ケラレやハロ、ゴーストが発生するなどのデメリットもあります。

今回はTOA-130N+TOA-645フラットナーというハイクオリティな組合わせに対してフィルターを使用した際のハロの出方についてご紹介したいと思います。

 

フィルターはLPR-Nを用いました。カラーバランス重視型のフィルターです。

以下の記事でもご紹介しておりますので合わせてご覧ください。

starbase.hatenablog.jp

 

その他共通の撮影設定等は以下のとおりです。

・光学系 TOA-130NFB + TOA-645フラットナー
・カメラ ZWO ASI2600MC Pro (カメラマウント仕様で接続)
・フィルター LPR-Nフィルター(48mm)
・撮影地 茨城県取手市
・カメラ設定 ゲイン100、オフセット20、冷却温度-15℃、1コマ1分、ダークフラット補正あり

 

フィルターの位置を、「マウントアダプター内に配置」、「カメラマウントDX-WRの先端に配置」の二通りで試してみました。

フィルター位置の比較

上の画像をご覧いただければ分かる通り、後者のほうがセンサーから遠い位置にフィルターを配置していることになります。センサーから遠ければ遠いほど、ゴーストも大きく淡く写ることになりますので、これが強調しても無視できる程度に淡くなれば良いと考えられるでしょう。

 

実際に撮影した画像を見てみます。

マウントアダプター内に配置した場合

画像はいずれもスタック後にASIFitsViewの自動ストレッチのみ処理しています。

燃える木星雲、馬頭星雲 マウントアダプター内にLPR-N 1分×40枚

 

M42 オリオン大星雲 マウントアダプター内にLPR-N 1分×80枚

馬頭星雲の例を見ますと、アルニタクの周囲にフィルター由来のそこそこ目立つハロがあるのがわかります。一方M42の例では、明るい輝星が少ないのであまりハロは目立ちません。

 

カメラマウントDX-WRの先端に配置した場合

燃える木星雲、馬頭星雲 カメラマウントDX-WR先端にLPR-N 1分×300枚

一方カメラマウントDX-WR先端にフィルターを置くと、アルニタクのハロもほとんど目立たないレベルで改善しました。

 

アルニタクによるハロの比較

露光時間によるノイズの違いなどの細かい差はありますが、アルニタクに注目すればその差は歴然です。

光学系によっては今回のように複数の場所にフィルターを組み込める場合がございますので、撮影対象によって最適な組み込み場所を探してみると、ハロやゴーストが改善するかもしれません*1

当店でもあらゆるフィルター、あらゆる光学系、あらゆるフィルター設置場所で撮影を試したわけではありませんが、撮影対象や光学系によるフィルター位置のご提案についてはぜひお問い合わせいただければと思います!

 

*1:ただし、場所によっては同じフィルター径でも微妙にネジピッチが異なりねじ込みで組み込めない場合もございます。また、撮影中に光学系をばらして組み込み直すのは神経を使い、手間がかかる作業ですので、そのことを十分ご理解の上でご参考になればと思います。

ピント合わせの強い味方、フォーカシングマスクのご紹介です!

シーイングの悪いこの季節、望遠鏡のピント合わせで苦戦したという方は多いのではないでしょうか。

フォーカシングマスクは、鏡筒の前側に取り付けるだけでピント合わせが一気に楽になる、大変強力な補助ツールです。

 

 

※ 今回ご紹介する商品には、バーティノフマスクとして広く知られる3本線の光条が出るタイプのものと、それとは異なる4本線の光条が出るタイプのものが含まれます。本記事では、これらを「フォーカシングマスク」と総称します。

 

フォーカシングマスクの使い方

使い方は至って簡単です。

まず、フォーカシングマスクに付属している固定ネジを本体に取り付けてください。

フォーカシングマスクに固定ネジを取り付けた状態

その後、シリコンの保護キャップがついている側を鏡筒側に取り付け、鏡筒の外径に合わせて固定ネジの間隔を調整してください。この際、厳密な中心出しをしなくても像に影響は出ません。手で触れてもマスクがずれない程度に固定してください。

これでセッティングはOKです。

鏡筒にフォーカシングマスクを取り付けた状態

この状態で明るい恒星を撮影すると、次の写真のような回折像が得られます。

望遠鏡のピント調整機構を動かすと、この回折像の形状が変化します。次の写真のように、回折像が上下左右対称な形状になれば、ピント調整は完了となります。

フォーカシングマスクが有効な焦点距離

焦点距離の短いレンズまたは望遠鏡でフォーカシングマスクを使用しても、得られる回折像は小さく、回折像が対称になっているかどうかよく分かりません。

当店スタッフの見解では、焦点距離が 200mm 以上の望遠鏡ならばフォーカシングマスクを使うことでピント合わせが行いやすくなると感じています。

フォーカシングマスクの効果

フォーカシングマスクは、スリットの角度方向がいくつあるかに応じて回折像の本数が決定します。次の写真のマスクの場合、左のマスクでは4本の回折像、右側のマスクでは3本の回折像を得ることができます。

左: 4本線の回折像が出るマスク (MORE BLUE)
右: 3本の回折像が出るマスク (Northern Cross)

上でご紹介したフォーカシングマスクを用いて、実際の星(シリウス)を撮影したものが次の写真です。

ピント位置による回折像と星像の比較

左右の画像の一番右側、マスクなしの画像にご注目ください。一見、どちらの場合も星像の大きさはほとんど同じに見えます。

しかし回折像をよく観察していただくと、左側の「ピントずれあり」では、右側の「ベストピント」よりもピントずれが大きいことがわかると思います。

星像は、シーイングの影響などを受けて常に揺らいでいます。そのため、星像が最小となるようにピントを合わせる手法でベストピントを得るのは至難の技です。

フォーカシングマスクを使えば、回折像のパターン対称性を用いるため、シーイングが悪くても客観的かつ高精度にピント合わせを行うことができます。

 

望遠鏡のベストピント前後の星像パターンも、次の写真のように簡単に確認することができます。

 

クリアフォーカシングマスクの効果

当店では、次のようなWilliamOpticsの透明タイプのフォーカシングマスクをご用意しております。

FS-60CB用のクリアフォーカシングマスク

透明フォーカシングマスクと通常のフォーカシングマスクを、タカハシFS-60CBに装着したときの星像比較が次の画像です。画像は同条件で現像し、同じ拡大率で切り出しています。

透明タイプのフォーカシングマスクの方が回折像が大きく、かつ明るくなっていることがわかると思います。

暗い光学系や、焦点距離の短い望遠鏡でフォーカシングマスクを使用する場合、回折像は小さくなってしまいます。そのような鏡筒でご使用の場合は、上でご紹介しましたクリアフォーカシングマスクをお勧めいたします。

 

金属タイプと樹脂タイプ

当店では金属製と樹脂製の2つのタイプのフォーカシングマスクを取り揃えております。

金属製のフォーカシングマスクは、遠征などに持ち出しても壊れる心配がほとんどありません。

一方で樹脂製は、金属製のものと比べると強度的には劣りますが、コスト的な面では優位性があります。

ご予算と使用目的に応じてお選びください。

 

--------------------------

今回の記事では望遠鏡でのピント合わせに大変便利なフォーカシングマスクのご紹介をいたしました。

大気の揺らぎに影響されず、再現性の高いベストピントを得られるアクセサリーとして、ぜひご検討ください。

 

今回使用したフォーカシングマスクは以下の3つです。

www.starbase.co.jp

www.starbase.co.jp

www.starbase.co.jp

 

※1/21 用語の統一など若干修正しました。

 

Askarの注目機種【FRA300 Pro】【FRA400】両方撮り比べてみました!

(左)FRA300 Pro、(右)FRA400。どちらも対物フードを最大まで伸ばした状態。同じくらいの大きさです。この一式での重さはFRA300 Pro(3.1kg)のほうがFRA400(2.6kg)よりも重いです。

 

最近の天体望遠鏡関係では、赤と黒のカラーリングの製品が注目されることが多くなりました。ZWOCMOSカメラや赤道儀iOptron赤道儀、そしてこちらのAskarブランドの各種鏡筒です。Askarのラインアップは天体写真を強く意識しており、

FMA135FMA180ACL200FMA230FRA400FRA500FRA600

という名称は皆さまも色々な場所で目にされているのではないかと思います。

 

このAskarのラインアップに先日、初めて Pro の名を冠する製品「FRA300 Pro」が登場しました。焦点距離の近い人気機種 FRA400 と同一夜に撮り比べを行いましたのでご紹介いたします。

 

 

まずはそれぞれのスポットダイアグラム(設計値)です。

FRA400 口径72mm F5.6 スポットダイアグラム

FRA300 Pro 口径60mm F5.0 スポットダイアグラム

6つある図は左上→右上、左下→右下の順で中心から周辺までの星像を示しています。左上が中心像、右上がおおよそAPS-Cの周辺像、右下が35mmフルサイズの周辺像に対応します。こうして見るとFRA300 Proのほうが中心像がかなりシャープで、しかも画面全体で星像の様子(大きさや青ハローの程度)があまり変わらないというデータになっています。FRA400は中心のあたりでやや青ハローが出ると読み取れます。

※各図の一辺は200μmでビクセンさんと同じスケールです。タカハシは一辺100μmなので異なります。

 

続いて作例のご紹介です。今回はカシオペア座のWの並びのすぐ東にある「ハート星雲」と「ソウル(胎児)星雲」をまとめてフレーミングしました。使用したカメラはCanon EOS6D (IR改造)で、光害カットフィルターは使用していません。

FRA400 + Canon EOS6D(IR改造) ISO-1600 3分×24枚

FRA300 Pro + Canon EOS6D(IR改造) ISO-1600 3分×60枚

どちらもweb掲載サイズでは全く粗が見えないほど良く写ります。

周辺減光の様子はこちらです。

FRA400 + Canon EOS6D(IR改造) フラット画像

FRA300 Pro + Canon EOS6D(IR改造) フラット画像

どちらもフルサイズ周辺までしっかり光量があります。これはフラット補正を行う場合でも、画像処理において周辺部のノイズが増えにくいので助かりますね。

 

FRA400 + Canon EOS6D(IR改造) 等倍画像

FRA300 Pro + Canon EOS6D(IR改造) 等倍画像

等倍まで拡大してようやく差が見えてきます。星の色ハローは、FRA400が黄+青系、FRA300 Proがオレンジ+パープル系でした。またフルサイズの四隅で星像の大きさに差があり、FRA300 Proの方が一段引き締まった印象です。 ※ただしこれらはピント合わせの具合によって変わるかもしれません。

とても細かい点を指摘してしまいましたが、逆に言えばそれくらいしか言及できないほど、どちらも優れた結像性能ということです。これは誤解の無いように伝えたいと思います。APS-CくらいまではEOS6D(ピクセルピッチ6.4μm)では限界近いシャープネスが出る」「フルサイズ周辺でも豊富な光量とシャープで丸い星像」という点は、FRA400とFRA300 Proに共通した強みです。実際の撮影では大気のゆらぎやカメラセンサーとの兼ね合いで写り方が変わります。FRA400とFRA300 Proとの実用上の性能差はスポットダイアグラムほどには大きくなく、どちらも素敵な天体写真用鏡筒だと感じました。

 

このようにご紹介すると、「それならFが明るく画角が広いFRA300 Proを常に使って、小さい対象を写したい時はトリミングすれば良いのでは?」という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。それに対する答えはこちらです。

ハート星雲の中心部を、見かけが同じ大きさになるようにして比較

同じカメラで同じ対象を撮るのなら、FRA400のほうが細かい描写をできるようです。このような「どれだけ詳細な描写ができるか」という点に関しては、スポットダイアグラムの星像サイズではFRA300 Proに及ばないとはいえ、口径の分だけ解像力が高く、また焦点距離が長い分だけアンダーサンプリングを回避できるFRA400のほうが有利だと思います。

 

つまり、FRA400FRA300 Proは、ユーザーの希望(画角vs描写の細かさ・Fの明るさ・フルサイズでの均一性…)によってしっかり使い分けができる、とても上手なラインアップの構成ではないかと感じます。

スターベース東京は現在どちらも展示中。在庫もございます!ご検討をよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

【すごい】口径6cm+CMOSカメラで撮る惑星! 小口径でも惑星撮影にチャレンジしてみませんか?

 

FOA-60Q + テレビュー パワーメイト2× (合成焦点距離1800mm F30) + ZWO ASI662MC + ZWO IR/UVカットフィルター1.25" / Gain=300、 0.015秒×11935コマ(180秒)撮影→5000フレームをスタック、2022年10月1日撮影

 

FOA-60Q + テレビュー パワーメイト2× (合成焦点距離1800mm F30) + ZWO ASI662MC + ZWO IR/UVカットフィルター1.25" / Gain=400、 0.008秒×22271コマ(180秒)撮影→2000フレームをスタック、2022年10月1日撮影

 

関東はようやく秋らしい天気になってきました。今年は土星木星→火星と観察の好機が続きます。すでに土星は南中時刻が20時頃となり西へ傾いてきましたが、季節は秋で、18時台に薄明が終了しますので、撮影可能な時間はまだまだあります。

大口径の天体望遠鏡CMOSカメラを取り付けて惑星の撮影(動画撮影→PCで画像処理)をするという手法がメジャーになって久しいですが、その影で「小口径の望遠鏡では惑星撮影は出来ないんでしょ」という声も聞きます。そこで今回は口径6cmの屈折望遠鏡を使って惑星の撮影を行ってみました。

 

FOA-60Q鏡筒(口径60mm / 焦点距離900mm / F15)です。フローライトレンズを含む6枚構成の屈折望遠鏡で、極限的な収差補正を実現し、実用上完璧な中心像が得られます。スタッフの愛用している小型で超高性能な製品です。

 

 

使用したカメラはZWO ASI662MCです。かつて惑星撮影用として大ヒットし、今でも十分通用する性能を誇る「ASI290MC」の後継である「ASI462MC」の後継機です。センサーが小さいので惑星を画角に導入するまでが大変ですが、FOA-60Qの場合はまず眼視で100倍ほどで視野中心に導入し、その後カメラに取り替えることですぐに画面に見えました。

※大口径や長焦点の鏡筒を使う場合は、よりセンサーの大きいZWO ASI585MC などのほうが導入が楽になります。

 

FOA-60Q鏡筒はF15なので、もう少し像が暗くなっても拡大するメリットが大きいと判断し、テレビュー パワーメイト2× を併用しました。無限遠にピントを合わせるために50.8延長筒を追加しています。この状態で合成焦点距離は1800mmで、得られる惑星像は小さめ(口径6cmなので仕方ありません)なので、大気色分散を補正するADCは使わなくても色ずれが目立たないので問題無いだろうと思いました。

 

ASI662MCは赤外光にも感度があるため、肉眼で見た自然な色合いで撮影するために、別売のIR/UVカットフィルターを併用しました。今回はパワーメイトと2インチ差し込みで接続したので、フィルターの取り付けにはセンサー直前に取り付けるためのアダプターを併用しています。

 

 

当店で非冷却CMOSカメラをご購入の方限定で差し上げている「かんたんマニュアル」の手順に沿って撮影とスタックを行ったものがこちらです。↓↓↓

 

この「かんたんマニュアル」ではこの後「RegiStax」というフリーソフトを使って惑星の模様を強調していますが、今回はステライメージ9の画像復元機能を使いました。

 

「画像復元」を選択します

「最大エントロピー法」を選択し、「PSF半径」に適当な数値を入力して「表示」でプレビューします。模様がシャープになる値で「OK」を押して処理を実行します。

この操作を3回ほど繰り返したのち、いつも使っているLightroomで色合いの微調整を施したものがこちらです。

 

FOA-60Q鏡筒は眼視で見ても非常にシャープな見え味です。今回の撮影では眼視像と(体感で)ほぼ同等の画像を得られました。私は以前ASI290MCを所有していましたが、その正当後継機であるASI662MCは、さらに感度が良く、ノイズが少なくなっているように感じました。

このように、口径が小さい鏡筒を使った場合でもバローレンズ等で適切に拡大し、適切なMOSカメラを使えば、惑星の模様を写し出すことが可能です。当店でCMOSカメラをお求めいただきますと「かんたんマニュアル」が付属しますので、初めての方でもある程度の仕上がりが期待できます。

 

CMOSカメラの選び方はこちらのブログ記事に詳しくまとめましたので、ご参考になさってください。今年はまだまだ惑星を楽しめます。冬になるとだんだん気流が悪くなり、シャープな像を得にくくなりますが、晴れ間を見つけて惑星の観察や撮影を楽しみましょう!!

starbase.hatenablog.jp

 

※本当は火星も撮ろうと思ったのですが、仮眠を取ったはずが朝になっていました…。